有機化学Ⅱ平常テスト⑭ (2015.01.15) Br Br Br

(2015.01.15)
有機化学Ⅱ平常テスト⑭
1
次の反応によって得られる主生成物の構造式(全部)と IUPAC 英名((1)と(2))を示せ。ただしA=1-位に
メチル基を有するシクロペンテン(以下、2でも同様)である。
(1) Aの含水 DMSO 溶液に
(2) (1)の主生成物を塩基で処理し、
NBS を少量ずつ加えていく
Br
次に HBr と反応させる
OH
CH3
HO
CH3
,
OH
(3) Aを O3 と反応させ、次に
Zn/AcOH で処理する
Br
O=CH-(CH2)3-C(CH3)=O
,
Br
CH3
Br
HO
CH3
(1S,2S)-, (1R,2R)-2-bromo-1-methylcyclopentan-1-ol
4-oxopentanal(命名不要)
(1S,2S)-, (1R,2R)-2-bromo-2-methylcyclopentan-1-ol
(2)について説明しておく。(1)の主生成物を塩基で処理して分子内 SN2 反応を起こさせれば、(1S,2S)-体からは下
向き三角形のオキサシクロプロパン環ができ、(1R,2R)-体からは上向き三角形のものを生じる。それに HBr を反
応させると H+付加により歪んだ三角形のオキソニウム中間体を生じるので、Br−が sp2 的な CH3 根元炭素を三
角形の反対側から攻撃し、ブロモヒドリンを生成する。Br と OH が anti-配置であることには変わりがないが、
(1)と比べて、(2)では OH と Br の位置関係が逆になっている。
今回は目をつぶるが、(3)の構造式は上記のように正確に書くこと。線結合表記(棒線表記)と短縮構造表記が入り
混じっていてはならない。
2
必要な試薬を補って、Aから次の分子を合成する反応式(絶対配置が判別できる構造式を用いて中間状態を
明示せよ)を示し、主生成物の IUPAC 英名を示せ。ただし環状中間体を経る場合は、その環が下向きに生成し
た場合についてのみ反応式を示せ。主生成物については、複数あるならば構造・英名を全て示せ。
(1) 二重結合部位の炭素について、syn-の立体化学で vicinal-ジオール体に変換する
教科書及びノートをよく見て自分で組み立てよ。必要な試薬は OsO4 と H2S(または NaHSO3)。Os を含む五員
環の中間体構造が示されていなければならない。生成物は、(1R,2S)-, (1S,2R)-1-methylcyclopentane-1,2-diol
(2) 二重結合部位の炭素について、anti-の立体化学で vicinal-ジオール体に変換する
教科書及びノートをよく見て自分で組み立てよ。まず MCPBA(m-クロロ安息香酸過酸化物)で二重結合をオキ
サシクロプロパン環へ導く。それを H+触媒(HCl などではなく H2SO4 か H3PO4aq.)存在下で OH2 を開環付加
(後に脱 H+)させるか、KOH などの水溶液中で HO−を開環付加(後に+H2O)すればよい。生成物は、(1R,2R)-,
(1S,2S)-1-methylcyclopentane-1,2-diol
3
(R)-6-bromo-1-methylcyclohex-1-ene に HBr を反応させたときの反応式(絶対配置が判別できる構造式を
用いて中間状態を明示せよ)を示し、主生成物の IUPAC 英名を示せ。
Br
Br
+ HBr →
CH3
Br
+
→
+
CH3
CH3
Br−
CH3 Br
→
Br
Br−
(1R,2R)-1,2-dibromo-1-methylcyclohexane
この反応は、H+付加により形成されるカルボカチオンが隣の−Br と結合して bromonium ion 中間体ができて
しまうことが要点。−Br は最初から環上に存在するのであるから、bromonium ion 中間体は「(R)-6-bromo-」
を反映して上向きにしか形成されない。したがって、生成物はただ一種のみになる。