Science 2006 年4 月 21 日号ハイライト - EurekAlert!

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Science 2006 年 4 月 21 日号ハイライト
火星の水の歴史
太平洋と大西洋がつながった時期
地殻を掘る
インフルエンザ特集
「Science」は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記
載する、次号掲載予定論文に関する報道は解禁日時まで禁止します。
論文を引用される際には出典が「Science」誌および AAAS であることを明記してください。
The History of Water on Mars(火星の水の歴史):Jean-Pierre Bibring らは、マーズ・エクスプレスに
搭載された OMEGA(可視光・赤外線鉱物分光計)から得られたデータ、および他のマーズ・オービター
と 2 台のローバーによる観察データを基に、火星の表面ほぼ全体を覆う鉱物について地図を作製した。著
者らはこの地図を使って、表面鉱物の変化における水の役割に基づいて火星の歴史を 3 つの時代に分
けている。一般的に水は火星表面にかなりの浸食をもたらしたと考えられているが、水による活動が短期的
であったか長期的であったかについては明確な答えが出ていなかった。最も古い時代では、アルカリ性の
環境下で、長期間存在した複数の水の塊から粘土鉱物が生まれたと著者らは述べている。続く時代では、
火山活動の結果、惑星規模の気候変動が起こり、酸性度が高まった。この時代では、あまり長期間存在
しなかった水が硫酸塩の形成に寄与した。最も新しく、最も長い時代は約 35 億年前に始まった。同時代
には、水が大きな役割を果たすことなく、風化によるゆっくりとした表面的な作用を受けて変化したと思われる、
鉱物を含有する岩が多く現れた。著者らが 3 つの時代の中で最も古いとする粘土鉱物の時代は、生物
が生息するのにも最も適した環境であったと思われる。このことから同時代は将来の火星探査にとって興
味深い対象になるであろうと著者らは述べている。
論文番号 8:"Global Mineralogical and Aqueous Mars History Derived from OMEGA/Mars Express
Data," by J.-P. Bibring, Y. Langevin, F. Poulet, A. Gendrin, B. Gondet, C. Gomez, J. Jouglet, A.
Soufflot, and M. Vincendon at Institut d' Astrophysique Spatiale (IAS) in Orsay, France; J.F. Mustard
and A. Gendrin at Brown University in Providence, RI; R. Arvidson at Washington University in St.
Louis, MO; N. Mangold and D. Loiseau at IDES in Orsay, France; P. Pinet at Observatoire MidiPyrénées in Toulouse, France; F. Forget at Laboratoire de Meteorologie Dynamique (LMD),
Université of Paris 6 in Paris, France; M. Combes, P. Drossart, T. Encrenaz, T. Fouchet and R.
Merchiorri at LESIA, Oberservatoire in Meudon, France; G. Belluci, F. Altieri and V. Formisano at
IFSI-INAF in Rome, Italy; F. Capaccioni, P. Cerroni and A. Coradini at IAS-INAF in Rome, Italy; S.
Fonti at University of Lecce in Lecce, Italy; O. Korablev, V. Kottsov, N. Ignatiev, V. Moroz, D. Titov
and L. Zasova at IKIM in Moscow, Russia; S. Douté and B. Schmitt at Laboratorie de Planétologie in
Grenoble, France; C. Sotin at University of Nantes in Nantes, France; E. Hauber, H. Hoffman and R.
Jaumann at DLR in Berlin, Germany; U. Keller at MPAE in Lindau, Germany; T. Duxbury at Jet
Propulsion Laboratory in Pasadena, CA; The OMEGA team (members of the OMEGA team are listed
above at their home institutions)
When Did the Pacific and Atlantic Connect?(太平洋と大西洋がつながった時期):太平洋と大西洋
はこれまで考えられていた時代よりも前、すなわち今から約 4,100 万年前に南米大陸と南極大陸の間で
つながったようだ。今回の研究によって、3,400 万年前に南極で広がった氷河作用を引き起こした原動力
について理解が深まることが期待される。両洋をつなぐドレーク海峡の誕生は、環南極海流(ACC)の発
達において最も重要なステップであると考えられている。今日、南極を取り囲むこの巨大な海流は南洋に
豊かさをもたらし、暖かい水を大陸からそらせる役割を果たしていると思われる。ACC は約 3,400 万年前、
より温暖な低緯度地域からの温度の影響を遮断することで、南極氷床の発達において重要な役割を担っ
たと思われる。ドレーク海峡が誕生した時期については、これまで 4,900 万年前から、新しいところでは
1,700 万年前と様々に推測されてきたため、同海峡および ACC が南極大陸における氷山の形成でどの
様な役割を果たしたかを評価することは困難であった。今回、Howie Scher と Ellen Martin は、魚の歯の
化石から採取したアイソトープに基づき、約 4,100 万年前に太平洋の水がドレーク海峡を通過して南極海
に入った事実を証明した。このように、ドレーク海峡が誕生したのは、ACC 形成の最終段階(約 3,500 万
年前に起こったタスマニアン・ゲートウェイの深化)や新生代初期の温暖気候衰退の一部として起こった南
極大陸における主な氷床の成長のいずれよりも、はるか昔であったことが明らかになった。
論文番号 11:"Timing and Climatic Consequences of the Opening of the Drake Passage," by H.D.
Scher and E.E. Martin at University of Florida in Gainesville, FL; H.D. Scher is currently at
University of Rochester in Rochester, NY
Drilled Through the Crust(地殻を掘る):地球の地殻全層を貫くボーリングを行い、固まったマグマでで
きた原始の火成岩の層まで到達することに初めて成功した。この「斑糲(はんれい)岩層」は地球上のほぼ
全ての海底下に存在する。同層の深度を測定することは、大洋中央海嶺で形成された地殻の形成・進
化を解明する上で有用である。Douglas Wilson らは斑糲岩に到達すべく、東太平洋海膨近くの地殻に
深さ 1.6km に及ぶボーリングを行った。この区域は急速に広がる大洋中央海嶺に近いことから、地殻は薄
い位置にある。斑糲岩層の深度を測定することで、マグマ溜まりが非常に速い速度で広がりながら地殻
の浅いレベルで形成されること、また斑糲岩は下からこれらのマグマだまりへと持ち上げられていることを確
認したと著者らは述べている。また、地震波の速度は岩の種類よりもむしろその多孔性による支配をより大き
く受けている可能性が示唆された。
論文番号 19:"Drilling to Gabbro in Intact Ocean Crust," by D. S. Wilson at University of California,
Santa Barbara in Santa Barbara, CA; D. A. H. Teagle at University of Southampton in Southampton,
UK; J. C. Alt at University of Michigan in Ann Arbor, MI; D. S. Wilson, D. A. H. Teagle, J. C. Alt, N.
R. Banerjee, S. Umino, R. Anma, K. M. Cooper, C. Cordier, L. Crispini, S. R. Durand, F. Einaudi, L.
Galli, Y. Gao, J. Geldmacher, L. A Gilbert, N. W. Hayman, E. Herrero-Bervera, N. Hirano, S. Holter,
S. Ingle, S. Jiang, U. Kalberkamp, M. Kerneklian, J. Koepke, C. Laverne, H. L. L. Vasquez, J.
Maclennan, S. Morgan, N. Neo, H. J. Nichols, S.-H. Park, M. K. Reichow, T. Sakuyama, T. Sano, R.
Sandwell, B. Scheibner, C. E. Smith-Duque, S. A. Swift, P. Tartarotti, A. A. Tikku, M. Tominaga, E.
A. Veloso, T. Yamasaki, S. Yamazaki, and C. Ziegler at Texas A&M University in College Station,
TX; S. Umino at Shizuoka University in Shizuoka, Japan; S. Miyashita at Niigata University in
Niigata, Japan; G. D. Acton at University of California, Davis in Davis, CA
Influenza Special Issue(インフルエンザ特集):驚異的な速さで世界中に広がる極めて病原性の高いト
リインフルエンザ H5N1 型は、新種のインフルエンザウイルス出現に対するヒトの脆弱性を浮き彫りにしてい
る。本号の特集に掲載された論文の著者らは、トリインフルエンザ H5N1 型を巡る現在の懸念を整理し、こ
のような新興感染症の出現を監視し、その脅威を阻止するための、長期にわたり存続可能な国際的インフ
ラを構築する方法について述べている。本特集は Review 掲載論文、Perspective 記事、ニュース、論説
などで構成される。また、オンライン版(Science Express ウェブサイト)に掲載された新たな研究も本特集に
登場する。