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週次レポート
平成 27年 1月 13日
リスク回避の円高、深度と一服を見極め
原油安、米指標と決算、欧米金融政策など焦点
今週の為替相場は、リスク回避による円高の深度をにらんだ展開となる。週間予想はドル/円が 1
16.30-
119.30円、ユーロ/円は 137
.20-142.20円。原油安が信用不安によるリスク回避の円高材料となっているほ
か、日本では輸出復調の一方での輸入金額の押し下げ要因となり、為替需給面でも円高圧力となってきた。
もっとも、原油安は先行き世界経済を支援するプラス面があり、目先はリスク回避か選好かを左右する原油
動向や米国の経済指標と企業決算、欧米の金融政策、ギリシャ議会選などが焦点となる。
日本で輸入減と輸出増、需給面で円高圧力
「昨年後半以降、原油急落や輸入コスト上昇分の価格転嫁の広がりなど受けて、国内輸入企業による狼狽
的なドル買い上がりが後退してきた」――。
国内メガバンクの為替担当はこのような指摘を行う。原油下落は原発停止などで資源輸入が急増してきた
日本にとり、輸入金額の縮減に作用している。最新 12月上中旬(1
-20日)の貿易統計でも、輸入額は前年
同期比+1.8%増にとどまり、20
13年 8月から 2014年 3月までのような+20%から+3
0%という急増傾向が
一段落となってきた。
反対に輸出サイドは 2012年後半からの「円安 2年」を経た累積効果や米国回復などにより、復調傾向が見
られ始めた。12月上中旬に輸出額は前年比+13.4%の 2ケタ増となり、4カ月連続でのプラスを回復。金額
ベースでは 4兆 5186億円と直近最低である 8月の 3兆 3904億円から増加し、2008年 9月以来の高水準とな
っている。最近は一部製造業による生産回帰も胎動しており、今後は 1
)海外収益の現地再投資から国内投資
に向けた資金回帰(円転)
、2)
国内生産の増強による輸出復調、3)同時進行での原油安による輸入減少――な
どの需給変化を受けて、昨年までに比べれば、ドル/円ではドル戻り売り圧力の強まりと、ドル押し目買い需
要の減退が注目されやすい。
しかも短期的には原油安が、米国を始めとした資源エネルギー会社の信用不安や、ロシアなど産油国の通
貨経済リスクとして重石となる。同時に原油安は、欧米でのデフレ圧力を助長。米国では原油安とドル高の
中で、前週末の 12月雇用統計では賃金が低迷しており、インフレ低下の複合リスクが FRBによる利上げ時期
の後ズレ観測につながっている。その中で米国債市場では、安全逃避と低インフレ、利上げ遅延思惑により、
長期金利の低下が加速されてきた(債券価格は上昇)
。ドル/円でのドル安要因となっており、これまでの「原
油安・ドル高」から当座は「原油安・円高」の持続性と深度を見極める展開となる。
もっとも原油安自体は、先行き世界経済を支援していくものだ。中長期スパンでは日本株や世界株をサポ
ートし、円安ペースこそ巡航速度への鈍化が予想されるものの、リスク選好の円安要因となる余地が残る。
同時に日本での輸出復調や国内への生産回帰は、デフレ脱却を後押しさせていく。アベノミクスで問題視さ
れている「都市部と地方の格差是正」につながり、漸進的ながらも地方での雇用・賃金の底上げに波及する。
賃金改善などを通じ、「2%の物価上昇率が実現すれば、少なくとも内外価格差に起因する円高進行リスクは
小さくなる」
(12月 25日・黒田東彦日銀総裁の講演)可能性を秘めている。しかも黒田総裁による円高・デ
フレの「負の連鎖」遮断に対する覚悟に揺らぎはない。
また、原油安による信用不安が警戒される中にあって、米国企業による決算発表の先頭バッターとなった
アルミ大手アルコアは 12日、予想を上回る利益と売上高を示した。同社では「世界のアルミ需要が今年7%
増加する」という見通しを示し、原油安は基本的に世界成長にプラスという前向きな判断を行っている。リ
ーマン・ショック以降、アルコアの決算や個別株動向は、米国株やドル/円の先行指標となってきた。
その意味で 12日のアルコア決算改善は、ポジション調整やスピード調整の範囲を超えた円高を抑制させる
可能性がある。現在はリスク回避の円高が再燃しているが、200
7-2014年までの円高局面と異なり、リスク
回避で売られやすい南アフリカ・ランドやトルコ・リラなどの対円での下げ幅は限定的となっている。構造
的な円調達キャリー取引の需要の根強さや、安全逃避通貨としての円の魅力減退を示唆するものだ。その他
の注目ポイントは以下の通り。
<米国の経済指標>
今週の米国経済指標では、まず 14日の 12月小売売上高が注目されよう。基本的にはガソリン下落や年末
商戦の良好さなどが支援材料となるが、賃金低迷やガソリンスタンドの売上急減が撹乱要因となる。一方、
15日の生産者物価指数(P
PI)や 1
6日の消費者物価指数(CP
I)については、原油安・ドル高・賃金低迷が
反映される形でのインフレ低下リスクが、米国債金利の低下とドル安を促す可能性をはらむ。
米国指標は強弱両リスクがあるなか、最新 1月指標となる 15日の NY連銀製造業景況指数、16日のミシガ
ン大学消費者信頼感指数などでの「原油安効果」が注目されそうだ。
<米国企業の決算発表>
米国株市場は昨年に続き、年初から調整株安に直面している。昨年も年明け直後から「決算発表見合いで
の割高さ」が警戒される形で、決算発表を前後して株安が加速された。昨年のドル/円は 1月 2日の 1
05.46
円前後をドル高値として、2月 4日の 100
.76円前後まで約 1カ月間、-4.7円前後のドル安・円高が進行し
た実績を有しており、今年も再現が警戒されている。
ただし、米国での賃金低迷は、裏表で企業による人件費コストの抑制を意味するものだ。現在は資源下落
がプラスになっている企業もあり、決算発表が底堅さを示すと、
「過剰流動性相場から業績相場への移行」期
待を喚起。短期的な乱気流を通過しながらも、米国株の高原相場が維持される余地が残されている。
<ECB量的緩和とギリシャ議会選>
ユーロについては、22日の欧州中銀(ECB
)理事会にかけての量的緩和強化の観測や、25日ギリシャ議会
選での政治混迷リスクが戻り売り要因となる。ただし、短期的には米国の賃金低迷と FRBの利上げ後ズレ観
測や、22日 ECB理事会などを前にしたポジション調整などが、単発的なユーロの自律反発とドル安のリスク
として注視されよう。
<ヘッジファンドのポジション報告「1カ月」短縮化>
米国では今年から金融規制(ボルカー・ルール)が強化され、7月から本格遵守が予定されている金融機
関のヘッジファンド向け融資の規制強化との兼ね合いから、
「米 FRBが従来の『四半期(3カ月)
ごと』のポジ
ション動向を含めたバランスシート報告を、今年 1月から『毎月ごと』の報告へと厳格化させる」
(ヘッジフ
ァンド幹部)動きがある。その分だけ、年明けからの波乱相場のようなボラティリティー(市場変動率)の
高まりが警戒されるものの、リスク回避を投資テーマとしたヘッジファンドや CTA
(商品取引業者)などに
よる売り仕掛け、日本でいえば先物主導による株安・円高の仕掛けは短期化される可能性がある。
実際、代表的なヘッジファンド指数である米国ヘッジ・ファンド・リサーチ(HFR)社の「HFR
Xグローバ
ル・ヘッジファンド指数」では、規制強化を先取りする形でポジション回転の短期化が示唆されている。同
指数は決算要因や市場変動の影響を受けやすいとはいえ、昨年 9月後半からの急落局面では 10月 15日、昨
年 11月後半からの急落は 12月 16日という“月央”で底入れするというパターンが目立ち始めた。毎月ごと
のリスク管理厳格化と報告義務をにらみ、1カ月スパンでのポジション拡大と手仕舞いを彷彿とさせるもの
だ。今月も、まずは 1月の中旬に向けた手仕舞いや利益・損失の確定が注目される。
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