No.1「まち・ひと・しごと創生政策と国土形成計画の見直し」

政策を見る眼
まち・ひと・しごと創生政策 と 国土形成計画の見直し
No.1 < 2015.05.15 >
4 月の統一地方選挙後における地方自治体の
の提示である。これは、都市間・地域間連携を
大きな政策課題として、安倍政権が掲げる「ま
基本に、必要とされる機能に応じた圏域人口を
ち・ひと・しごと創生」政策にいかに取り組む
確保することを意味する。具体的には、連携中
かがあげられる。創生政策では、2015 年度内に
軸都市圏(経済成長の牽引、高次地方都市機能
各地方自治体が「人口ビジョン」と「地方版総
の集積・強化等を目指す圏域ネットワーク)、
合戦略」を策定することを求めている。この創
定住自立圏(生活機能やネットワークの確保・
生政策と密接な関係にあるのが、国の「国土形
強化等を目指す圏域ネットワーク)、都市機能
成計画」の見直しである。2014 年 9 月に国土審
誘導区域・居住誘導区域から形成されるコンパ
議会(国土交通省)に設置された計画部会等で
クトシティと小さな拠点によるネットワーク
継続的な審議が進められており、2014 年 7 月に
の形成である。住民が従来の家や地域に住み続
公表された「国土のグランドデザイン 2050」等
けながら必要なサービスを受けるために、機能
を踏まえ、急激な人口減少や巨大災害の切迫等
の集約化を進め、住民や他の地域と結び付ける
に対応した今後 10 年間の国土づくりの基本的
ことで、利便性の低下を回避することを意図し
方針等を示すこととなる。安倍政権が柱とする
ている。
「まち・ひと・しごと創生」との整合性も意図
第 3 は、「ICT 等の技術改革やイノベーション
しており、今後さらに議論を進め、2015 年夏に
の導入」である。中間とりまとめでは「国土を
最終報告がなされる予定である。
取り巻く時代の潮流と課題」について、①人口
その「中間とりまとめ」で示された国土形成
に関するポイントは以下のとおりである。
減少、少子化と地域偏在、②異次元の高齢化の
進展、③変化する国際社会の中での競争激化、
第 1 は、国土の基本構想として「対流促進型
④巨大災害の切迫とインフラ老朽化、⑤地球環
国土」が提示されたことである。従来の国土形
境問題と並んで、新たな活力の視点として「ICT
成計画では、「交流」という語が基本であった
等の技術改革やイノベーションの導入」をあげ
のに対して「対流」を打ち出している。辞書で
ている。ここでは、ICT 等の技術改革やイノベー
は、「交流」は「異なる地域・組織等に属する
ションの導入による成果を柔軟に受けとめら
人や物が行き来すること」とされ、「対流」は
れる経済社会システムの構築を意図している。
「流体の中での相反する流れ」を意味する。中
こうした全体計画と同時に、国土審議会では
間とりまとめにおいて、「対流」とは、多様な
地域計画の検討が進められている。まち・ひ
個性をもつ様々な地域が相互に連携して生じ
と・しごと創生政策に基づく地域版総合戦略で
るヒト、モノ、カネ、情報等の双方向の流れで
は、以上の国土形成計画の考え方等も応用し、
あり、それ自体が地域に活力をもたらしイノベ
活かしながら、官民連携、そして地域経営の視
ーション創出の原動力になるとしている。地域
点に立った戦略づくりが必要となる。その際、
の特性と環境がもたらす温度差によって、地域
地域のネットワークとして、地域資源に根差し
間の新たな流れが生じることを意図している。
た新たなハブ機能を、図書館等を活用しながら
第 2 は、「コンパクト+ネットワーク」概念
「政策を見る眼」No.1 <2015.05.15>
形成することも重要な視点となる。
監修:宮脇淳 北海道大学大学院法学研究科教授
発行:株式会社図書館総合研究所 TRC セミナー「まちの課題を解決する図書館」事務局
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