平常テスト標準解答⑬

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有機化学Ⅱ平常テスト⑬
1
(2015.01.08)標準解答
次の反応によって得られる主生成物の構造式(全部)と IUPAC 英名((1)と(2))を示せ。ただしA=1-位に
メチル基を有するシクロヘキセン(以下、2,3でも同様)である。
(1) Aをリン酸水溶液とよく振り
混ぜて反応させる
(2) (1)の主生成物を PBr3 と反応させ、
次に KOMe と反応させる
(3) Aを HBr と反応させ、次に
KOtBu と反応させる
CH3
CH3
CH2
OH
1-methylcyclohexan-1-ol
1-methylcyclohex-1-ene
methylenecyclohexane(命名不要)
(2)は、(1)で 1-methylcyclohex-1-ene からの Markovnikov 的水和反応により得られた 1-methylcyclohexan-1-ol
が PBr3 で臭素化されて 1-bromo-1-methylcyclohexane になり、KOMe により Saytev 過程の E2 反応が施され
て 1-methylcyclohex-1-ene(元のもくあみ)になる。(3)ではA+HBr で、やはり 1-bromo-1-methylcyclohexane
が生成し、それを KOtBu と反応させれば Hofmann 過程の E2 反応により、methyl 基側と二重結合を形成する。
生成物は methylenecyclohexane という。
2
上述のAに対し、次の反応を行った。絶対配置が判別できる構造式を用いて、主生成物を与える反応式(中
間状態を明示せよ)と主生成物の IUPAC 英名を示せ。ただし環状中間体を経る場合は、その環が下向きに生成し
た場合についてのみ反応式を示せ。主生成物については、複数あるならば構造・英名を全て示せ。
(1) オキシ水銀化-脱水銀化反応
反応式は略するので教科書とノートを見よ。mercurinium 中間体の歪んだ三角形が正しく書かれていることが
肝要。生成物は1種で、1-methylcyclohexan-1-ol。
(2) ヒドロホウ素化-酸化反応
反応式は略するので教科書とノートを見よ。四角形の中間体が正しく書かれていることが肝要。生成物は2種
で、(1R,2R)- と (1S,2S)-2-methylcyclohexan-1-ol。
3
上述のAについて次の作業を行った。得られた主生成物の構造式(絶対配置に留意せよ)と IUPAC 英名を
示せ。主生成物は1種類とは限らない。
(1) Br2 を溶解させた CCl4 中にAを加える。
歪んだ三角形の bromonium ion 中間体を経て、1,2-dibromo-1-methylcyclohexane ができる。Anti-の立体化
学での付加反応なので、(1R,2R)- と (1S,2S)-1,2-dibromo-1-methylcyclohexane の二種になる。
(2) 30%水を含む DMSO 中にAを溶解した後、0~5℃程度に保ちながら NBS を少しずつ加える。
歪んだ三角形の bromonium ion 中間体に OH2 が攻撃して後 H+を放出すると、2-bromo-1-methylcyclohexan-1-ol が得られる。Markovnikov 的かつ Anti-の立体化学での付加反応なので、(1R,2R)- と (1S,2S)- 2-bromo-1-methylcyclohexan-1-ol の二種になる。