Ma-Do(マ・ドゥ)誌の特集で取り上げられました

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個別銘柄間の格差が産む収益機会
ニューバーガー・バーマン株式会社 投資運用部 シニア ヴァイス プレジデント
牧 剛司
015年は、米国株式ロング・ショー
2
国など世界の主要国の経済ファンダメ
過去のケースだと、銘柄間の相関関
ト戦略への魅力的な投資機会とな
ンタルズは、14年に次第に分岐し始め、
係が高い局面では同戦略のリターンは
ると予想している。同戦略は、投資魅
同時に各国中央銀行の金融政策にも相
低調だが、相関関係が低下するにつれ、
力が高い企業を買い持ち(ロング)す
違がみられるようになった。この結果、
リターンが高まる傾向がある。足元で
る一方で、業績悪化等による株価の下
金利、為替、資源価格等のボラティリ
はこの銘柄間の相関が07年以来の水
落が予想される銘柄を売り持ち(ショ
ティが高まったが、その高まりが今後
準にまで低下しており、同戦略のリタ
ート)することで収益の獲得を目指す
も継続すれば、各企業の株価にもより
ーンの向上が期待される環境となりつ
運用手法だ。ショートに関しては、
大きなばらつきが出てくることが予想
つある。15年は米国において政策金利
S&P500株価指数のような市場インデ
される。例えば、超低金利下という理
の引き上げも視野に入っており、株式
ックスを売り建てて株式市場全体の下
由だけで資本市場での資金調達が可能
市場がこれまでの金融相場から業績相
落による影響を低減させることもある。
だった企業は、中央銀行が利上げすれ
場へ移行する過程では、銘柄間の相関
ば、大きな痛手を被るだろう。今後は、
関係が一段と低下し、同戦略のマネジ
米国株式市場のファンダメンタルズ
銘柄選定においてよりファンダメンタ
ャーにとって収益の獲得機会がさらに
は依然、好調な状態にある。米国経済
ルズの分析が重要になってくる。14年
高まる可能性がある。
は堅調で米国企業業績も安定成長が見
を通じて継続的に高まってきたボラテ
一方、堅調に上昇を続ける米国株式
込まれている。一方、株式市場ではこ
ィリティと相関の低下基調は、15年も
市場に関して短期的な調整局面を懸念
こ数年、上昇局面が続いたことにより
引き続き同戦略のマネジャーにとって
する投資家も多いだろう。同戦略は、
高値警戒感が台頭しており、また15
は格好の投資機会となるだろう。
そのような調整局面でのダウンサイド
***
抑制効果を発揮することも期待される。
年には米FRBによる利上げも予想さ
***
れることや世界の景気回復が一様でな
ここで、S&P500株価指数を構成す
安定した収益の獲得という攻めの要素
いことから、市場は過剰な動揺を繰り
る銘柄間の株価の相関係数と、株式ロ
と、下落リスク抑制という守りの要素
返すことが予想される。こうした環境
ング・ショート戦略の年次リターンの
を兼ね備える投資手法として、ますま
下では、銘柄間のリターンの相関が低
グラフ(下図)を見ていただきたい。
す注目は高まると考えている。
下し、ボトムアップの銘柄分析に基づ
くファンダメンタルズ重視の株式ロン
グ・ショート戦略マネジャーにとって
は、魅力的なリスク調整後リターンを
株式銘柄間の株価の相関係数と株式ロング・ショート戦略の運用成績
0.6
0.5
株式ロング・ショート戦略(HFRX Equity Hedge Indexに基づく)
の
運用成績(右軸)
25
(%)
15
0.4
5
足元の市場環境には、同戦略にとり
0.3
-5
わけ魅力を感じさせる何点かの特性が
0.2
創出することができると考える。
ある。例えば、各国の金融政策の動向
だ。米国、欧州連合(EU)
、日本、中
-15
S&P500株価指数を構成する銘柄間の株価の
相関係数(過去1年間の相関係数の平均値)
(左軸)
0.1
2005年
1月
06年
1月
07年
1月
08年
1月
09年
1月
10年
1月
11年
1月
12年
1月
13年
1月
14年
1月
-25
15年
1月
出所:ブルームバーグ
『Ma-Do』vol.37 より