『過活動膀胱治療剤 トビエース について』

第44回
コンパス調剤薬局
スキルアップ勉強会
2015.10.30 川原
『過活動膀胱治療剤 トビエース について』
ファイザー株式会社 湯村
竜一郎様
参加者:阿部、梅津、川原、木元、小西、近藤、作佐部、佐藤(綾)
、友定
(敬称略、五十音順)
【はじめに】
過活動膀胱(OAB)とは、膀胱の不随意収縮による尿意切迫感を伴う排尿障害であ
り、頻尿、夜間頻尿、切迫性失禁を主症状とする疾患である。本邦において 40 歳
以上の男女の罹患率は 12.4%に上り、実数は 810 万人と言われている。罹患率は
加齢と高い相関を示し、70 歳以上の罹患率は 30%以上に達する。
トビエースは SOFIA 試験において、OAB の主症状である頻尿、尿意切迫感に
高い改善効果を示し、全国 OAB 患者の QOL、睡眠、社会活動の改善に貢献する
と期待されている。
【効能・効果】
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿および切迫性尿失禁
【用法・用量】
通常、成人にはフェソテルジンフマル酸塩として 4 ㎎を1日1回経口投与する。
なお、症状に応じて1日1回 8 ㎎まで増量できる。
【禁忌】
•
尿閉を有する患者
•
閉塞隅角緑内障患者
•
幽門、十二指腸又は腸管が閉塞している患者及び麻痺性イレウスのある患者
•
胃、または腸アトニーのある患者
•
重症筋無力症患者
•
本剤あるいは酒石酸トルテロジンに対して過敏症の既往歴がある患者
【副作用】
主な副作用は尿閉 40.9%、便秘 8.3%
【特徴】
・用量依存的に効能を発揮するプロドラッグで、非特異的エステラーゼにより活
性化されるため、血中濃度が安定する。
・他の過活動膀胱治療薬と比較し、便秘の副作用が少ない。
・特別な検査を必要とせず、主訴だけで処方できる。
・OAB 治療剤であるベシケアはムスカリン M3 受容体選択的なのに対し、トビエ
ースは M1、M2、M3 の親和性に差がなく、比較的消化器科系の副作用が少ない
のはそのためと考えられている。
【考察】
トビエースの活性本体 5‐HMT はデトルシトールの活性本体でもある。後者は
CYP2D6 により代謝を受けるため個体差があり、用量依存的な効果が得にくかっ
たが、前者は非特異的に代謝され個体差が少なく、血中濃度が安定し、最大 8 ㎎
の投与が可能である。この特徴は OAB の治療により有利であると推察される。ま
た、便秘という QOL を低下させる副作用の頻度が低いことも治療薬として高く評
価でき、高齢者に頻発している OAB の今後の治療に期待できる。
しかしながら、同様に高齢者に多い緑内障患者にはリスクがあり、十分な注意
や情報提供が必要であると考えられる。