最近の高校教育改革にむけての動き 校長 小西 弘高

最近の高校教育改革にむけての動き
校長
小西
弘高
現在の安倍政権において、教育再生実行会議をとおして教育改革の動きが加速しつつあ
る。今後の湯沢高校の指導体制にも大きく関わることになりそうな見込みなので、この紙
面を借りて、若干そのことにふれ、今後の課題を共有していきたい。
これまでの高校教育の改革に関する流れの概要は、次のようになっている。
教育再生実行会議は、一昨年5月に第3次提言「これからの大学教育等の在り方」にお
いて大学のガバナンス改革にふれ、また昨年7月の第5次提言「今後の学制等の在り方」
では、従来の「6・3・3・4制の見直し」や「中・高両方で教えられる教員免許の創設」
「高校における飛び級に対応できる早期卒業制度」などを内容として盛り込んでいた。
そうした中で、文科省の中央教育審議会は、教育再生実行会議の第4次提言「高等学校
教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方」を受け止めて審議を開始している。
この対応として「高等学校教育部会」「高大接続特別部会」を設置した。
「高等学校教育部会」では、高校教育を取り巻く状況の変化として、進学率上昇による
生徒の能力、適性、進路希望等の多様化、基礎学力不足や学習意欲の低下、定員割れ等に
伴う大学入試の選抜能力の低下などを挙げていた。
これらの変化に対応するために、一つに「高校教育の質の確保、向上」という課題が取
り上げられている。つまり「高校生として『共通に』身につけさせるべき資質(コア)を
規定している。想定される範囲としては、①「確かな学力」②「豊かな心」③「健やかな
体」を考えている。
一方、「多様な学習へのニーズ」への対応として、キャリア教育の推進、ICT教育の
推進、グローバル人材の育成、学び直しの推進等も考えている。
一見幅広い状況に対応しているようであるが、高校ほぼ全入時代の中で、「高校教育の
質保証を踏まえた共通性」と「多様化への対応」とは、ともすれば相反するものとなる恐
れもあり、そのジレンマをどう克服していくのか、今後の議論、対応に注目すべきである。
また、生徒の学習成果や活動状況の把握、検証を目的として「到達度テスト(基礎レベ
ル)(仮称)」の実施を考えていた。実施の目的は「生徒が自ら学習到達度を把握し、学力
を証明し、今後の学習の改善を図る」というものである。活用方法として「高校の指導改
善に生かす」「AO、推薦入試、就職時の基礎学力証明として大学が用いることを可能に
する」。「対象者は生徒個人あるいは学校単位で希望参加とし、実施教科は、国、数、英、
地歴公民、理、成績は段階表示とする。高校2、3年で年2回程度の実施」などとなって
いる。
審議の中では、「果たして希望参加型で、各学校の指導改善に生かされるのか」「学校全
体、都道府県全体実施となると、中学校の学力調査のように点数だけが一人歩きをして学
校の序列化に拍車をかけることにならないか」「本来の『生きる力』をこのテストの数値
で測ることができるのか」「大学入試のAO、推薦のみならず、一般入試にまで使用され
るおそれもあり、日常の授業や課題活動への多大な影響も懸念される」などの議論がなさ
れていたところである。
「高大接続特別部会」では、大学入学者の質の変化や多様化、大学の選抜能力の低下に
対応するために、先に述べた「高校教育の質保障」のほかに「大学教育の質的な転換」
「大
学入学者選抜の改善」について審議され、昨年6月に答申案が示された。
「大学教育の質的な転換」に関しては、講義形式中心の授業を、学生の能動的な学習へ
の参加(アクティブ=ラーニング)に転換すること、入学後の適性に合わせた専攻分野の
決定を可能にすること、成績評価や卒業認定の厳格化などの方向性を打ち出している。
「大学入学者選抜の改善」については、教科学力のみでなく、総合的な能力評価の多様
化、多面化への転換を打ち出している。
また、肥大化した大学入試センター試験に代わる新たな入試システムとして「到達度テ
スト(発展レベル)(仮称)」の実施を検討することや「合教科型、総合型」の問題を重視
した試験への移行などを目指すべきだとしている。実施方法等では、成績の提供は「段階
別や標準化点数、百分位等による提供」の検討、時期や回数では「1回のテストを一日で
終えることを前提とした年2回実施」導入時期は早くとも平成33年度選抜からの実施を
目指す」としている。また加えて、各大学の入学者選抜の改善も図ることが必要とし、記
述式、小論文、集団討論・面接、高校在学中の主体的な活動の評価などきめ細かい選抜の
実施が必要だ」としている。
そして、この審議、答申案を受けた文科省は、文科大臣決定として、今年1月に「新テ
スト」の導入の具体的な検討に入った。「到達度テスト(基礎レベル)(仮称)」に相当す
るものとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を平成30年度をめどに、「到達度テス
ト(発展レベル)(仮称)」に相当するものとして、「大学入学希望者学力評価テスト(仮
称)」を平成31年度初頭をめどに「実施大綱」の策定、公表する計画であるとしている。
このように、高校現場では、今後の国の教育施策の動向については十分注視する必要が
ある。中教審答申段階では、「新テスト~大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」におけ
る「合教科・科目型」「総合型」のテストが実施されることになった場合、現在の教科指
導体制で内容的、時間的に対応できるのか、など、特に高校3年生の授業内容、授業計画
に多大の影響が出ることを懸念する声も現場から上がっている。すなわち、抜本的な大学
入試改革は、本校のような「大学進学志望者が多い学校」では、即全体の指導体制の根本
的な見直しを意味するものと考える。
こうした変化に早めに対応するための準備、検討が必要である。