Science 2015 年2 月 13 日号ハイライト

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Science 2015 年 2 月 13 日号ハイライト
海のプラスチックごみ:発生源と解決策
初期の多様性を示す新たな哺乳類の化石
活動しているニューロンを生で見る
微量元素が歯のエナメル質を強くする
Science は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記載す
る次号掲載予定論文に関する報道は、解禁日時まで禁止します。
論文を引用される際には出典が Science および AAAS であることを明記してください。
海のプラスチックごみ:発生源と解決策
Plastic in the Oceans -- Sources and Solutions
毎年 500~1300 万トンのプラスチック廃棄物が海に行き着きついており、研究者らは、国際社会
が廃棄物の管理方法を改善しなければ、今後 10 年間でその量は 10 倍に増えるだろうと警告して
いる。Jenna Jambeck らは、192 の沿岸国から出る固形廃棄物のデータと、人口密度や経済状態と
いった要素を結びつけて、結論に達した。彼らは 2010 年に陸から海へ移動したプラスチックの
量を推定するとともに、海に行き着くプラスチック廃棄物のおもな発生源を特定し、その年に海
に多くのプラスチックを排出した上位 20 カ国(中国から米国まで)を列挙した。長年にわたる
数多くの研究によって、世界の海におけるプラスチックごみの存在と位置は注目されてきたが、
1 年間にどの程度の量が海にたどり着くかは不明だった。Jambeck らは新たなモデルを使用して、
調査した沿岸国が 2010 年に排出したプラスチック廃棄物は約 2 億 7,500 万トンであり、そのうち
480~1,270 万トンが世界の海に行き着いていることを示唆している。海に行き着く可能性のある
廃棄物の量を決定しているのは、おもにその国の人口と廃棄物管理システムである、と研究者ら
は述べている。世界の海におけるプラスチックごみの量が 2025 年までに 10 倍に増えるのを防ぐ
ためには、世界中の国々が廃棄物を減らし、より良い管理戦略(幅広い廃棄物回収システムな
ど)を採用する必要があるという。
初期の多様性を示す新たな哺乳類の化石
New Mammal Fossils Show Off Early Diversity
ジュラ紀中期から後期(1 億 7,000 万年~1 億 4,500 万年前)の化石が新たに 2 つ発見され、哺乳
類がこのような進化の初期においてさえ、多種多様な環境的ニッチに適応していたことが示され
た。新たに発見されたこの 2 つの種は梁歯目と呼ばれる絶滅した初期の哺乳類で、特殊な特徴を
持っており、このような特徴はこれまで考えられていたより数百万年も古いことが判明した。
Zhe-Xi Luo らは Docofossor brachydactylus について説明している。Docofossor は現代のキンモグラ
よりかなり小型ではあるが、多くの類似点を持つ穿孔動物である。現存の穿孔動物と比較して指
は短く、肢は広がり、腰肋の位置も変化している。こういった特徴の一部は特定の遺伝子や発生
経路に由来する。新たに発見された化石にこのような特徴がみられるのは、これらの発生経路が
現代の哺乳類が登場するかなり以前から活性していたことを示している。Qing-Jin Meng らは新
しい梁歯目である Agilodocodon scansorius について述べている。この種は樹上生活に適応してい
たと考えられる。へらのような独特の形の歯からは、この種がマーモセットやその他の小型霊長
類のように樹脂や樹液を食べていたことが分かる。そういった特別な栄養的ニッチが初期に存在
していたことは初期哺乳類が考え得る幅広い生息環境にいち早く適応していたことを示唆してい
る。
活動しているニューロンを生で見る
A Live Look at Active Neurons
生きている生物(ゼブラフィッシュ、ハエ、マウスなど)の脳内の活動しているニューロンをス
ナップショットで捕える方法が開発された。同様な技術では、活動している大量のニューロンを
特定の時間に同時に標識することはできなかった。しかし、この新しいセンサー(CaMPARI と
いう蛍光タンパク質)なら、まさにこれが可能になる。Benjamin Fosque らは、限られた視野中
の活動しているニューロンのみを標識できる遺伝的にコードされたカルシウムインジケーターと、
視野を拡大するが時間尺度が長い前初期遺伝子)という 2 つの従来の方法を利用した。彼らの新
しいタンパク質センサー、CaMPARI は、ニューロン内のカルシウム濃度が変化したとき(その
ニューロンの活性化を示す)と、このタンパク質を紫の光で照らしたときに、緑から赤へと切り
替わる。たとえば、CaMPARI で標識したゼブラフィッシュ幼生にこのような光のパルスを使用
すると、大量の脳組織のニューロンの「活性のスナップショット」を作成できる。Fosque らは、
ゼブラフィッシュ幼生を温水、冷水、乱流の水に入れたときにこのようなスナップショットを撮
り、各条件下でのニューロン活性の違いを比較した。この技術は、最終的に、より複雑な行動
(求婚や社会的交流)に関与している脳回路を理解するうえで役立つと考えられる。
微量元素が歯のエナメル質を強くする
Trace Minerals Strengthen Tooth Enamel
歯のエナメル質中の粒子間に存在する、マグネシウムや鉄などの微量元素は、エナメル質の強度
や耐酸性に大きく影響しうることが、Lyle Gordon らにより発表された。強い歯といえばまず頭
に浮かぶのはフッ化物であると思われるが、著者らによれば、虫歯の治療においてそれ以外の無
機物を考慮することが有用となる可能性がある。歯のエナメル質のほとんどは、ヒドロキシアパ
タイトの小さな結晶が柱状に集まったものから成っている。Gordon らは原子分解能電子顕微鏡
などの技術を用いて、マウス、ウサギ、ビーバーのエナメル質をナノスケールで分析し、エナメ
ル質中のナノ結晶間に存在する物質成分を調べた。マウスの歯のような通常のエナメル質では、
結晶間の物質はマグネシウム置換非晶質リン酸カルシウム(magnesium amorphous calcium
phosphate, Mg-ACP)から成っているのに対し、ビーバーの歯のような着色エナメル質は酸化鉄
の混合物から成っている。エナメル質は機械的ストレスや酸腐食に対し、ナノワイヤー粒子間に
含まれる微量元素の種類によって異なる反応をする。Yael Politi と James Weaver は、関連する
Perspective でこれらの所見について考察している。