平成 18 年度長期研修報告概要 鳥取県教育センター 研修企画課 長期研修生 1 研究テーマ 齋藤 智子 「読解力が身につき、読書力・表現力につながる国語科学習」 ~「読むこと」における学習の工夫と改善~ 2 はじめに 「読む」力というのは、子どもたちにとって、学習の基礎基本となるのはもちろんだが、それだけにとどまるものではなく、 これからの人生をも支える大きな力であると考えられる。しかし、今、その「読む」力の低下が問題となっている。そこで今 回、「読むこと」の指導の在り方について、何がどのように求められているのか明らかにし、子どもたちが楽しく主体的に 学びながら「読む」力を身につける授業をめざしたいと考えた。 3 研究の概要 (1) 研究の目的 ○確かな読解力を身につけ、その身についた力が豊かな読書力・表現力へとつながる国語科学習の展開の開 発 ○身につけさせたい読解力とつなげたい読書力・表現力とを明らかにした系統表と年間指導計画の作成 (2) 研究の仮説 ○身につけさせたい読解力と読書力・表現力を明確化かつ意識化させることによって、主体的に「読むこと」の学 習に取り組むことができる子どもが育つだろう。 ○国語の学習で読書につなぐ多様な読書活動・表現活動を設定すれば、読書に親しみ、自己の読書活動を拓 いていこうとする子どもが育つだろう。 ○学年に応じて身につけさせたい読解力と読書力・表現力を明確にした系統表と年間指導計画を作成し、それ をもとに学習を展開すれば、子どもの「読む」力を系統的かつ計画的に高めることができるだろう。 4 研究の内容 (図1) (1)めざす「読むこと」の学習について 読解力 近年実施された全国ならびに県内の調査で明らかにな った「読む力」の課題は、これまでの正確に読み取ることを 重視した読解力のとらえ方をかえなければならないことを示 ・読み方 ・深化・定着・確認 している。また、子どもの意識調査でうかんだ課題からは、 ・論理的思考力 ・意欲・目的 「読むこと」の授業を「わかる・好きな・役に立つ」授業に変え ることが急がれる。 このように、読解力のとらえ方をあらため、新しい授業観に 立ったとき、読解力を読書力・表現力につなげる学習を展 開することが有効ではないかと考えた。(図1) そこで、この 3つの力を国語の時間にどのようにつなげるか、そのつなげ方 ・想像力・情緒力 ・コミュニケーション力 表現力 読書力 ・語彙力・文章力 読解力・読書力・表現力をつなぐ学習 の工夫を考え、実践することにした。 (2)検証授業について 読解力のとらえ方と授業観の転換 検証授業では、読解力と読書力・表現力をいかに効果的 につなぎ、子どもたちに 3 つの力を身につけさせることが できるか、そのつなぐ工夫について実践研究することにした。 検証授業(1) 「『どうだ 知らなかっただろう』を作ろう」 文章5年 「人はねむる 動物もねむる」) (説明的 つなぐ工夫①…身につけさせたい読解力を明らかにし、つなぐ表現 (図2) 指導案 単元目標より抜粋 力と読書力を位置づけた系統表を作成した。 つなぐ工夫②…指導案に3つの力のつながりを明示した。(図2) 身につけさせたい読解力 つなぐ工夫③…3つの力を効果的につなぐ単元の構想をした。 ○文章の内容を的確におさえながら要点をとらえる力 つなぐ工夫④…二次の要点指導に読書へのアニマシオンを取り入れ、 ○文章の構成を考え、全体の要旨をとらえる力 クイズ作りを楽しみながら要点をまとめさせた。そして、身につけた要 ○題名や筆者の表現の工夫に注意して読む力 点をまとめる力を使う活動を展開した。 ○経験や考えと重ねて自分なりの感想をもつ力 つなぐ工夫⑤…二次で学んだ筆者の表現の工夫を、三次では実際 つなげる に自分の表現に生かすことができるように展開した。 つなぐ工夫⑥…本単元のねらいを達成させるために、事前に本の内 表現力 読書力 容、文章の形態、量などを吟味し、選書した。ブックトークで紹介し、 表現や構成の仕方など筆 態度…さまざまなジャンル 教室に特設したミニ文庫においた。 者の工夫を自分の紹介文 の本を進んで読む。 に生かす。 技能…要点や要旨を的確 検証授業(2) 「『語り』に挑戦しよう」 (文学的文章4年 「ごんぎ つね」)においても同様の工夫を実践した。 におさえながら読む。 5 研究のまとめ 読解力と表現力をつなぐ工夫は有効だったか 読解力と読書力をつなぐ工夫は有効だったか 教材文で学習したこと(二次)が表 この単元で紹介や読み聞かせのあっ 現活動(三次)に役立ちましたか? た本を読んでみようと思いますか? 4年 5年 どちらかというと役立たなかった 4年 5年 どちらかというと読もうと思わない 役立たなかった 読もうと思わない 役立った どちらかというと役立った 読もうと思う どちらかというと読もうと思う 身につけた読解力を表現力に結びつけること 読解力と読書力をつなぐ工夫をすることは、読 は、日常生活に生きて働く力として、より確かに 書意欲の向上につなぐことができる。 自分のものにすることができる。 読解力を読書力・表現力とつなぐ学習を展開することによって、 ○ 子どもは、「読むこと」の有用感を実感し、主体的な学びを拓くことができる。 ○ 今、まさに求められている読解力を育てると同時に、読書力・表現力を高めることができる。 6 今後の課題 ○読解力を表現力・読書力につなぎ、3つの力を効果的に高めることができる単元を開発する。 ○身につけさせたい力をより確かに効果的に指導できるように、自己研修に努める。 ○系統表・年間指導計画・到達状況チェックシートの活用と改善を図る。 7 おわりに 今回の研修を通して、これからの「読むこと」の学習のあり方について、そのめざす方向性が見えてきたように思う。楽 しくてわかりやすい「読むこと」の学習を展開し、一人一人の子どもに、「読む」力を保障することができるよう、今後もさら に研修を深めたい。
© Copyright 2024 ExpyDoc