国語科 「確かな国語力」を身に付けさせる言語活動の工夫 1 研究の概要 小中連携の軸として,学力デザインを基に身に付けさせたい力を明確にする「学習用語」を設定し た。例えば, 「構成」や「要約」や「心情」がそれにあたる。中学校では学習の最初に学習用語を提示 することで,何を学ぶのかをはっきりさせるとともに,単元を貫く言語活動を設定し締めくくりの方 言活動とした。学習用語については,小中双方で使用頻度の高い用語を取り上げ,発達段階に応じた 授業実践を重ねながら整理を行った。 また, 「読むこと」領域の学習内容・方法・言語活動を一覧できる「国語科連携プラン」を作成した ことで,9年間の学びを文章の性質ごとに可視化できた。 2 今年度の取り組み ―公開授業について― (1) 1年2組「あなたは『伊勢物語』をどう読む?」 原口裕美 「ビギナーズ・クラシックス 『伊勢物語』 」より 学習用語〔伏線・描写・構成〕 古典をひとつの物語として読むために, 「伏線」「描写」 「構成」 を学習用語として取り上げた。古典学習で陥りがちな現代語訳をす ることではなく,現代語訳から読み取れる工夫を探った(図1) 。 単元を貫く言語活動にはリーフレット作りを設定し,その面白さや 図1 生徒の意見 現代にも通じている部分をまとめさせた。 (2) 2年1組「文章の魅力を探ろう」 原口直哉 「あなたは『最後の晩餐』を知っているか」 (光村図書)より 学習用語〔構成・筆者のものの見方や考え方〕 筆者が自分の思いや考えを述べるために,文章構成を中心にどのよ うな工夫をしているかをつかませる授業を行った。本作品は,単元 名「きずなを読む」の中に位置づけられている。誰と誰のきずなが 描かれた作品なのかを考えさせ,登場人物と文章構成との関係を三 角の図形を用いて整理した(図2) 。図形を見ることで,筆者があえ 図2 整理した三角形 て述べていないことがあることに気づかせ,そこから本作品の魅力 を探っていった。 (3) 3年4組「小説を深く読もう」 大串浩介 「故郷」 (東京書籍)より 学習用語〔批評・心情〕 文学的文章において用いられている三点リーダーが,読みに与え る効果に着目させ,登場人物の心情やその変容を読み取らせることに 焦点をあてた。ブレーンストーミングによって,三点リーダーの効 果を,根拠をもって考えさせた(図3) 。そして,作品中に用いられ 図3 三点リーダーの効果 ている 27 個の三点リーダーを重みづけし,筆者が最も意図して用いたと考えられる三点リーダー を決め,全体で共有させた。その活動を通して,魯迅が「故郷」を通して伝えたかったことに迫っ た。単元の最後には,三点リーダーを介した自分の読みをもとに「故郷」の批評文を書かせ,相互 評価を行った。 3 今年度の研究について (1) 成果 学習内容・方法・教材を一覧できる「国語科連携プラン」を作成した。これにより,学習用語, 単元を貫く言語活動についてその内容と方法を俯瞰できるようになった。教師にとっては義務教育 9年間の見通しをもて,生徒が積み重ねてきた学習を生かすような活動の設定ができた。生徒たち にとっても,単元のはじめに提示された学習用語を意識しながら学習を進めることで,教材にこだ わらず身に付けるべき力を明確に自覚できるようになった。 学習用語について,小中連携の視点から再度見直しを行った。小中での学習用語のとらえ方と, 授業の中での用い方がよりはっきりしてきたため,それぞれの良さを生かしながら授業実践をした。 (2) 課題 「国語科連携プラン」について,学習用語で示す力を効果的に身に付けさせるために,単元を貫 く言語活動・教材のよりよい組み合わせを考えていくことが必要になる。来年度からの研究につい ても, 「読むこと」領域で進めることと書く活動を充実させることに伴い,学習内容・方法について は検証を進めなければならない。 また,学習用語の分類法の見直しも必要である。現在は説明的文章・文学的文章など,その種類 に応じて用語を分類している。しかし,どの文章にも共通する学習用語があったり,知識や技能を 示す語が混在していたりする。中には「読むこと」領域だけにとどまらず, 「書くこと」など他の領 域でも共通して使用している学習用語もあるため,具体的な授業実践をとおしてより活用しやすい ようにしていく。 4 今後の展望 学習用語の示し方については,現在の分類方法ではなく, 「伏線」などの知識を示す用語と, 「要約」 などの技能を示す用語で分類し示すべきかどうかの方向性を考えていきたい。また,生徒の実態に応 じてレベルを設定しなおすことも検討していく。また, 「国語科連携プラン」については, 「読むこと」 についての言語活動や学習用語,使用する教材のよりよい組み合わせを再考するという視点から充実 させていく。 来年度からの研究も「読むこと」領域で進めていく。文章を読んで内容を理解することにとどまら ず,読み手を育てる視点から研究を進めたい。例えば,文章から何を考えたか,そしてその考えを他 者と交流することで読みが広がったり深まったりする活動を仕組んでいく。その具体的手立てとして, 授業の中で自らの考えを表現し,読みをさらに深めていくために書く活動を多く取り入れていく。こ れは 21 世紀型能力において求められている思考力の育成にもつながると考える。書く活動を,国語 科の「読む・書く・話す・聞く」すべての領域に関連させることで,生徒の思考の過程を明らかにで きる。また,これは表現・交流のツールとしても有効であるといえる。小中連携としては,書く活動 の取り入れ方や指導内容について系統性をもたせていく。
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