赤十字国際ニュース 2015 年 10 号 2015 年 2 月 20 日 ( 通巻 第 1095 号 ) 日本赤十字社 国際部 東京都港区芝大門 1-1-3 TEL 03-3437-7087 / FAX 03-3435-8509 E-mail:[email protected] http://www.jrc.or.jp/ ■若者を交えてのトークセッション!~次世代が語る核兵器廃絶~ 広島と長崎に原子力爆弾が投下されてか らちょうど 70 年。日本赤十字社(以下、日 赤)は今一度核兵器問題をとらえなおし、 それが使われた場合の非人道性を世界に示 すことで『核兵器廃絶』を訴えています。 しかし現在では、核兵器の恐ろしさを知る 被爆者の高齢化が進み、次世代に被爆体験 を継承していくことが難しくなってきてい ることが指摘されています。そうした最中、 日赤は、2 月 8 日、JICA 横浜で開催された 『よこはま国際フォーラム 2015』で、核兵 ©Australia Red Cross/Louise Cooper 器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営 委員の川崎哲さんと早稲田大学 4 年生の瀬戸麻由さんをパネリストに招き、日赤国際部次 長の菅井智を司会に、『核兵器の廃絶に立ち向かう~国際人道法の挑戦~』と題したセミナ ーを開催しました。 ■核兵器の恐ろしさとは何か?~瀬戸さんが語る広島と長崎の原爆被害~ 「核兵器は爆風や熱線といった投下直後の 影響だけでなく、その放射線などによる二次 被害も引き起こします。たとえば、放射能が 引き起こす人体への影響として白血病の発 病などがありますが、広島では原爆投下直後 の死者数 7 万 5000 人が 5 年後には 20 万人に、 長崎では 4 万 4000 人から 14 万人となってお り、二次被害で多くの人の命が奪われたこと がわかります」。瀬戸さんはきのこ雲のスラ イドを背景に原爆被害の概要をわかりやす く語ってくれました。 来場者に対し核兵器の恐ろしさを伝える瀬戸麻由さん いま世界に存在している核兵器の数はおよそ 1 万 6400 発。瀬戸さんは、数値だけではイ メージが難しい核兵器の量を BB 弾(6 ㎜程のプラスチックの玉)を使ったデモンストレー ションで披露。BB 弾をアルミ容器に落とす『音』を聞き比べるもので、広島と長崎に投下 された原爆に相当する数の BB 弾の音、現存する核兵器すべてに相当する数の BB 弾の音を 比較しました。70 年前とは比較にならない現存する核兵器の音は私たちの想像を超えるも ので、来場者も息をのむほどでした。 ■今こそ核兵器廃絶を!~川崎哲さん・最前線からの報告~ 川崎さんは、近年の流れとして 2008 年に国連 の潘基文(パンギムン)事務総長が核軍縮の提 案を行ったこと、2009 年にアメリカのオバマ大 統領がプラハで「核兵器のない世界を目指す」 演説を行ったこと等を例に挙げ、近年にわかに 核兵器廃絶へ機運が高まっていることを強調。 2011 年には国際赤十字も「核兵器が使用された 場合にその犠牲者を誰も救うことができない」 という人道的観点から「核兵器の使用は国際人 核兵器廃絶に向けた世界の動向を説明する川崎さん 道法の基本原則に反する」ことを訴え、中立の 赤十字がはっきりと核兵器に対する立場を表明したことが注目を集めています。 川崎さんは「このように核兵器廃絶に対する機運が高まっている今こそ、人道的観点か ら地雷やクラスター爆弾を禁止する条約が生まれ成功を収めたように、核兵器を禁止する 条約に国際社会は合意すべき」と力強く訴えました。 ■瀬戸さんインタビュー~受け身にならず『自分ごと』として~ 核兵器への関心を持ったきっかけとして瀬戸さん は、「私は広島出身ですが、原爆や核兵器の問題に特 別関心はありませんでした。ですが国際交流 NGO ピー スボートの船旅に参加し、被爆者の方から被爆体験を 聞き 『目の前にいる方がこんなにもつらい経験をし ていている。直接話を聞けるのは私たちの世代で最後 かもしれない。私たちがなんとかしてこの話を広めて いかないと!』と考えるようになりました。また被 熱心に耳を傾ける来場者 爆者の方と活動を続けるうちに、証言の一つひとつ が過去の話ではなく、今現実に起こりうることなん だという危機感を抱くようになりました。 」と語りました。 そんな瀬戸さんのこれからの目標は、 「自分の周り に起こることに対して受け身にならず、共感性を持 って『自分ごと』で生きる人を増やしていくこと」 。 そこには、自分で主体的に考えて行動する人が増え ていけば、多くの問題が良い方向に向かうのではな いかという期待が込められています。「そういう人 が増えれば、核兵器の問題も時間はかかるかもしれ ないけれど、解決すると思います。『核兵器』とい う固いテーマでも気軽に話すことができる雰囲気 今後の抱負を述べる瀬戸さん ができ、そうした話題でも真剣に受け止めてくれる人 が少しでも増えてくれることを願っています」。 今回パネリストとして参加いただいた川崎さんも瀬戸さんも、被爆体験を持たない世代 です。今後私たちがこの問題をいかにして次世代に継承していくか、今回のセミナーはそ の問いに答える一つの試みともいえます。 ★日赤のさまざまな情報を配信中です!公式アカウントをぜひご登録ください★ Facebook:日本赤十字社
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