持戒……間違ったことをしない。 いか 戒を守りたもつこと。人に迷惑をかけず、約束を守ること。 にんにく 忍辱……決して怒らない。 つらいことをじっとたえること。怒りの心を起こさないこと。 し ょうじん 精 進……一心に努力する。 常に努力を惜しまず、何ごとにも全力をつくすこと。 ぜんじょう 禅 定 ……誘惑に負けない。 ち え 心をおちつけ、日常生活の中で自分を見失わないこと。 智慧……すべて正しく判断する。 ものごとを正しく判断できる見方を養うこと。 これらの修行は、仏さまへのお参りの仕方でいえば、次のように考えられ ます。 ▲俎岩山 蓮着寺本堂 お彼岸 ――心の修行期間 関東教区宗務所長 霊跡別院 蓮着寺山主 期間は七日間、お中日に先祖に感謝し、残る六日間は、悟りの心に達するの 中野 日仁 季節がめぐり、春のお彼岸となりました。 に必要な六つの行い、六波羅蜜を一日に一つずつ修める日とされています。 かなめ 私たちの生活には、春のお彼岸、夏はお盆、また秋にはお彼岸、そして冬 ふ せ 布施……人のため何かよいことをする。 ちゅうにち ほどこ いております。ニュースや暦の上では最初の日を「彼岸の入り」 、最後の日 か を「彼岸明け」などともいっております。 こ え お彼岸とは、迷いの世界である此の岸から、悟りの世界である彼の岸へ到 とう し がん るという、到彼岸から名づけられた行事で、彼岸会ともいわれます。 「苦しみの此岸から安らぎの彼岸へ」の春分・秋分をお 中 日とし、前後各 さと 三日を合わせた七日間を菩提心で過ごす期間です。菩提心とは、修行を積む ことにより得られる悟りのことでございます。 ね 日蓮大聖人は、 「仏道の彼岸」 (教行證御書・昭定一四八五)と言われ、彼 さ 岸とは、仏果を得た世界、すなわち仏の考え方「悟り」を得た世界である涅 はん 槃を指し、この世界に至る生き方を仏道と言われています。迷いの世界から 悟りの世界へ渡す方法として、仏の説かれた考え方を、自分の考え方として 生きていくことを求められました。迷いの世界は此岸であり、悟りの世界が 彼岸です。 それでは、迷いの世界から、どのような修行をしたらよいかと申しますと、 みょうしょうごん のう ほん じ ほん 法華経の中に、 「 妙 荘 厳王本事品第二十七」というお経がございます。こ ろく は ら みつ の中に「六波羅蜜」といわれる、六つの修行が教えられています。お彼岸の じ かい 施しをあたえること。物だけでなく、いつくしみの心を施させ ていただくこと。 はお正月があります。四季の要の行事となって、私たちの生活に固く結びつ 宝塔 174 集より まないた 宗祖伊豆法難会 月十二日午後一時開式 五 最寄り駅:伊豆急行・伊豆高原駅または城ヶ崎海岸駅 於:霊跡別院蓮着寺 (静岡県伊東市富戸八三五) 平成十一年一月十四日 国指定天然記念物 平成三年三月二十六日 静岡県指定天然記念物 ちのやまもも枝張二十二メートルです。 樹齢推定千年・樹高十五メートル・幹周囲七・二メートルで、三本立 特に「蓮着寺のヤマモモ」のやまもも(揚梅木)の大木は有名です。 て岸壁に砕ける白波が岩肌と樹間に飛び散る様は壮観絶景です。 くだ 俎岩山 蓮着寺 くっきょく 当山は寺域約十九万坪を有し、天然の樹木に囲まれ、入江が屈 曲 し ▲白波が飛び散る 俎 岩 ▲天然記念物 蓮着寺のヤマモモ にんにく 供物 ・おりん(持戒 つつしみ) ・お花(忍辱 しのぶ) ・ (布施 ほどこし) 線香(精進 はげむ) ・お水(禅定 おちつく) ・お経(智恵 まなぶ) これらの六つの行いを彼岸の一週間に努め励むことを教えています。し か し、 こ れ ら の 修 行 法 が 別 々 に あ る わ け で は な く、 そ れ ぞ れ が 関 連 し ちゅうどう あって、一つの修行となり、彼岸に到るというのが六波羅蜜の教えで す。 そして、その心は仏教で説く「 中 道」 (どちらにもかたよらない心)の精 神をあらわしています。とくに昼夜の長さがほぼ同じになります「お中日」 、 な 彼岸の七日間を中道の精神で努め励まなければなりません。 他人が見てい ようが、見ていまいが、為すべきことを為す。 「人間は善なる性質と悪なる性質の両方を持って生きている」というのが ひそ 法華経の考えであり、同じ人間が善人にもなり、悪人にもなります。善人と いっても悪心が潜んでいるし、悪人にも善心が潜んでいます。 善心(仏性) を出して生きるか、悪心(地獄性)を出して生きていくかの違いしかありま せん。 わ あなたは、どちらの心を出して生きてきましたか、と問われた時、深い反 省の心が湧きあがってきたら、あなたは「仏の子」として生きていけます。 同じ質問に対して「うるさい」とか「わからない」とかいう反発の心が起き た人は、地獄へ向かって生きている人といえます。 人生の中で迷ったり争ったりした時に、 「どちらを選んだ方が仏の喜ぶ道 であろうか」と考えてみましょう。自分に都合のよいことは相手に都合が悪 いことが多いし、相手の都合のよいことは自分にとって都合が悪いことが多 いようです。自分だけの好都合で生活しない、独りよがりの心を起こさない は など、相手を思いやる心を持ちつづけることです。つまり、日常生活での心 がけに注意を払うことも大切な修行なのです。 お彼岸には、日頃の忙しい心を休め、 「仏の心」に想いを馳せる「一週間」 としたいものでございます。
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