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2015 年
赤十字国際ニュース
第 17 号 2015 年 3 月 30 日
( 通巻 第 1102 号 )
日本赤十字社 国際部
東京都港区芝大門 1-1-3 TEL 03-3437-7087 / FAX 03-3435-8509
E-mail:[email protected]
http://www.jrc.or.jp/
■シリア難民の女性たちはいま
3 月 8 日は世界女性の日。内戦勃発から 4 年、紛争を逃れて国内外に逃れたシリアの
女性たちは今、慣れない土地で家族の食事の確保に奔走し、基本的な医療も受けられな
いまま、終わりの見えない避難生活を送っています。
この 4 年間で、故郷を離れた 1200 万人のうち(約 800 万人が国内で避難、400 万人が
トルコやレバノン、イラク、ヨルダンなどの隣国に避難)、実に 400 万人が、夫や父親、
息子など、一家の稼ぎ手を亡くした女性たちです。
それぞれの避難先で、困難な状況に立ち向かうシリアの女性たちをご紹介します。
■ 自分の将来は自分で決めたい
11 歳から 25 歳の 5 人の息子とともに、5 日間
かけてイラクに避難してきたサバーさん(53
歳)。夫は病気で亡くし、長男は紛争で戦死しま
した。イラクでの避難生活は 2 年半におよび、6
人でのテント暮らしは夏は暑過ぎ、冬はあちこ
ち水びたしになります。
避難キャンプは町の中心から遠いため、収入
を得るのは容易ではなく、一家は完全に援助に
「一日も早くシリアに戻りたい」ⓒIFRC
頼って暮らしています。食事や医療、子どもの
教育など、心配は山積みですが、一番つらいのは毎日することがなく、無為に過ごすこ
とだといいます。自分たちの将来は自分で決めたい、一日も早く故郷に戻りたい、と願
っています。
■ イラクの住民に助けられて
シリアで夫を亡くし、8 歳から 13 歳の 4 人の
子どもとともにイラクに避難してきたカディジ
ャさん(44 歳)も、イラクで暮らす 22 万人の
シリア難民のうちの一人です。一家はテントで
暮らして 18 カ月。子どもたちは学校にも行けず、
カディジャさんが時折見つけてくる日雇いの仕
事が唯一の収入源です。
「私たちが何とかやっていけるのは、近所の
イラクの住民の方がたが週に 2、3 回炊き出しを
してくれているからです。それでも食料は十分
ではなく、毎日子どもたちを食べさせていくの
に必死です」
一家が暮らすテントの前でⓒIFRC
■ 子どもたちが今も爆撃を恐れています
障がいがある 2 人の息子を含む 5 人の子ども
と、夫とレバノンに避難してきたアミーナさん。
シリアでは家族で果物店を経営し、家を建て、
息子たちも理学療法を受けながら平穏な暮ら
しを送っていました。紛争で家が破壊され、レ
バノンに逃れてきて1年 8 カ月。子どもたちは
今でも爆撃を恐れ、布団を濡らしてしまうこと
もあるといいます。
ⓒBritish Red Cross
夫は 10 日に 1 度しか仕事を見つけることができず、おむつ代のために近所の商店から
借りている負債が積もってきています。赤十字からはいち早く現金、燃料やヒーターの
支援を受け、助かっていますが、建設途中のビルの一角を借りた今の仮住まいも、家主
に家賃を滞納すれば追い出されてしまうと、先の見えない生活に途方に暮れています。
■ 避難民キャンプで子どもたちに青空学級を開いています
シリアの首都ダマスカスの学校では
クラスで成績が一番だった 14 歳のネジ
ュメさんは、家族と暮らすレバノンの避
難民キャンプで週 5 日、子どもたちに青
空学級を開いています。「紛争で親を失
っている子どもが多くいます。私が学ん
できたことを伝えて、少しでも子どもた
ちの気が紛れれば」と語ります。
ⓒIFRC
***
「女性たちは、家族が困難な状況に希望をもって立ち向かうために欠かせない存在。
彼女たちの窮状に寄り添い、支えることが不可欠です」(近衛忠輝・国際赤十字・赤新月社連盟
会長、日本赤十字社社長)
赤十字は紛争が勃発した当初から、シリアのみならず、未曾有の数の避難民を受け入
れ、疲弊している近隣各国でも、大規模な支援活動を展開しています。
なかでも、避難先での社会参加が難しく、搾取されやすい女性への支援として、例え
ばシリアでは、織物や編み物技術のトレーニングを開催。手工芸品作りを通じた女性た
ちの現金収入を生み出すとともに、厳しい現実からしばし解放されるこころのケアの役
割も担っています。また、レバノンでも、シリアからの避難民の女性たちが日々の不安
を語り合えるセンターを運営し、避難先で暮らす人びとの絆を強めています。
終わりの見えない避難生活を送る人びとへの、温かいご支援をよろしくお願いします。
●シリア・イラク(中東)人道危機救援金
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/cat610/
〔お振り込みについての連絡先窓口〕
日本赤十字社組織推進部海外救援金担当 TEL 03-3437-7081
FAX 03-3432-5507
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