2015 年 9月 10 日 研究生と各界リーダーとの懇談会 <ゲスト>政策研究大学院大学教授・大田弘子氏 日 本 経 済 研 究 セ ン タ ー は 9 月 10 日 、 政 策 研 究 大 学 院 大 学 の 大 田 弘 子 氏 を ゲ ス ト に 迎 え 、研 究 生 と の 懇 談 会 を 開 い た 。政 府 の 税 制 調 査 会 委 員 を 務 め る 大 田 氏 は「 次 の 成 長 戦 略 の カ ギ は サ ー ビ ス 産 業 の 生 産 性 向 上 だ 」と 語 り 、中 小 企 業 の 転 業・廃 業 支 援の強化や労働市場の改革を訴えた。 大 田 氏 は 第 1 次 安 倍 内 閣 と 福 田 内 閣 で 内 閣 府 特 命 担 当 大 臣( 経 済財政政策担当)を務めた。8 日の自民党総裁選で安倍晋三首相 が再選したのを受け、 「経済政策で次に何を打ち出すのかが重要に なる」と問題提起した。 まず課題として挙げたのがTPP(環太平洋経済連携協定)やRCEP(東アジア地域 包 括 的 連 携 )な ど 多 国 間 の「 メ ガ F T A( 自 由 貿 易 協 定 )」交 渉 だ 。大 田 氏 は「 T P P 交 渉 が遅れているのは残念だ。TPPが漂流するとほかのFTA締結の手がかりがなくなる」 と 危 機 感 を 表 し た 。メ ガ F T A の 加 速 と 併 せ て 、 「 各 国 の 工 程 間 分 業 が 進 む 中 で 、日 本 の 強 みをどこに作るかが重要になる」と話した。 大田氏が産業の課題として強調したのは、サービス産業の生産性向上だ。日本のサービ ス 産 業 の 生 産 性 は 米 国 対 比 で 「 卸 ・ 小 売 」 が 42.4% 、「 飲 食 ・ 宿 泊 」 が 37.8% な ど 低 水 準 に と ど ま る ( 日 本 生 産 性 本 部 「 労 働 生 産 性 の 国 際 比 較 2010 年 版 」)。 大 田 氏 は 低 生 産 性 の 要因は小規模事業者が多数存在する過剰供給構造にあるとし、 「参入と退出を促す新陳代謝 が必要だ」と訴えた。特に生産性の低い企業を生き残らせず、成長分野に移す「転業・廃 業 支 援 を 強 化 す る べ き だ 」と 持 論 を 展 開 し た 。法 人 税 の 欠 損 法 人 が 多 い 現 状 を 踏 ま え て「 中 小法人の基準見直しや課税ベースの拡大が必要」と述べた。 大田氏が成長戦略で「一番難しいかもしれない」と指摘したのが、労働市場改革だ。大 田氏は現状を「経済界は労働市場の柔軟性だけ、労働側は労働者の保障だけを訴えて本格 的議論が起こらない。柔軟性と保障を両立させるための冷静な議論が必要だ」と分析。長 時 間 労 働 や 非 正 規・正 規 の 待 遇 格 差 の 是 正 、雇 用 終 了 ル ー ル の 明 確 化 を 課 題 と し て 挙 げ た 。 日本企業の強みは「異質なものを経営の中枢に組み込むことから生まれる」と指摘。み ずほフィナンシャルグループなど3社の社外取締役を務める大田氏は、 「経営に意味のある 社外取締役は、空気を読まずにモノを言う存在だ」と話した。 研 究 生 か ら は 多 く の 質 問 が 出 た 。「 人 口 減 の 克 服 な し に は 日 本 経 済 の 成 長 は な い の で は 」 と い う 問 題 提 起 に は 、「 介 護 分 野 な ど で ス キ ル の あ る 人 材 の 受 け 入 れ を 進 め る べ き だ 」 と答えた。地方の活性化策を問う声には「地方でも人口の集中を促し、新たな需要を生み 出 せ ば よ い 」と 応 じ た 。日 本 企 業 に 多 様 性 が 育 つ 条 件 と し て 、 「年次や減点主義にとらわれ て い る 人 事 評 価 の 改 革 が 急 務 だ 」と 語 っ た 。 (研究本部) http://www.jcer.or.jp/
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