2015/ 為替トピックス 2/27 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 トルコ中銀、2会合連続で利下げを実施 トルコ中央銀行(中銀)は2/24に主要政策金利である1週間物レポ金利を0.25%引き下げ 7.50%にすると決定した。政策金利の引き下げは1月に続いて2会合連続。インフレ率が低下 したことを受けた対応とみられる。 中銀は食品価格やエネルギー価格を除いたコアのインフレ率を注視する姿勢を示し、今後の 政策変更には慎重な姿勢をみせた。一方で、政府高官は2015年6月に総選挙を控えて、中 銀の利下げペースの遅さに対し強い批判を述べている。 トルコリラは、依然として利下げ観測がくすぶっていることや、総選挙を控えてトルコへの資金 流入が抑制される可能性があること等から、対ドルでの軟調地合いを見込む。しかしながら、 原油安にともなう貿易・経常赤字の縮小や、金融緩和による消費者マインドの改善を通じて ファンダメンタルズの改善期待が高まるとともに徐々に持ち直しの動きを強めていこう。 トルコ中銀は2月の 会合で 政 策金利の 0.25%の引き下げを 決定 トルコ中央銀行(以下中銀)は、2/24の金融政策決定会合で主要政策金利であ る1週間物レポ金利を0.25%引き下げ7.50%とした。政策金利の引き下げは2会合連 続。併せて、金利誘導目標の上限を示す翌日物貸出金利を11.25%→10.75%、下限 を示す翌日物借入金利を7.50%→7.25%へそれぞれ引き下げた。市場では政策金 利の0.25%の引き下げ予想が大勢となっていたこともあり、発表後のリラ相場の反応 は限定的なものにとどまった。 トルコリラの推移 (日次:2013/1/2~2015/2/26) (1リラ=円) (1ドル=リラ) 60 1.6 58 対円(左目盛) 1.7 56 対ドル(右逆目盛) 1.8 54 1.9 52 2.0 50 2.1 48 2.2 46 2.3 44 2.4 42 2.5 40 13/1 2.6 13/7 14/1 14/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 15/1 (年/月) リ ラ 高 リ ラ 安 2015/2/27 為替トピックス 中銀はコアインフレ を注視する姿勢を示 し、過度な利下げ期 待が高まらないよう 配慮 今回の声明文は1月会合とほぼ同様の内容となったが、中銀が食品やエネル ギー価格を除いたコアのインフレ率を注視する姿勢をみせた点が特筆される。 中銀は物価に関して、「これまでの慎重な金融政策によってインフレ動向、特に エネルギーや食品を除くコアのインフレ動向およびインフレ見通しに好ましい影響 を及ぼし続けており、委員会は今後もコアインフレ率は低下すると予想している」と の見通しを示した。そのうえで、今回の政策変更については、「エネルギー価格と食 品価格の激しい変動を踏まえ、慎重な規模での利下げを決めた」と述べた。1月会 合では利下げ理由として、原油安によるインフレ率の低下を挙げていたが、今会合 ではコア指数の低下見通しを指摘している。 これは原油安で短期的にインフレ率が低下する可能性はあるものの、コアインフ レを注視する姿勢を示すことで、金融市場で過度に利下げ期待が高まらないように 配慮したものとみられる。6月に総選挙を控えている中、エルドアン大統領をはじめ とする政府高官は、与党公正発展党(AKP)の支持率拡大を狙って中銀に大幅な 利下げによる景気刺激策を要求していた。そのような背景もあり、市場では利下げ 観測がくすぶり続け、リラの対ドル相場は1月中旬以降、軟調に推移している。2/6 の強い米1月雇用統計発表後のドル高もあり、2月中旬には1ドル=2.50リラ台に乗 せ、過去最安値を更新した。リラ下落にともない輸入物価が上昇すれば、利下げに よる国内景気の刺激効果が出てくる前にインフレ圧力の拡大等、マイナスの影響が 強まる可能性を中銀が考慮した面も考えられる。 なお、トルコ統計局が2/3に発表した2015年1月の消費者物価指数(CPI)は前年 比+7.24%と、中銀のインフレ目標(+5%±2%)の上限は上回っているものの、2013年5 月以来の低い伸びとなった。生産活動の川上の物価動向を示す生産者物価指数 は1月に前年比+3.28%まで低下しており、川下のCPIも低下基調は続くと予想され る。一方で、1月のコアCPIは前年比+8.63%と14年12月の同+8.73%からは低下してい るものの、そのペースは緩やかにとどまっている。 トルコの物価指数(前年比) (月次:2011/1~2015/1) (%) 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 インフレ目標(5%±2%) 消費者物価(CPI) コアCPI(除く食品、エネルギー) 生産者物価 8.63% 7.24% 3.28% 11/1 12/1 13/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 14/1 15/1 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2015/2/27 為替トピックス 政府側は 中銀の 慎 重姿勢に対し強い批 判を展開 中銀は今後の金融政策について、1月に続き「持続的なインフレ低下には、金融 政策における慎重さが求められる。将来の金融政策決定は、インフレ見通しの改善 次第である」と述べ、政府が求める大幅な利下げには否定的なスタンスを示した。中 銀が物価を注視して金融政策を行う姿勢をみせたことは金融市場にポジティブに受 け止められると考えられる。 一方で、政府高官は中銀の慎重姿勢に対して強い批判を展開。ダウトオール首 相は今会合の利下げについて、「われわれはもっと大幅な利下げを期待していた」 との見解を示したほか、ゼイベクチ経財相は「中銀は政策金利を7%以下にすべきで あった」と述べた。また、エルドアン大統領も「中銀のこれまでの利下げは2014年1月 の利上げ幅(4.50%から10.00%)の半分にも満たない」と不満を述べた。金融市場で は政府の利下げを求める姿勢が、通貨や物価の安定を使命とする「中銀の独立性」 への信認低下につながるとして嫌気されており、6月の総選挙を控えてこうした動き が一段と強まる可能性には引き続き留意が必要とみられる。 トルコの主要金利の推移 (週次:2010/7/2~2015/2/26) (%) 14 12 10.75 10 8 7.50 7.25 6 4 市場金利(翌日物銀行間金利) 政策金利(1週間物レポ金利) 上限金利(翌日物貸出金利) 下限金利(翌日物借入金利) 2 0 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 (注)トルコ中銀は資金供給オペ等を通じ市場金利を政策金利近辺に誘導 市場金利の変動を許容する幅として、上限金利と下限金利を設定 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 リラ相場は短期的に 下値不安がくすぶる 14/1 14/7 15/1 (年/月) リラ相場は、①依然として利下げ観測がくすぶっていることや、②選挙を控えてト ルコへの資金流入が抑制される可能性があること、③米国が利上げ開始に向けて 歩み始めていること、等から対ドルでの軟調地合いは継続するとみられる。しかしな がら、ギリシャ問題の一服を受けた欧州向け輸出の回復見通しや、原油安にともな う貿易・経常赤字の縮小に加え、リラ安にともなう観光収入の増加等、外需が中心と なって成長を下支えしていくとみられる。また、中銀による金融緩和効果が消費者マ インドの持続的な改善につながれば、経済ファンダメンタルズの改善期待が一段と 高まり、リラも徐々に持ち直しの動きを強めていこう。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2015/2/27 為替トピックス トルコの貿易収支 (月次:2010/1~2014/12) (億ドル) トルコの経常収支 (四半期:2003/3~2014/9) (%) 0 4 2 ▲ 30 0 ▲2 ▲ 60 ▲4 ▲ 90 ▲6 原油 経常収支対GDP比 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 経常収支対GDP比(除くエネルギー) ▲8 貿易収支(原油を除く) ▲ 120 ▲ 10 03 (年/月) 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 トルコへの国別の旅行者数 (年次:1998~2014) (万人) 4000 3500 3000 14 (年) 出所:トルコ中央銀行のデータよりみずほ証券作成 トルコの消費者信頼感指数 (月次:2008/1~2015/2) (ポイント) 85 その他 アジア 80 アフリカ 南北アメリカ 2500 ロシア・CIS 2000 ヨーロッパ 75 70 1500 65 1000 60 500 0 55 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 出所:トルコ中央銀行のデータよりみずほ証券作成 08/1 (年) 09/1 10/1 11/1 12/1 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 13/1 14/1 15/1 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2015/2/27 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定 の手数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸 費用等)をご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購 入対価のみをお支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれが あります。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの 遅滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向を ふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状 況によっては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面 や目論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-150227-17 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5
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