高 大 接続改革を追う 昨年 12 月に中央教育審議会(中教審)から「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高 等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」(以下、答申)、今年 1 月に「高 大接続改革実行プラン」が公表された。下村文部科学大臣の「大臣が代わっても政権が代わってもこ の改革は変えない」という強い決意のもと大きな改革が進む予定だ。そこで、このコーナーでは、 「高 大接続システム改革会議」の動きを中心に、高大接続改革に関する動向をお届けする。なお、ここで 取り上げている話題はその時点の情報であることにご留意いただきたい。 高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を 一体的に改革 大きく転換するとし、大学入学者選抜の改革の必要性を 挙げている。 その具体的な方策が、高等学校での教育の質の確保・ 昨年 12 月の中教審答申では、大学入学者選抜につい 向上を図り、生徒の学習改善に役立てるための「高等学 て、現行の大学入試センター試験を廃止し、新たに2つ 校基礎学力テスト(仮称)」の導入、現行の大学入試セ のテストを導入すること、各大学における個別試験につ ンター試験の廃止とこれに替わる「大学入学希望者学力 いても新テストのスタートを待たずに入学者選抜の改革 評価テスト(仮称)」(以下、仮称を省略)の導入<図表 を進めていくことが提言された。 1>、各大学の個別の入学者選抜(以下、個別選抜)の この答申では、単に大学入試の改革にとどまらず、高 改革である。個別選抜は、 「学力三要素」(注)を踏まえた 等学校教育、大学教育およびそれらを接続する大学入学 多面的な選抜方法をとるものとし、具体的な選抜方法等 者選抜の抜本的な改革が必要であると述べている。中で に関する事項を各大学がアドミッション・ポリシーにお も高等学校教育と大学教育を結ぶ接続段階での評価であ いて明確化するよう提言している。 る大学入学者選抜が変わることで両者の教育の在り方も そして、この改革の実現には、高校や大学における教 <図表1>学力評価のための新たなテストのイメージ 名称 目的 対象者 出題 教科・科目 高等学校基礎学力テスト 大学入学希望者学力評価テスト 高等学校段階の学習の達成度の把握 大学入学希望者について大学教育を受けるために必要な能力を 把握 高校2・3年生 大学入学希望者 思考力・判断力・表現力を評価する問題を含めるが、特に学力 の基礎となる「知識・技能」の確実な習得を重視 実施当初は 「国語総合」 「数学Ⅰ」 「世界史」 「現代社会」 「物理 基礎」 「コミュニケーション英語Ⅰ」 などの高校の必履修科目を 想定(選択受検も可能) 高難度から低難度まで広範囲の難易度 英語等は民間の資格・検定試験も積極的に活用 各学校・受検者に対し、成績を段階で表示(各自の正答率も併 せて表示) 「思考力・判断力・表現力等」を中心に評価(「知識・技能」は 単独では評価しない) 「教科型」に加えて、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み 合わせて出題(将来は「合教科・科目型」「総合型」のみとする) 多くの大学で活用できるよう広範囲の難易度(選抜性の高い大 学が活用できる水準の高難易度の出題含む) 英語は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を総合的に評価 (民間の資格・検定試験も活用) 大学および受験者に対し、段階別表示による成績提供 解答方式 原則、多肢選択方式(記述式導入をめざす) 多肢選択方式だけでなく記述式を導入 作問 イメージ 全国学力・学習状況調査(A問題・B問題)の高校教育レベル の問題を想定 PISA 型の問題を想定(知識・技能を活用し、自ら課題を発見し、 その解決に向けて探究し成果等を表現するための力を評価) 実施スケ ジュール 2019(平成 31)年度から実施 在学中に複数回の受検機会を提供(例えば年間2回程度。実施 時期は夏~秋を基本とし、学校現場の意見を聴取しながら検討) 2020(平成 32)年度から実施 年複数回実施(実施回数・時期は高校・大学関係者を含めて協議) ※中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」より作成 (注)学力三要素…① 基礎的な知識および技能、② 知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力、③ 主体的に学 習に取り組む態度) 76 Kawaijuku Guideline 2015.4・5 高大接続改革を追う 育や評価の在り方を抜本的に転換する必要があり、その トに関しては、平成 27 年度中を目途に専門家会議の検 ためには具体的な施策や改革スケジュールの明確化が必 討結果をとりまとめるとした。 要であるとして、 答申後に「高大接続改革実行プラン(仮 称) 」の策定と公表を求めていた。 高大接続改革に向けた工程表を公表 高大接続システム改革会議が始動 その専門家会議というのが、3月5日に始まった「高 大接続システム改革会議」である。そこでは、高校教育 そして今年1月 16 日に「高大接続改革実行プラン」 改革、大学教育改革、個別選抜の改革、多様な学習成 が公表された。<図表2>はその概要である。 果・学習活動の評価、新テストの在り方について検討す 具体的な施策として「各大学の個別選抜の改革」、「高 る。新テストについては、対象教科・科目、作問、CBT 等学校基礎学力テスト」および「大学入学希望者学力評 方式導入、試験の実施回数・時期、成績表示の在り方な 価テスト」 、 「高等学校教育の改革」 、 「大学教育の改革」 どを検討する。なお、座長は高大接続特別部会の部会長 の4点が挙がっている。早いものとしては、平成 26 年 で、12 月の答申を行った第7期中央教育審議会の会長 度中に「個別選抜の改革」として、アドミッション・ポ の安西祐一郎氏である。安西氏は文部科学省顧問にも就 リシーに関する事例集が策定される予定だ。2つのテス 任し、この改革を強力に進めていく予定だ。 <図表2>高大接続改革実行プラン(概要) 1 各大学の個別選抜の改革 ●個別選抜改革を推進するための法令改正【平成27年度中を目途 に改正】 ●大学入学者選抜実施要項の見直し【平成28年度大学入学者選 抜実施要項(平成27年度)以降順次実施】 ・一般入試、推薦入試、 AO入試の区分を廃止した新たなルール を構築するために、大学入学者選抜実施要項を見直す。 ●アドミッション・ポリシーの明確化【平成26年度中に事例集、平 第1回会議では、「高大接続改革に関する体制につい て(案)」<図表3>として、今後どのような体制で検 討が進めていくのかが示された。それによると「高大接 続システム改革会議」の下に、「新テストワーキンググ ループ」「評価検討ワーキンググループ」(ワーキンググ ループは非公開)を設け、検討を進める。現在のところ 高大接続システム改革会議としては、中間まとめを夏頃 に、年内に検討内容を公表する予定である。 (3月 20 日現在) 成27年度中にガイドライン作成】 2 「高等学校基礎学力テスト」および 「大学入学希望者学力評価テスト」の実施 <図表3>高大接続改革に関する体制ついて(案) ●「高等学校基礎学力テスト」は平成31年度から、「大学入学希望 高大接続改革プラン 者学力評価テスト」は平成32年度からの実施をめざす ・平成27年度中を目途に専門家会議の検討結果をとりまとめ ・平成29年度初頭に「新テストの実施方針」を策定・公表 ・「高等学校基礎学力テスト」は平成29年度中を目途に、「大学 入学希望者学力評価テスト」は平成30年度中を目途にプレテス トを実施 中央教育審議会 高等学校教育 ■教育課程企画特別部会 ・「高等学校基礎学力テスト」は平成30年度初頭を目途に、「大 学入学希望者学力評価テスト」は平成31年度初頭を目途に「実 施大綱」(新テストの具体的内容)を策定・公表 学習指導要領等の改訂 全体に関する方向性を集 中的に審議し、改訂の方 向性を取りまとめ。平成28 年度中を目途に答申 「高大接続システム改革会議」 検討 状況 報告 意見 個別選抜の改革 ■教員養成部会 3 高等学校教育の改革 ●課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学びの推進と高等 学校教員の資質能力の向上【速やかに実施】 ●多様な学習活動・学習成果の評価【平成28年度中に調査書や 指導要録を改訂】 ●学習指導要領の見直し【平成28年度中に答申】 4 大学教育の改革 ●大学教育の質的転換【平成27年度中を目途に制度改正】 ●学生の学修成果の把握・評価の推進【平成27年度中を目途に 制度改正】 ※高大接続改革実行プラン(概要)より作成 教員養成・採用・研修に ついて検討。平成27年度 を目途に答申 大学教育 ■大学教育部会 ・アドミッション・ポリシー等 の策定の義務づけ ・認証評価制度において 学修成果や内部質保証 の評価等について検討。 平成27年度を目途に結 論 ・アドミッション・ポリ シー等の策定を法 令上位置づけるこ と、ガイドライン等 の検討 ・個 別 選 抜 改 革を 推進するための財 政措置等の検討 WG ごとに 検討 状況 報告 意見 広報 ・産業界をはじめ、 広く社会におい て国民的な議論 を深めるための広 報の検討 新テスト・評価 ①新テストWG 新テス トの具体的な制度設 計や実施方法など、その導 入に関し必要な事項の検 討 高等学校基礎学力テス ト に係る作業 大学入学希望者学力評価 テストに係る作業 ②評価検討WG 多様な学習成果や活動を 反映するための調査書や 指導要録等の在り方の検 討 ※大学入試センターの 抜本的改組の検討 ※高大接続システム改革会議(第1回)資料より作成 Kawaijuku Guideline 2015.4・5 77
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