景気循環研究所レポート 原油の供給過剰にブレーキか?価格上昇のきっかけに 2016 年 2 月 1 日 OPEC 増産が 2015 年原油 価格下落の一因 原油価格の大幅な下落が続く中、産油国は協調減産に舵を切る可能性 が出てきた。1月26日、サウジアラビアとロシアは原油の供給過剰対策で 協議し、同28日、サウジアラビアは各産油国に5%の減産を提案した。 14年夏以降の原油価格の値崩れは、中国など新興国の需要減退もさる ことながら、供給過剰問題が解消されなかったことが大きいとみられる。 15年2月の国際エネルギー機関(IEA)の石油市場月報を振り返ると、 15年の非OPECの産出量は、シェールオイルの低迷で、日産74万バレルの 増産に止まると予想されていたが、実際には同129万バレルの増産となっ た(図1) 。 さらに深刻だったのは、15年のOPECの産出量が、12年以来の大幅増産 となったことだろう。協調減産の話し合いが決裂した2014年11月のOPEC 総会では、生産枠は据え置かれたものの、その後、各国は増産に踏み切 った。仮に、15年について、OPECが生産を据え置いていれば、世界の供 給増は非OPECの増産分に止まり、需給は大きく引き締まっていたはずで ある(15年の世界需要増は同179万バレル、供給増は同129万バレル)。 参考までに、14年7月以降の原油需要見通し(2015年)の変遷をみると、 14年7月から15年1月調査時点にかけ、需要見通しは下方修正されたもの 嶋中 雄二 景気循環研究所長 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 図1.世界の原油の需給と原油価格 (百万バレル/日) (前年差) 2.00 opec供給 (左目盛) シニアエコノミスト 03-6213-6573 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 1.20 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6213-2608 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 1.70 1.05 1.10 0.60 0.00 -1.00 2.32 2.40 1.00 宮嵜 浩 世界供給 2.20 (左目盛) 0.10 0.50 非opec供給 (左目盛) 1.33 (ドル/バレル) 230 2.56 1.27 1.79 見通し 1.37 0.55 1.23 0.84 -0.15 130 -0.61 世界需要 (左目盛) 110 70 -2.00 16年 ? 1-3月 原油価格(WTI) (右目盛) -3.00 景気循環研究所 三菱ビルヂング 150 90 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。 東京都千代田区丸の内 2-5-2 190 170 1.29 0.46 -0.78 210 50 30 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (注)16年1-3月期の原油価格は、16年1月1日~1月28日までの平均 (出所)IEA『 Oi l Ma rket Report Ta bles』, bloomberg 1 (年) 2016 年 2 月 1 日 OPEC が増産を中止す の、それ以降、同見通しは上方修正されている(図2) 。このことから、15 年 れば、シェール減産 の原油価格下落については、供給側の要因が大きかったことが示唆される。 と相まって、需給は 16 年 1 月の国際エネルギー機関(IEA)の石油市場月報によると、16 年は タイト化する見通し シェールオイルが減産に転じ、非 OPEC の産出量は前年に比べ日産 61 万バレ ル減少する。仮に OPEC が 15 年 12 月時点の産出水準を維持するなら、OPEC の 産出量は前年に比べ日産 46 万バレルの増加に止まり、世界の供給は前年から 同 15 万バレル減少する見込みである。これに対して 16 年の世界の需要は、 日産 123 万バレル増加すると予想されている(前掲図1)。 今般の供給過剰対策の協議が実を結び、最終的に OPEC が増産姿勢を改めれ ば、シェールオイルの減産と相まって、原油の需給はタイト化するとみられ、 原油価格反転のきっかけとなる可能性がある。 (百万バレル/日) 図2.2015 年の原油需要見通しの変遷 95.0 12.5 15年 7月調査 94.0 世界 (左目盛) 94.5 94.0 12.0 15年 12月調査 94.6 11.5 15年 1月調査 93.3 93.5 93.0 15年 11.0 12月調査 11.3 15年 中国 7月調査 (右目盛) 10.8 14年 10月調査 10.6 92.5 7 8 (百万バレル/日) 9 10 11 12 1 14 2 3 (出所)IEA『 Oi l Ma rket Report Ta bles』 4 5 6 7 8 10.5 10.0 9 10 11 12 15 (以 (16.2.1 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 2 上) 福田) 2016 年 2 月 1 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 3
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