校長室便り - 成田高等学校

<「校長室便り」59>
卒業研究発表会
日の出が早くなった。節分の日の2月3日大谷津公園の
交差点で停まると、太陽が正面から昇って来た。かなりま
ぶしい。この交差点は、安食側から行っても成田側から行
っても、緩い登り道の頂点になっている。今まではこの交
差点を通過するとき、太陽がまだ昇っていなかった。それ
が、折りも折り、節分の日に正面から目を射て来たので驚
いた。
学校では2月5日(金)に高校後期入試が無事終了した。中高2回ずつ計4回の入試
が終わって一息ついた。が、私立大学の入学試験は2月から本格的に始まった。高校3
年生は3学期家庭学習なのだが、学校に来て勉強している者も結構いる。そんな教室を
回って生徒達と話すのも楽しい。といっても勉強のじゃまになってはいけないので、ご
く簡単に言葉を交わすだけだ。それでも、いろいろなことを知ることができる。
一方、推薦入試やAO入試で既に進学先が決定している諸君は、自分の進路等に合わ
せた研究をして、大学での学習・生活に備えている。その研究発表会が2月2日(火)
から4日(木)にかけての3日間あった。これは毎年実施しているものだ。私も、全部
は聞くことができないのだが、毎年聞きに出かける。
例年、発表方法、内容に進化が感じられるが、今年は殊
の外それが強く感じられた。発表は情報の授業の応用実践
でもあり、今後大学も含めて社会に出た時のプレゼンテー
ションの訓練も兼ねているのだが、パワーポイントの技術
もかなりのものだ。中には文字だけでなく音声が入ってい
るものまであって驚かされた。最初それを聞いた時には情
報の先生がやったのかと思ったがそうではなかった。生徒
自身がやったとのことだった。
内容は例えばこんなものだ。
「柔道とウェイトトレーニングの関係」、
「FWとしてレベ
ルアップするために~エースストライカー大儀見優季に近づくために~」。前者の生徒は
ごく最近行われた千葉県柔道選手権高校の部で優勝している。後者はジェフ市原レディ
ースに所属し、なでしこジャパンのストライカーを目指している。
また、
「チーム医療と医療検査~臨床検査技師の関わり方~」、
「日本のマンガ・アニメ
がもたらす世界への影響」。前者の生徒は臨床検査技師になることを既に決めていて、単
なる検査だけでなく、積極的に患者に関わることを考えている。後者は漫画が大好きと
のことだった。ごく親しい友人が長く漫画の編集者をやっていたので私も興味を持って
質問してみたが、発表者はマンガにかなり詳しかった。
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驚いたことに保護者からも質問があった。説明しておかな
ければならないが、今年から保護者の方々にも自由に参観し
ていただいている。あまりいないだろうなと思ったが、3日
目のこの日は7人おられた。延べではもっとおられたと思う。
話しかけてみると、ご夫婦で来られた方、また自分の子ど
もの発表は1日目に終わったが今日3日目にも来たという方
もおられて驚いた。発表が大変おもしろいというのだ。あり
がたく、またうれしかった。
2020年度(平成32年度)から大学入試制度が変わり、現行のセンター試験の代
わりに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」になる。この中で記述式問題が話題に
なっている。知識の総量を問うのではなく、総合的な思考力や表現力を伸ばし、生徒の
能動的な学習態度を養っていくためとのことだが、私も大賛成だ。
しかし、1月29日実施された文科省主催「高大接続システム会議(第10回)」の配
付資料「論点メモ(案)」を見ると、採点期間の試算は国語で40字、80字、200字、
300字とかなり物足りない。勿論採点期間や採点の客観性は問題にしなければならな
いだろうが、現行の国立大学の個別試験では既にこれ以上の記述試験が課されている。
また、フランスのバカロレア等ヨーロッパ諸国の試験は言うまでもない。
勿論、大学入試制度の変更によりそれ以下の高校・中学、更には小学校の授業形態、
更に教育全体の変革を図ることもねらいにあるのだろうから、一挙に、また根底的に変
えることは要しないのかもしれないが、もう少し積極的な変更を期待したい。
最近断捨離がはやっているが、昨年私も家の整理をした。本もあれこれあったのだが、
その中に私が大学受験をしたときの赤本があった。ちょうど50年前だ。懐かしくて読
み出してしまったのだが、世界史の問題を見ると400字くらいで書かせる問題で、今
の国公立の個別試験と変わらない。勿論国語等も記述である。
「教育改革」が行われ、思考力・判断力・表現力など新たに求められているように見
えるがそんなことはない。これらはいつの時代にも求められていたわけだ。
私は公立高校にいたことがあるが、ある時期学校の事情もあって、国語の教員なのに、
臨時免許で現代社会を教えていた。地域研究をやったときだったかレポートを課したら、
A4で40枚も書いてきた生徒がいて驚かされた。それも一人でない。ついでながら、
このときの生徒達のレポートによって私はイスラエルを訪ねることになった。
卒業研究は課題研究であるわけだが、授業の中でもこのような試みをすることは大切
だと私は考えている。自ら課題を設定し、調べ、書き、述べる。これは学びの最も根底
的な営為であろう。単に大学入試対応だけでなく考えるべきことだ。
大学関係者も含め最も根底的な学習・学力を求めているのである。
(2016.2.8)
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