No.4「地方債・社会資本整備と公会計改革」

政策を見る眼
No.4 < 2015.07.27 >
地方債・社会資本整備と公会計改革
2015 年度地方債計画(通常収支分)は、周知のと
良時に発行した企業債の償還期間と耐用年数との
おり、地方財源の不足への対処に加え、防災・減災
間に差があるため、構造的に資金不足が発生する。
対策、公共施設の老朽化対策、地域活性化政策
こうした実態は、長期的な収支見通しに基づいて安
等に必要な公的資金の確保を柱として、総額で 11
定的な経営を行う上で障害となることから、企業債の
兆 9,242 億円、うち普通会計分 9 兆 5,009 億円(前
償還期間と施設等の耐用年数との間のギャップを縮
年度比 10%減)、公営企業会計等分 2 兆 4,233 億円
小することが必要となる。2015 年度以降に同意等を
(同 6.6%増)となっている。
得て発行する公営企業債のうち財政融資資金での
その中で、公共施設等社会インフラ関係について
充当分については、施設の耐用年数等を踏まえて償
は、①地方自治体が公共施設等総合管理計画に
還年限を延長し、長期的な視点に立った健全経営
基づいて既存の公共施設の集約化・複合化に取り
の実現を確保するとしている。
組む公共施設最適化事業を創設、既存の公共施
例えば、地方債のうち残高が巨額であり、地方自
設等の転用に係る事業を地域活性化事業の対象と
治体全体でも普通会計からの繰入額が大きい下水
すること、②公共施設の老朽化対策への対応や「し
道事業では、汚水処理人口密度の高い大都市部
ごと」づくりを中心とした地方創生に寄与する過疎対
は経費回収率が高く財務状況も良好であるが、同密
策事業を充実すること、③上下水道、交通、病院等
度が低い地方部は厳しい状況にある。下水道事業
地方公営企業による生活関連社会資本の整備を推
は、経年劣化する大規模な装置型事業であり、持続
進すること、④地方公営企業への公営企業会計の
性確保には事業のライフサイクルコスト(新規投資、
適用を円滑に進めるため公営企業会計の適用に要
維持管理、更新投資を含めた時間軸に基づく経費)
する経費について公営企業債の対象とすること、等を
を把握した上での戦略形成が必要となる。大都市部
掲げて所要額を計上するとしている。また、⑤地方公
では、今後、雨水対応に加え更新投資の急増が不
営企業が長期的な収支見通しに基づき安定的な経
可避であり、低金利による財務状態の改善が見られ
営を行うことができるよう、財政融資資金に係る公営
る現状において積極的な更新投資を行うことは重要
企業債のうち上下水道事業等について、施設の耐
な経営戦略となる。これに対し、同密度が低い地方
用年数等を踏まえて償還年限を延長するとしている。
部では、人口減少局面を迎える中で、新規投資への
このうち、④公営企業会計の適用に要する費用を
公営企業債の対象とする点については、地方財政
対応と、いずれ到来する更新投資への本格対応の
あり方を今から戦略として描いておく必要がある。
の基盤形成に向けて不可欠な取組みである。公営
そのためにも、公営企業会計を適用し実態を把握
企業にあっては、保証金なしの繰り上げ返済制度の
することが喫緊の課題である。その上で、下水道事業
活用と低金利から財務状況が改善する傾向を示して
全体の制度のあり方を、同時並行で検討して行く必
いるが、中長期的かつ構造的に経営環境は厳しさを
要がある。2013 年度で 3,640 事業に及ぶ下水道事
増しつつある。そのため、長期的視点に立った計画的
業が、更新投資と、少子高齢化等に伴う需要構造
な経営基盤の強化と財政マネジメントの向上等に取
の変化という大きな転換期を迎えている。下水道事
り組むことが必要不可欠であり、それには公営企業会
業の体系は極めて複雑であり、病院や交通事業と違
計を適用し、財務諸表の作成等を通じて経営・資産
って住民による可視的認識も難しい。そうした下水道
等を正確に把握する制度整備が大前提となる。
事業が転換期を迎えていることに対して、会計の面か
また、⑤地方公営企業では、施設等の建設・改
「政策を見る眼」No.4 <2015.07.27>
らも戦略性を確保していくことが重要である。
監修:宮脇淳 北海道大学大学院法学研究科教授
発行:株式会社図書館総合研究所 TRC セミナー「まちの課題を解決する図書館」事務局(担当:島泰幸)
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