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2015 年
赤十字国際ニュース
第 18 号 2015 年 3 月 31 日
( 通巻 第 1103 号 )
日本赤十字社 国際部
東京都港区芝大門 1-1-3 TEL 03-3437-7087 / FAX 03-3435-8509
E-mail:[email protected]
http://www.jrc.or.jp/
■世界の防災戦略「仙台防災枠組」を採択!
赤十字からの各国政府への提言
第 3 回国連防災世界会議が 3 月 14~18 日まで仙台市で
開催され、「仙台防災枠組」が採択されました。本会議に
は、赤十字から、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)
、
赤十字国際委員会、47 の各国赤十字社から合計 126 人が参
加。これまでの経験に基づく学びや知見を主要メッセージ
としてまとめ、近衞連盟会長の公式スピーチでの発信のほ
か、各参加者が自国の政府との会合やシンポジウムの機会
などを利用して、共通のメッセージとして伝え続けました。
採択予定日の深夜まで及んだ協議。政府間交渉が難航する
中、赤十字は枠組が形骸化することを危ぶみ、コミュニテ
ィーや人びとを中心に据えた枠組を採択するよう、各国政
赤十字のキーメッセージを発信
府に対して粘り強く働きかけました。
する近衞連盟会長
採択された枠組には、2030 年までに災害リスクと損失の
大幅な削減を目指すことが明示され、死亡者数、被災者数、経済的損失、重要インフラ
の損害、防災戦略採用国数、国際協力、早期警戒及び災害リスク情報へのアクセスと、
具体的な 7 つの目標が示されました。
■ 赤十字の防災・減災への取り組み
日本では、災害が発生した後の救護活動の
イメージが強い赤十字ですが、赤十字はこれ
まで、
「防災・減災」にどう取り組んできたの
でしょうか?
赤十字社・赤新月社は、現在 189 の国と地
域に存在しており、防災・減災分野への取り
組みも世界中で実施されています。2013 年に
防災・減災に投じられた資金は総額 150 億円
に上ります。これは、近年頻発する自然災害
へ対応するために増加しており、2009 年と比
べると倍額となっています。
会場に設置されたブースで赤十字活動につ
いて説明する大韓赤十字社職員(写真左)
赤十字の強みは、ボランティアによって支
えられている組織であること、自国政府の補
助機関として位置付けられていることです。そのため、赤十字の防災活動の特徴として
は、「最もぜい弱な人へアプローチしていること」、「地域住民を中心とした手法である
こと」、
「政府の取り組む防災・減災活動の補完的役割を果たしていること」などが挙げ
られます。
■ 赤十字からの提言
~レジリエンスに向けた 10 億人の協働~
赤十字が、新枠組の策定に向けて発信したメッセージには、11 の提言と 1 つのキャ
ンペーンへの呼びかけが含まれています。
11 の提言には、「地域のリスクを最も理解している地域住民を巻き込むこと」など、
赤十字の経験と知見から得たメッセージが込められました。
防災教育に関するワーキングセッションに参加し
たナミビア赤十字社事務総長のドルカス・カペン
ベ・ハイドゥワさんは、
「コミュニティーの住民は脆
弱な面もありますが、同時に災害に対応できる能力
や資源も持っているので、その能力を引き出すこと
が私たちの役割。コミュニティーに既にある助け合
いの仕組みや過去の経験を生かすことが重要。」と訴
えました。
連盟アジア大洋州地域代表のジャガン・シャパガ
ンさんは、同じくワーキングセッションの議論の中
でシリア赤新月社のボランティアの事例を紹介。
「シ
リアでは多くのボランティアが活動中に亡くなって
いますが、それでも活動が停止しないのは、彼らが
もともとそこに住む住民だからです。
」と、地域住民
自らがかかわるアプローチが地域のレジリエンス
(※)構築に有効であることを訴えました。
これら 11 の提言については、本会議にユースメン
バーとして参加した 11 人の赤十字ユースボランティ
アが動画を作成して発信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=gqxlL5JXtH0
このように、赤十字が考える防災・減災には、
コミュニティーや人びとが常に中心にあります。
赤十字は、草の根レベルからグローバルに広がる
独自のネットワークを生かして枠組達成に貢献
するため、これらの提言と同時に、「レジリエン
スに向けた 10 億人の協働」と題したキャンペー
ンの立ち上げを発表しました。これは、今後 10
年間で、少なくとも一家に一人が、地域のレジリ
エンス強化のために活動することを呼びかける
ものです。
■ 2015 年度、赤十字の人道外交
ワーキングセッションで発言する、ナミ
ビア赤十字社事務総長(写真右)
ワーキングセッションで発言する、ジャ
ガン・シャパガン氏
提言を読みあげるドイツ赤十字社ユースボ
ラティアのケルスティンさん
国連防災世界会議に続き、2015 年 9 月に「ポスト 2015 開発アジェンダ」
(2015 年以
降の開発目標)が採択予定であるほか、2015 年 12 月に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)
第 21 回締約国会議(COP21)がフランス・パリで、さらに 2016 年 5 月には世界初とな
る世界人道サミットがトルコのイスタンブールで開催されます。世界の人道問題に対す
る重要な枠組作りの一年となり、世界最大の人道支援組織である赤十字にとっても重要
な一年となります。赤十字は弱者の代弁者として、今後も中立の立場である強みを生か
して、国際社会の人道問題にかかわる枠組作りに対して積極的に働きかけます。
注:連盟は、レジリエンスを「災害や危機的状況を予測し、可能であれば未然に防ぎ、そのインパクトを
軽減させ、適切に対処・対応し、長期的な見通しをもって逆境から立ち上がる能力」と定義しています。
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