週次レポート 平成 27年 3月 2日 ドル値固めと下限切り上がりの流れ 日米株、豪欧中銀会合、米雇用統計などにらむ 今週の為替相場は、ドル値固めと緩やかな下限の切り上がりが焦点となろう。週間予想はドル/ 円が 118.5 0 -121.20円、ユーロ/円が 132 .40-1 36.40円。前週末には中国で追加利下げが行われ、米 FRBによる利上げ 遅延観測とあいまって、世界的な緩和環境が日米の株高とリスク選好の円安を支援しやすい。同時に FRBの 利上げ遅延は米国の株価や経済の支援材料となっており、ドルが底堅さを見せている。一方で豪州と欧州の 中銀会合や米雇用統計などの指標、日米株の過熱調整など次第では短期的な円高の余地も残されている。 米雇用統計と賃金、伸び悩みのリスク 今週の最重要イベントは、6日の米 2月雇用統計だ。米国では 2月に寒波が襲来したほか、港湾や製油所 などで大規模なストライキが発生しており、雇用者数は単発的な下振れが警戒されやすい。さらに前月 1月 にサプライズ改善となった平均賃金についても、「12月の特殊な悪化のリバウンド」という慎重論がくすぶ っている。実際に米コンファレンス・ボードによる最新 2月の消費者信頼感指数では、6カ月先の予想景況 で「所得が増加する」とした回答は全体の 15.1 %となり、2013年 12月の 13. 8%以来という低水準に落ち込 んだ。1月は 19.5%と 12月の 16.2%から急増し、実際の平均賃金も改善となっただけに、2月は揺り戻し的 な伸び悩みが警戒されそうだ。 もっとも 6日の雇用統計や平均賃金を受けてドル安が進んだとしても、中長期スパンではドルの押し目買 い需要が根強い。前週には米国の 1月消費者物価指数(CPI)が前年比-0.1 %となり、20 09年 10月以来の マイナスに転じたが、食品・エネルギーを除くコア CP Iは+1.6%の上昇となった。原油安やドル高による低 インフレの圧力が抑制されており、緩やかな景気回復と経済正常化の流れが、ドルの値固めと下限の切り上 がりを支援する。 最近では 2月 18日の 1月 FOMC議事録公表(1月 27-28日開催分) 、2月 24日のイエレン FRB議長による議 会証言を受けて、FRBの利上げ時期を巡る予想が年央から年後半以降に後ズレした。しかし、ドル/円のドル 安値については、2月 16日の 11 8.14円前後をボトムとしてジワリと切り上がっている。FRBの金融政策は利 上げ時期が後退しても、量的緩和(QE)の再開観測が高まっているわけではなく、利上げ観測が消滅しない限 りは、中長期スパンで「ドルが下がれば買い」という流れが維持される。 政策金利の FFと相関性の高い米 2年債金利についても、下限の切り上がりが持続。長期トレンド判断で参 考になる月足・一目均衡表チャートでは、雲の下限 0. 38%の上抜け傾向が維持されている(2月 27日の終値 は 0.61%)。ドル/円でのドルの下押し余地の減退と、下値固めの基調を支援するものだ。さらに雲の上限は 4月から 10月にかけて 0.786 8%前後で横這い化してくるため、今後は雲の上限の上抜けトライが注目材料と なっていく。過去には 2年債金利が雲上限を上抜け突破すると、連動する形でドル/円でもドル高のモメンタ ムが点火されている。 一方で短期的には雇用統計のほか、今週の米国指標では寒波影響や世界減速などによる下振れのリスクを はらむ。2日の I SM製造業景況指数も、昨年 8月から 11月にかけて 57 -58ポイントという過去のレンジ上 限に接近する急上昇が見られており、当面は天井圏の到達による上げ渋りが警戒されやすい。結果、ドル/ 円は目先、「ドルの下限は切り下がるも、上値は限定的」というレンジ相場が持続する可能性を秘めている。 その他の注目ポイントは以下の通り。 <豪州中銀の金融政策委員会> 豪州市場では 3日、豪中銀の金融政策委員会が開催される。豪州の経済や資源需要に影響を及ぼす中国で は、中国経済の減速を警戒する形で 2月 28日に追加利下げが実施された。豪中銀についても、声明などで追 加利下げが示唆されると、改めて豪ドルの戻り売り要因となりやすい。 ただし、豪中銀については、2月 3日にサプライズ的な利下げを断行したばかりだ。その後に資源相場は 下げ止まりに転じ、世界経済の減速懸念も一服となっている。その中で豪中銀が当面の様子見姿勢を示すと、 材料出尽くしとあいまって、短期的に豪ドルが自律反発に転じる可能性も残されている。 <ECB理事会> 欧州市場では、5日に欧州中銀(ECB )理事会が予定されている。債券購入(QE )の開始日程や実施方法に 注目が集まるが、基本的には QEの本格始動がユーロの戻り売り要因となりやすい。ただし、欧州の国債市場 はすでに QE開始を織り込む形で長期金利が急低下し( 債券価格は高騰)、ドイツの 10年債金利は過去最低の 0.3%に到達してきた。日銀が国債買い占めを進めている日本でも、10年債金利は 0.3 %前後からは下げ渋っ ており、ドイツ 10年債金利も「理論値面での下限フロア接近」が意識され始めた。 しかも欧州では原油安が一服する一方、ユーロ安が続いている(物価の上昇材料)ことで、物価の急低下に 歯止めが掛かっている。前週にはドイツ、イタリア、スペインのインフレ指標が上振れサプライズとなって おり、ユーロ相場については中長期スパンでの下落余地を残しつつも、短期的にはドイツなどの欧州国債金 利の下げ渋りに即した「下方硬直性」が注目されやすい。 <世界景気先行の海運指数> 世界の景気動向や資源需要に先行するバルチックドライ海運指数は、前週から下げ止まりに転じてきた。 最近では昨年 11月 4日の 1484ポイントを直近高値として下落が続いてきたが、2月 18日の 509を安値とし て底這いへと移行。2月 27日には 540へとやや持ち直している。世界的な緩和競争や資源急落、大幅な金利 低下がタイムラグを経て世界経済の減速に歯止めを掛けており、為替相場ではドル/円、クロス円でのリスク 選好の円安地合いを支援する。 資源国通貨でも、NZドルは年初からの急落を経て、戻り高値を試す流れとなってきた。ここに来て中国で は 5日からの全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と前後して、追加利下げなどの内需刺激策が強化さ れている。また、米国に先んじて利上げ時期に遅延観測が高まり、12月から急落してきたポンドについても、 改めて先行きの利上げが意識される形で緩やかな上昇トレンドに回帰しつつある。 <円ショートと外国証券投資の「拡大」余地> 年初からのリスク回避相場と円高を受けて、円売り(円ショート)ポジションの整理が進んでいる。シカ ゴ IMMの投機的な円先物ポジションは 24日、-4万 7 512枚のネット・ショートとなり、前週の-4万 9091 枚から 6週連続で円の売り持ちが減少した (非商業部門、国際通貨市場) 。12月 2日週の-11万 1160枚をピ ークに円の買い戻しが優勢となり、2012年 11月 13日週の-3万 0447枚以来の低水準となっている。ポジシ ョン整理を受けて、足元では円ショートに再拡大の余地が生まれており、投機的な円売りの再開が注目され やすい。 その他、G PIF (年金積立金管理運用独立行政法人)は前週末、昨年 10-12月期の運用状況を公表した。運 用改革を受けたリスク資産の拡大が確認されたが、それでも先行き「外国債は為替損益も含めて約 2 .6兆円、 外国株は約 7.4兆円の増加余地がある」(ブルームバーグの試算)。引き続き年後半にかけては、資本フロー 面でのドルなどの外貨押し目買い(円の戻り売り)要因として注視されよう。日本では企業収益の改善と日銀 の異次元緩和などを受けたカネ余り、RO E (株主資本利益率)向上の圧力を受けて、日本企業による外国企業 の合併・買収(M&A )も急増傾向にある。これまた為替需給面での円売り・外貨買い材料として無視できな い。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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