カナダの経済と金融政策〜中銀は追加利下げを見送り(2015/3/5作成)

*グローバル投資環境
No.917*
ご参考資料
髙木証券投資情報部
カナダの経済と金融政策~中銀は追加利下げを見送り
2015年3月5日作成
カナダ統計庁が3日に発表した昨年第4四半期のGDPは前期比
0.6%増となり、第3四半期の0.8%増から減速した。年率換算
では2.4%増となり、当初発表の2.8%増から3.2%増に上方修
正された第3四半期から減速したが、市場予想(2.0%増)は
上回った。なお、2014年通年の成長率は2.5%増となり、2013
年の2.0%増から拡大した。
前期比の成長率を主な需要項目別でみると、家計最終消費
支出が第3四半期の前期比0.6%増から0.5%増に鈍化したもの
のGDPを0.27%押し上げる方向に働いたが、総固定資本投資が
第3四半期の前期比1.6%増から0.1%の小幅ながら3四半期ぶ
りのマイナスに転じ、GDPを僅かに押し下げ、中でも非居住用
建物及び機械、装置に対する投資は0.6%減少した。また、輸
出が第3四半期の2.2%増から0.4%の減少に転じる一方、輸入
は0.4%増加したため、純輸出はGDPを0.27%押し下げている。
なお、GDPが先に述べた通り市場予想を上回った要因は在庫投
資による押し上げ効果が0.44%あったためであり、足下のカ
ナダ経済は見た目の数字ほど強くないと思われる。
《主要構成項目別成長率の推移》
2013年
3Q 4Q
家計消費支出
非営利組織消費支出
政府消費支出
総固定資本投資
在庫投資
輸出
輸入
GDP
(前期比、%)
1Q
2014年
2Q 3Q
0.8 0.7 0.3 1.1
-0.8 0.1 0.8 -0.1
-0.1 -0.0 -0.1 0.4
0.3 -0.6 -0.6 0.7
― ― ― ―
0.2 0.9 0.0 4.6
0.6 0.4 -1.2 2.3
0.7 0.7 0.3 0.9
4Q
伸び率 寄与度
0.6 0.5 0.269
1.0 1.1 0.015
-0.1 0.5 0.111
1.6 -0.1 -0.020
― ― 0.438
2.2 -0.4 -0.132
1.0 0.4 -0.134
0.8 0.6 ―
また、カナダの中央銀行(Bank of Canada)は4日に金融政
策会合を開催し、政策金利を0.75%で据え置いた。声明文は
インフレについて「トータルCPIは原油価格の顕著な下落を反
映して予想通りに低下したが、コアCPIは2%近辺にとどまっ
ている」と述べている。景気については、「原油安によるネ
ガティブなインパクトの多くは2015年の上半期に顕在化する
ことを引き続き見込んでいるが、それは従来の予想に比べて
前倒しされるだろう」とした上で、「2014年のデータは、非
エネルギーの輸出と投資が、予想された強い成長ローテー
ションに入りつつあることを示唆している」と述べている。
声明文はさらに、カナダの金融情勢は、1月21日に開いた前回の会合での利下げなどにより1月
以降緩和的になっていると指摘、「原油価格ショックの悪影響を和らげるとともに、非エネル
ギー輸出と投資を強めることを通じて成長を押し上げるだろう」の見方を示した上で、「イン
フレ見通しのリスクは今やよりバランスし、金融の安定性に関するリスクも1月に予想した通り
改善した」として、「現状程度の金融政策による刺激が適切だと判断し、政策金利を0.75%で
据え置くことを決定した」と結論付けている。
先に述べた通り、カナダの中銀は1月21日に25ベーシスの利下げを実施、その際の声明文は利
下げについて原油価格が想定を下回った場合、景気を抑制し、低インフレリスクをさらに高め
ることに対する「保険」だと述べていたため、髙木証券では追加利下げの必要性は低いとみて
いたが、市場の一部には一段の金融緩和を見込む向きもあったため、利下げ見送りを受けて通
貨カナダドルは反発している。但し、中銀は基本的にはカナダドル安を歓迎するスタンスを
とっていることには注意を払っておく必要があろう。
(文責:勇崎 聡)
(カナダ統計庁、Baok of Canada及びBloombergのデータより髙木証券作成)
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