大学入試に新テスト導入へ 中教審が答申 - Kei-Net

大学入試情報
大学入試に新テスト導入へ 中教審が答申
2014/12/26
このほど中央教育審議会(中教審)が文部科学大臣に、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の改革につい
て答申した。大学入学者選抜については、現行の大学入試センター試験を廃止し、新たに2つのテストを導入する
こと、各大学における個別試験についても新テストのスタートを待たずに入試改革を進めていくことなどが提言さ
れている。以下、答申の詳細をみていく。
■改革の柱は2つの新テスト
今回の答申は、
「新しい時代にふさわしい高大接続に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改
革について」というもの。教育改革における最大の課題でありながら実現が困難であった「高大接続」改革を実現
するための方策として、高等学校教育、大学教育およびそれらを接続する大学入学者選抜の抜本的な改革が必要で
あると提言している。なかでも高等学校教育と大学教育を結ぶ接続段階での評価の在り方である大学入学者選抜が
変わることで両者の教育の在り方も大きく転換するとし、教育改革の実効性を高めるために、大学入学者選抜の改
革の必要性を挙げている。
その具体的な方策として提言されているのが、高等学校での教育の質の確保・向上を図り、生徒の学習改善に役
立てるための「高等学校基礎学力テスト(仮称)
」の導入、現行の大学入試センター試験の廃止とこれに替わる「大
学入学希望者学力評価テスト(仮称)
」の導入である【図表1】。
【図表1】新テストのイメージ
高等学校基礎学力テスト(仮称)
名称
目的
大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
高等学校段階の基礎学力を評価
大学入学希望者に求められる学力を評価
高校2・3年生
大学入学希望者
主として学力の基礎となる「知識・技能」を評価
実施当初は「国語総合」「数学Ⅰ」「世界史」「現代社会」「物理
基礎」「コミュニケーション英語Ⅰ」などの高等学校必履修科目を想
定(選択受検も可能)
英語等は民間の資格・検定試験も積極的に活用
各学校・受験者に対し、成績を段階で表示(各自の正答率も
併せて表示)
主として「思考力・判断力・表現力」を評価(「知識・技能」は単独では評
価しない)
「教科型」に加えて、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて
出題(将来は「合教科・科目型」「総合型」のみとする)
多くの大学で活用できるよう広範囲の難易度とする(選抜性の高い大学
が活用できる水準の高難易度の出題含む)
英語は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を総合的に評価(民間の資
格・検定試験も活用)
大学および受験者に対し、段階別表示による成績提供を行う
解答方式
原則、多肢選択方式(記述式導入を目指す)
多肢選択方式だけでなく記述式を導入
作問
イメージ
全国学力・学習状況調査(A問題・B問題)の高校教育レベル
の問題を想定
PISA型の問題を想定(知識・技能を活用し、自ら課題を発見し、その解
決に向けて探究し成果等を表現するための力を評価)
実施スケ
ジュール
2019 年(平成 31 年度)から実施
年2回程度実施し、在学中に複数回の受検機会を提供(実
施時期は夏~秋を基本とし、学校現場の意見を聴取しなが
ら検討)
2020 年(平成 32 年度)から実施
年複数回実施(実施回数・時期は高校教育への影響を考慮しつつ、高
校・大学関係者を含めて協議)
対象者
出題教
科・科目
※中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」より作成
「高等学校基礎学力テスト」(以下、
「仮称」は略)は高等学校段階の基礎学力を評価するもので、当初は必履修
科目である6教科の出題を想定している。また、英語等は民間の資格・検定試験も活用するとしている。なお、在
学中に複数回受験できるよう高校2・3年での受験を可能とし、具体的な実施時期は夏~秋を基本とし、学校現場
の意見を聴取しながら検討される。
「大学入学希望者学力評価テスト」は大学入学希望者に求められる学力を評価するもので、学力の基礎となる「知
識・技能」は単独では評価せず、主として「思考力・判断力・表現力」を評価するものとなる。具体的には「教科
型」に加えて、
「合教科・科目型」
「総合型」の問題を組み合わせて出題するとし、提言通りなら将来的には「合教
科・科目型」
「総合型」のみの出題となる。また、多くの大学で活用できるよう広範囲の難易度とし、選抜性の高い
大学が活用できる水準の高難易度の出題を含むとしている。英語は「読む」
「聞く」
「書く」
「話す」の4技能を総合
的に評価するとし、問題の出題のほか、民間の資格・検定試験の活用も視野に入れている。なお、民間の資格・検
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定試験については、英語にとどまらず「合教科・科目型」
「総合型」についても活用を見据えた検討を行う。解答方
式は多肢選択方式だけでなく記述式を導入するとしている。
高等学校基礎学力テストは 2019 年度(平成 31 年度)から、大学入学希望者学力評価テストは 2020 年度(平成
32 年度)からの実施を目指す。成績提供方法は両テストとも段階別表示によるものとなりそうだ。また、両テスト
は目的や性格の違いがある一方で、コンピュータを使ったCBT方式の導入や両テストの難易度・範囲の在り方な
ど、共通に検討すべき事項が多いとして、一体的に検討されることになるようだ。新テストの実施主体は大学入試
センターを改組した新たなセンターが担うとしており、新センターがテストの実施と方法開発、入学者選抜や学力
評価についての新しい方法の開発などを行っていく。
■各大学にも入試改革を求める
今回新テストの導入とともに、各大学の個別の入学者選抜(以下、個別選抜)についても改革が提言されている。
個別選抜は、国の目指す「学力三要素」を踏まえた多面的な選抜方法をとるものとし、具体的な選抜方法等に関す
る事項を各大学がその特色等に応じたアドミッション・ポリシーにおいて明確化するよう提言している。
また、国においては適切なルールの下での入学者選抜全体の多面的・総合的評価への転換を図るため、一般入試、
推薦入試、AO入試の区分を廃止し、大学入学者選抜全体の共通的な新ルールを構築するために、大学入学者選抜
実施要項を抜本的に見直すよう提言してい
学力三要素
るほか、個別大学における入試改革を推進
① 基礎的な知識及び技能
するために、主体的に改革に取り組む大学
② ①を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力
にとってインセンティブになるような財政
③ 主体的に学習に取り組む態度
措置の在り方の検討を求めている。
■新テスト導入までのスケジュール
答申では両テストの実施年度が明記されたほか、両テストの実施にいたるまでのスケジュールについても言及さ
れている【図表2】。
国に対しては、高校生をはじめとした関係者が見通しを持って対応できるよう、実施までの具体的な制度設計、
プレテストの実施等に係る詳細スケジュールを策定し、公表することを求めている。
新テストについては、早急に専門家会議を立ち上げ、対象となる教科・科目、「大学入学希望者学力評価テスト」
における「教科・科目型」
「合教科・科目型」
「総合型」等の具体的な枠組み、問題の蓄積方法、記述式問題の導入
方法、CBT方式の導入方法、成績表示の具体的な在り方などについて検討を行い、答申後1年(2015 年冬)を目
途に具体的内容について結論を得ることとしている。なかでも「合教科・科目型」
「総合型」については、国が主導
して検討を行い、2016 年度中(2017 年春)を目途に作問イメージを公表するよう求めている。
【図表2】大学入試改革スケジュール(案)
2014年度
(2015年)
2015年度
(2016年)
2016年度
(2017年)
詳細な制度設計
大学入学希望者学力
評価テスト(仮称)
専門家による検討・フィージビリティ検証
(参考)学習指導要領
(2018年)
2019年度
(2020年)
(2019年)
2020年度
2021年度
(2021年)
(2022年)
2022年度
(2023年)
新テスト導入
高等学校基礎学力
テスト(仮称)
個別大学の選抜
2018年度
2017年度
プレテスト準備・実施・結果反映
実施内容詳細決定・公表
専門家に
よる検討
新テスト導入
プレテスト準備・実施・結果反映
個別大学において検討、周知も含めて可能なも のから随時実施
答申
告示
新テストを活用し、より多元的な評価を実施
年次進行で実施
※文部科学省資料より
かつてない大学入学者選抜方法の変更となるが、実施までの検討期間は短い。テストの年複数回実施に加え、こ
れまでになかった記述式導入やCBT方式検討など、問題の作成はもちろん運用面についても問題が山積している。
また、今回の答申で改革の方向性は確認できるものの、テストの具体的なイメージが現段階ではつかみづらい。受
験生はもとより高等学校や大学など周辺の関係者を含めて影響は多大なだけに、丹念な議論のもと、しっかりとし
た制度設計を求めたい。
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