前立腺肥大症

11
2015
11
2015 November
前立腺肥大症
前立腺とは・・・
膀胱
前立腺の大きさは、通常、クルミくらいの大きさです。
前立腺の詳しい働きは明らかになっていませんが、
「前立腺液」
というものを分泌
します。
前立腺液は、
精液の一部となったり、
精子の運動を助けたりします。
前立腺
尿道
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下にあり、膀胱から出る尿道(尿
の通り道)を取り囲むように位置しています(左図参照)。
【前立腺のイメージ】
前立腺肥大症とは・・・
膀胱
前立腺が
肥大し
尿道を圧迫
前立腺
尿道
前立腺肥大症とは、前立腺が肥大し尿道が圧迫されることで、尿が出にくいな
どの症状を起こす病気です。
なぜ肥大するのかは不明ですが、加齢や男性ホルモンなどが何らかの影響を
及ぼしていると考えられています1)。
50歳以降から症状
個人差はありますが、
前立腺の肥大は30歳代から始まり1)、
が出る人が増え始め、
年齢が高くなるにつれて発症する人が多くなっていきます2)。
前立腺肥大症の主な症状1-3)
主な症状
症状が出る主な理由
尿が出にくくなる
尿の勢いが弱い
尿が途中で途切れる
お腹に力を入れないと尿が出ない
前立腺が肥大することで、尿道が狭められ、尿の流れがス
ムーズでなくなるため。
尿が溜めにくくなる
トイレが近くなる
急にトイレに行きたくなり、我慢できない
夜中に何度もトイレに起きる
前立腺の肥大そのものや、それによって排泄しきれなった
尿が膀胱に残ることによって、膀胱が刺激を受けるため。
排尿後、
まだ尿が残っている感じがする
気になる症状がある場合は、医師に相談しましょう。
症状の現れ方にも個人差があり、前立腺が肥大していても症状が現れないこともあります。ま
た、前立腺肥大でない場合や、他の病気である場合も、同じような症状が出ることもありますの
で、
病院で検査などで調べる必要があります。
2015 年 11 月号
治療法
前立腺が肥大していても、症状がない場合や生活に支障が出ない程度の症状であれば、経過を観察するだけで、しばらく
様子を見ることもあります1)。ただ、症状が進んでしまうと薬の効果は出にくくなることもあるので、治療については、症状や
生活習慣など、
医師とよく相談することが大切です。
治療が必要な場合は、それほど重症でなければ、まず薬物療法を行って、それでも症状の改善が思うように得られない場
合に限って手術やその他の治療法が行われるのが一般的です2)。
主な治療薬
主な薬
作用するしくみ
特徴
ハルナール、
フリバス、
ユリーフなど
前立腺と尿道の筋肉を緩めて、狭くなってい
る尿の通り道を広げ、
尿を出しやすくする。
前立腺肥大症の標準的な治療薬。
血管を広げる作用もあるので、血圧が下がることもあ
る。
特に飲み始めは、
ふらつきなどに注意。
アボルブ
前立腺肥大に関与している男性ホルモンが
働くのを抑えて、
前立腺を小さくする。
男性ホルモンが活性度の高い物質に変換さ
れる段階を抑える。
比較的新しいタイプの治療薬。
男性ホルモン自体を減らさないので、従来の同タイプ
の薬に比べて、性機能障害などの副作用が少ない。
ザルティア
前立腺や尿道の筋肉を緩めて尿を出しやす
くするとともに、血行も良くして、弱った機能
を改善する。
新しい作用をもつ治療薬で、血流改善による効果が期
待される。
作用は強くないが、
性機能障害などはほとん
どない。
その他、
トイレに行く回数が多い場合や、
尿が我慢できない症状が強い場合は、
膀胱の収縮を抑える薬
(ベシケア、
デトルシ
トール、
ウリトスなど)
が追加されることもあります。
一部の風邪の薬、
アレルギーの薬など、
前立腺肥大症の症状に影響を与える薬があります。
他の病気で診察を受けるとき
や、
薬局で薬を買うときは、
「前立腺肥大症がある」
ことを必ず伝えておきましょう
(
「お薬手帳」
を見せると便利です)
。
日常生活で気をつけること1、2、4)
適度に水分を取りましょう。
過度のコーヒーは控えましょう。
必要な水分をとらないのは腎臓に良くありません。感染や結石の原因になることもあります。
夜間のトイレが不安な方は、
寝る前にだけ水分を控え、
日中はしっかり水分をとりましょう。
コーヒーには利尿作用
(尿をたくさん作る作用)
があり、
トイレが近くなる原因となります。
過度のアルコールや刺激の強い食事は控えましょう。
前立腺の充血をまねき、むくみの原因となります。
便秘にならないように注意しましょう。
溜まった便が尿道を圧迫します。
また、
排便時のいきみが前立腺を圧迫します。
適度な運動を心がけましょう。
運動不足は体だけでなく、
前立腺のむくみの原因にもなります。
長時間座ったままでいることは避けましょう。
継続して前立腺が圧迫され、
前立腺の周りの血行が悪くなり、
症状を悪化させます。
下半身を冷やさないように注意しましょう。
血行が悪くなり、
症状を悪化させます。
また、
寒さ自体がトイレを近くさせます。
【参考文献】
1)日本泌尿器科学会:前立腺肥大症診療ガイドライン
2)アステラス製薬:排尿トラブル改善.com 前立腺肥大症 http://www.hainyou.com/m/bph/index.html
3)MSD:メルクマニュアル医学百科家庭版 前立腺肥大(BPH)
http://www.merckmanuals.jp/home/index.html 4)田辺三菱販売:前立腺肥大症(患者さん用小冊子)