高 齢 者 尿 路 感 染 症

特集2
高齢者
尿路感染症
予防と治療・ケア
30
高齢者尿路感染症の特徴と
予防・治療・ケア
武智伸介 武智ひ尿器科・内科 院長
1988年愛媛大学医学部卒業,同泌尿器科入局。南松山病院,済生会今治病院,愛媛
大学泌尿器科助手,松山赤十字病院腎センター勤務を経て,1999年,内科である家人
と共に「武智ひ尿器科・内科」を開設,現在に至る。排尿に関する悩みの解決に主眼
を置いて診療に当たっており,透析医療も行っている。透析を悲観的に考えるのではな
く,人生の傍らにおいて共に歩んでいけるくらいの感覚で患者さん自身が考えられるよ
う,スタッフ共々頑張っている。URL:http://takechi-clinic.jp/
はじめまして。筆者は,四国の愛媛県
最近では90代で独歩で来られる方も増
で,泌尿器科・内科と透析の診療所を立
えているように感じています。超高齢社
ち上げて診療に当たっています。
会の始まりを実感しますね。その訪れる
泌尿器科というと何かと敬遠しがちで
高齢患者の中で,尿路感染症の占める割
すが,まあ敬遠するのは大概若い女性た
合は半分くらいだと思います。
ちで,
「何をされるの分かったもんじゃな
高齢者の尿路感染症の菌種について
い」などと言われるわけですが,
「そん
は,若年者とそう変わりはありません。
なんおしっこ見せてもらって話を聞くだ
では,何が違うのかと言うと,尿路感染
けなのになあ」と,おっさん泌尿器科は
症を起こしやすい要因が若年者と比較し
小声でぼやいたりするのでした。
て多いということでしょうか。
実際のところ,やって来るのは圧倒的
歩行能力や認知脳の低下に加え,陰部
に高齢者が多いです。若い女性の膀胱炎,
の清潔保持の困難さやおむつの使用と
小児の包茎や頻尿・夜尿症,尿路結石や
いった介護的側面もあります。また,神
前立腺肥大症,前立腺がんなどの男性特
経因性膀胱による残尿や性器脱,失禁,
有の疾患,男性特有と言えば男性更年期
尿路結石といった泌尿器科的疾患が潜ん
障害やらED(勃起不全)なんてのもあり
でいることもあるので注意が必要です。
ますけどね。女性では,OAB(過活動膀
さらに,高齢者では免疫能が低下して
胱)や尿失禁,性器脱などの疾患での受
おり,原因不明の発熱もよく見られま
診もありますが,年齢層からすると,圧
す。上気道感染も生じやすく,発熱時に
倒的に高齢者の占める割合が多いです。
抗生剤が処方されて,表には出ていな
ちなみに,ここで言う高齢者は,筆者の
かった尿路感染症が治癒されていると
頭の中では70歳をとっくに超えて80歳
いったケースも見受けられます。なかな
以上という感じでしょうか。
か一筋縄でいかない領域です。
年々,受診者の平均年齢は上がってき
そんな「高齢者の尿路感染症」に関し
ており,印象としては80代の方が多く,
て,ありがたいことに執筆の機会をいた
臨床老年看護 vol.23 no.1
➡続きは本誌をご覧ください