平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 10 回 【問題 1】次の反応式を完成

平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 10 回
【問題 1】次の反応式を完成させよ。
HI
HBr
上の問題は間違いです。すいませんでした。以下、正式な問題と回答を示します。 I
HI
H
HBr
Br
CH3
Br
末端アルキンのハロゲン化水素の付加反応に関する問題です。基本的には2重結合と同じ
ような反応性を示しますが、三重結合は二重結合よりも高い反応性(求核性)を示します。
(電子が豊富) H
I–
H
1
H–I
I
H
H
2
H
H
H
まず、1当量(基質と HI が1対1)の場合、電子豊富なアルキンから H+に求核攻撃する。
平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 10 回
その際、2通りの反応が考えられるが、これはマルコフニコフ則同様、より安定な置換基
の多い第二級アルケニルカチオンを経由する。(わからない場合はマルコフニコフ則を見
直す。キーワードはアルキル基の電子供与性と超共役!)生じたカチオンに反応系内に存
在する I-が求核付加することで、生成物が得られる。重要な点は生成物もアルケンであり、
さらに HI と反応することが可能であるということ!目的物としてアルケンが主生成物で
得られるということは、三重結合の方が二重結合よりも反応性が高く、反応速度もアルキ
ンの方が早いということを示している。(もし、二重結合の方が反応性が高ければ、途中
で生じたアルケンは残っている HI と反応して飽和され、目的物は得られないはずである。
理論的には半分原料回収になるはず。) 従って、三重結合をハロゲン化水素で置換し、完全な単結合とするためには過剰量の HX が
必要となる。その例が HBr の付加反応で問題となっている。 Br
H–Br
Br
H
H
H
H
H
Br Br
H
H
H
H–Br
H
Br Br
Br H
CH3
H
H
過剰量の HBr が存在する場合、アルキンに対して HBr が1当量付加して生じる末端アルケ
ンは続いてもう一分子の HBr とさらなる付加反応が進行する。当然、マルコフニコフ則に
のっとって進行するので、2,2-ジブロモブタンが生成物となる。(金持ちはもっと金持
ち!!) 【問題 2】次の反応の生成物を示し、ケトーエノール互変異性体について説明せよ。
H
H2SO4, H2O
O
CH3
アルケンに対する水和反応である。水和反応では一般的に硫酸を使うことはすでに勉強し
ている。なぜなら、硫酸は強酸であり、プロトンを放出した後の対アニオンが共鳴安定化
のため求核性がないためである。(復習!!)というわけで、三重結合も水和反応を受け
る。まず、アルキンが酸性プロトンを補足し、より安定な二級アルケニルカチオンが生じ
る。そこに、溶媒として大量に存在する水の酸素原子上の不対電子が求核攻撃し、さらに、
平成 27 年度 有機化学 I 小テスト 第 10 回
生じたオキソニウムカチオンのプロトンを別の水分子が補足し、オキソニウムイオンが生
じる。このオキソニウムイオンは酸として働く(触媒的に)。この反応でできる二重結合
上に水酸基が乗った分子をエノールという。このエノールはさらに反応系内にある酸と反
応し、水酸基の付け根にカチオンが生じる。このカチオンはこれまでのブロム化などでは
Br–が求核攻撃していたが、水酸基の場合は酸素原子上に不対電子があるため、分子内で電
子の移動が起こり、C と O の二重結合(C=O;カルボニル基)が生じる。さらに水分子によ
りオキソニウムイオンが解消され、ケトンになる。このエノールとケトンの間の反応は平
衡反応であり、ケト-エノール互変異性化という。この時、エノールとケトンを互変異性体
という。通常、ケトンの方が熱力学的に安定である。また、酸性条件でこの平衡反応は進
行する。 テストに出します!!! O
HO S OH
O
H
–O
O
S OH
O
H
H2O
O
2
O–
O S OH
H
O
H
H
O
H
H
HO S OH or
O
H
O
O
H+
H
H
H
O
H
H
H+
H
H
H
H
O
H
H
H
2
O
H
H
H
CH3
O
H
H
H
O
O
H
H
H
H
H
O
O
H
H
学籍番号 名前 2