前回に引き続き話題は注射剤の配合変化です。今回は化学的変化

前回に引き続き話題は注射剤の配合変化です。今回は化学的変化について取り上げます
が、配合変化の代表的な現象として酸-塩基反応があります。理科の実験で希塩酸や水酸
化ナトリウムを反応させガスや沈殿物を発生させた経験はありませんか。注射剤でも同様
なことが起きます。例えば、カルチコール®注射液(グルコン酸カルシウム)はリン酸ナト
リウム補正液などのリン酸を含む注射液と反応して沈殿を生じるのは良く知られている現
象です。同一のシリンジ内で混ざると確実に沈殿しますが、濃度依存のため輸液などで希
釈されれば配合変化は起きにくくなります。
化学的変化で最も重要なことは注射剤の液性です。成分の安定性や溶解性のために酸や
アルカリで調整している場合が多くあり、pH が大きく移動した場合は成分の分解や溶解度
の減少により混濁・沈殿が生じます。
pH による配合変化は pH 変動スケールである程度は予測することが可能なので、ラシッ
クス注を例に説明します。
例)ラシックス注の pH 変動スケール
pH6.32
(規格 pH 8.6〜9.6)
pH9.11
0.1N 塩酸液←
白濁→沈殿
変化点 pH
pH13.00
→0.1NNaOH 液
製品の pH
最終 pH
変動スケールは pH 変動試験によって作成されます。pH9.11 のラシックス注に 0.1N 塩
酸液と 0.1N 水酸化ナトリウムをそれぞれ少しずつ加えて行き、沈殿や色調変化が現れた
pH を変化点 pH と呼びます。ラシックス注の場合は pH6.32 で、これより酸性側に移動す
ると白濁することがわかりますので、酸性の注射剤と混合するときは要注意となります。
また、アルカリ性側では変化が無いこともわかります。この様に変動スケールは配合変化
を予測するのに大変便利ですが、複数の薬剤や輸液と混合した場合は pH 変動が不明確にな
りますので予測が難しくなります。
薬剤部では配合変化について質問があれば、複数の観点から予測を試みますが、完全な
予測は難しいことをご承知おきください。