2017 年 赤十字国際ニュース 第4号 2017 年1月 27 日 ( 通巻 第 1206 号 ) 日本赤十字社 国際部 東京都港区芝大門 1-1-3 TEL 03-3437-7087 / FAX 03-6679-0785 E-mail:[email protected] http://www.jrc.or.jp/ ■ベトナム:災害から住民の命を守る 日本赤十字社は、ベトナム赤十字社(以下、 ベトナム赤)と協力し、1997 年からベトナム北 部における災害対策事業に取り組んでいます。 この事業は、高潮や洪水等の影響から沿岸部の 人々の命を守るため、マングローブを植林する ことから始まりました。事業開始から 20 年を 経た今日では、これまでに植林したマングロー ブ等の補植や保全、地域住民や行政職員を対象 とした防災教育に重点が置かれています。 事業の財源は、例年 12 月に NHK と共同で実 施する海外たすけあいキャンペーンや、本社及 生い茂るマングローブ(クァンニン省) び各都道府県支部にお寄せいただいている活動 資金です。日本の皆さまからのご支援は、どのようなかたちでベトナムの人々に届いて いるのでしょうか。現地での活動と人々の声を、昨年 12 月にベトナムを訪問した大阪 府支部の中川俊彬係長から報告します。 ■植林の大切さ 10 月の洪水で倒木したものの、住民の命は守られた 植林の重要性を語るクエさん(左から3番目)とメモをとる 中川係長(同2番目) 今回、20 年の歳月を経てすくすくと育っ たマングローブ等を視察しましたが、タン ホア省では倒れてしまったバンの木(※) に遭遇しました。ベトナム赤支部職員のハ ンさんに倒木の理由を尋ねてみると、2016 年 10 月の台風による洪水の影響とのこと。 ハンさんによれば、「木は倒れてしまった ものの、そのおかげで地域の人々の命は守 られた」のだそうです。 (※この地域ではマングローブよりもバ ンの方が成長しやすいため、マングローブ とバンの両方を植林しています。 ) 「海に面するこの地域に住むうえで大切 なのは、台風への備えです。村の人々は、 マングローブが防波堤になってくれている ことを知っています」と植林の重要性を教 えてくれたのは、クァンニン省に住む赤十 字ボランティアのクエさん。 「赤十字の支援 で、広大な地域にマングローブが植林され ており、非常に助かっています。気持ちを 表現できないくらい、本当に感謝していま す。支援してくれた人にありがとうと伝え てほしいです」と続けます。 支部職員やボランティアの話から、植林 した木々が、実際に災害からベトナムの 人々の命を守ることに貢献していることを知り、沿岸部における植林の大切さをひしひ しと感じました。 ■植林の副次的効果 植林されたマングローブの根には、エビや カニなどの魚介類が生息することができ、生 態系の保護、ひいては住民の生計向上にも役 立っています。 またマングローブは、気候変動の影響緩和 にも役立っており、2025 年までに吸収される 温室効果ガスは、少なくとも 1,630 万トンに 上ると試算されています。これは、年間約 42 万 5,000 人のベトナム人が排出する温室効果 ガスの量に値します。 獲ったカニを見せる地域住民(タンホア省) ■地域に根差した事業のこれから 視察した防災研修では、若者からお年寄 りまで、みな積極的に参加していました。 参加者は沿岸部の住民であるため、幼い頃 から防災への関心が高いそうです。必要な 支援を、必要とされている地域に届けるこ との重要性を、改めて感じました。 また、研修を実施しているベトナム赤の 支部職員は、長年の経験に基づいて自信を もって進行しており、この 20 年間で人材 が育ってきていることを実感しました。 これからは、これまでに育成された人材 地域住民に対する災害対応訓練(クァンニン省) が知識や技術の伝承を行い、マングローブ の維持管理や防災教育を続けていくことが重要になってきます。そのため、ベトナム赤 は行政機関等とマングローブの維持管理に係る資金や役割分担を取り決めるなど、活動 を継続するための連携関係を、一歩一歩着実に構築しているところです。 ベトナム赤職員のほか行政や NGO 職員とともに事業成果と今後の方向性が議論されたワークショップ(ニンビン省) ★日赤のさまざまな情報を配信中です!公式アカウントをぜひご登録ください★ Facebook:日本赤十字社 Twitter:@JRCS_PR
© Copyright 2024 ExpyDoc