2014 年 12 月 25 日号 Global Market Outlook く lo 2014年グローバル金融市場10大ニュース 今年も残すところ1週間となりましたが、金融市場関連の10大ニュースを選んでみました。 1. 日本銀行の想定外の追加緩和(10月31日)、日経平均1万8千円、ドル円為替は120円へ 2013年は急激に株高、円安が進行しましたが、今年は 年初から日経平均は概ね1万4千円~6千円、ドル円為替 は100~110円での一進一退の展開となりました。ところ 円/ 1ドル 円 グラフ1:ドル円為替と日経平均 130 20000 120 18000 日経平均(右軸) ドル円(左軸) 110 が10月末、想定外の追加緩和が発表されたことから「第2 16000 100 14000 エンジン」が点火し、株価もドル円為替も「史上最悪の金融 90 危機」が発生した2008年の水準を上回りました。「円安進 80 行が企業業績改善期待を高め株価を後押し」、また「株高 70 が市場のリスク許容度を高め、本邦の外貨投資を促し円安 60 2008年 追加緩和↑ 12000 10000 8000 異次元緩和↑ 6000 2010年 2012年 2014年 を加速させる」という相互作用が働いていると思われます。 資料:ブルームバーグ 2. 日本消費税増税の影響は想定以上、再増税は延期に 4月より消費税が5%から8%に引き上げられました。 「駆け込み需要」により1~3月期の成長率がかさ上げされ たことから4~6月期に反動減は来るものの、その影響は % 10 5 限定的と考えていました。ところが落ち込み幅が想定を上 0 回ったのみならず7~9月期もマイナス成長に陥り、来年 -5 10月に予定されていた再増税は1年半延期されました。デ -10 フレの長期化による「履歴効果」は大きく、企業も家計も前 -15 向きの投資、消費には躊躇したということでしょうか。ただ グラフ2:日本GDP成長率 15 金融危機後3番底 -20 2001年 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年 資料:内閣府 再び減速基調に回帰するわけではなく、やや時期は遅れた ものの今後については反発が期待できるとみております。 3. 米国株価の史上最高値更新続く 米ドル、円 米国株式ですが、1月、7月、10月、12月と適度な調整 40000 をこなしながらもほぼ右肩上がりの基調を維持、連日の「史 35000 上最高値更新」となりニューヨークダウは1万8千ドルに乗 25000 20000 金融当局は慎重姿勢を示し長期金利は低下という株式市 15000 ウクライナ等の地政学リスクの影響も限定的でした。 日経平均 30000 せました。景気回復を背景に企業業績が概ね好調、しかし 場にとってはフォローの風が年を通して吹きました。中東や グラフ3:ニューヨークダウと日経平均 10000 5000 0 1980年 ニューヨークダウ 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 資料:ブルームバーグ -1- 4. 米国FRB議長にイエレン氏就任(2月)、10月に量的緩和終了を決定 2006年2月FRB議長に就いたバーナンキ氏ですが、2 期8年の任期が満了し、今年の2月に副議長のイエレン氏 が第15代議長に就任しました。新議長の最初のミッション 4.0 は景気回復基調を確かなものとすること、そしてゼロ金利 解除ですが、中期的には前議長の「後始末」、8千億ドル グラフ4:FRB資産残高 兆ドル 5.0 QE1 QE2 QE3 4.5 3.5 3.0 2.5 住宅担保証券 2.0 程度から4兆5千億ドルまで積みあがった3度にわたる量 1.5 的緩和の「出口戦略」と言えます。まず10月の会合で量的 1.0 緩和第3弾(QE3)の終了を決定しました。次は来年半ば 0.0 2008年 その他 米国債 0.5 2010年 2012年 2014年 資料:FRB から後半とされる「最初の利上げ(ゼロ金利解除)」となりま すが、イエレン議長はまだまだ慎重な姿勢を崩していません。利上げの時期とその後のペースが2015年の最 も重要なテーマの1つと言えるでしょう。 5. 欧州中銀はマイナス金利導入(6月)、年明けには量的緩和も視野に 米国とは対照的に欧州の景気は脆弱でインフレ率の低 下が続いています。日本型の「デフレ」を懸念する向きさえ あります。ところが欧州では1999年通貨統合の際締結し た条約により財政出動には大きな制約が課せられていま す。その結果として金融政策への負担が強まるなか、6月 に欧州中央銀行は市場金利の下限となる預金金利をマイ ナス0.1%に設定、9月にはマイナス0.2%まで引き下げ ました。しかしながら「デフレ懸念」は払拭できず、来年 % グラフ5:ユーロ圏政策金利 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 -0.5 1999年 2001年 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年 貸出し レポ 預金 資料:ブルームバーグ 早々には「量的緩和」に追い込まれるという観測が浮上し ています。 6. 先進国で長期金利が低下 年初、長期金利については本レポートも含め市場参加者 の大半が上昇を予測していたと思います。しかしながらそ の予測に反し、主要国の長期金利は低下を続けました。 米国については景気回復が顕著となり、FRBも上記のよ うに量的緩和を終了したわけですが、当局の慎重な姿勢 を好感し債券価格は堅調(金利は低下)となりました。株価 % 5 グラフ6:日米欧10年国債利回り 4.5 4 3.5 3 2.5 米国 2 1.5 1 ドイツ 0.5 も債券価格も上昇するという珍しい年となりました。 0 2008年 日本 2010年 2012年 2014年 資料:ブルームバーグ -2- 7. 原油価格が急落(10~12月) 7月あたりから原油価格が下落に転じ、秋口からは下げの スピードに拍車がかかっています。直接的には ・最大産出国であるサウジアラビアが価格低下にもかかわ らず生産調整を実施せず ・中東の地政学リスクが高まったにもかかわらず、原油供 給には支障をきたさず というニュースですが、 ・最大消費国でもある中国の景気減速 ドル/バーレル 150 140 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 2008年 グラフ7:原油価格 北海ブレント WTI 2010年 2012年 2014年 資料:ブルームバーグ という需要面からの循環要因と ・米国シェールガス、カナダのオイルサンド等、新たな資源開発が加速 という供給面からの構造要因が組み合わさったことに起因すると考えられます。原油価格の下落は消費国には 減税と同様の効果が期待できる一方、生産国経済への影響が懸念されます。また米国シェールガスの生産コス トは高いといわれており、生産や新たな開発が停止される場合、金融市場への波及も否定はできません。 8. 中国経済減速も「金融危機」は回避 習近平体制も2年目を向かえ規律重視、汚職撲滅に注力したことから、高額接待等の「自粛ムード」が高まりま した。またこれまでの経済対策による副作用も表れ始め、経済は徐々に減速している模様です。年初、一部では 行き過ぎた不動産投資により発生したバブルの破裂といった日本型の景気後退や、「影の金融」の破綻といった 米国住宅バブル破裂を彷彿させる危機を懸念する見方もありましたが、一気に表面化することは回避されました。 米国のような「外科的手術」は避け、「内科的療法」を選択したといえるでしょう。もっとも問題の先送りでもあるわ けで、火種は残ったままと思われます。 9. ウクライナ、中東をめぐる地政学リスク高まる ウクライナの政変を契機に同国とロシアの関係が急速に悪化、プーチン政権が海軍の権益確保のためクリミア 半島を事実上超法規的にロシア領としたことから、欧米諸国はロシアに対し経済制裁に踏み切りました。7月に はマレーシア航空機がウクライナ上空で撃墜される事件も発生、数10年前の冷戦を思わせる事態まで発展しま した。一触即発の危機と思われましたが何とか停戦に漕ぎ着け、ここまでは金融市場への影響はロシア市場以 外については限定的です。イスラム過激派による「イスラム国」が誕生し中東地域での緊張が高まったことや、西 アフリカでの「エボラ出血熱」の流行(10月)も市場の懸念材料となりました。 10. 金融規制強化の潮流が継続、為替値決めで大手行に課徴金 2008年「史上最悪の金融危機」の後始末とも言える作業が続いています。LIBOR(ロンドンで行われる短期 金利の値決め)に続いて為替でも疑惑が浮上し、金融機関数社に多大な課徴金が課せられました。「大きすぎて つぶせない銀行」への規制強化の動きは今後も継続することになりそうです。金融市場の透明性向上は当然の ことですが、規制強化が行き過ぎると市場を歪めることも考えられ、今後の動きを注視したいと思います。 -3- ※ 2014年7月以降のレポート 7月号 2014年度第1四半期の市場動向と今後の見通し 8月7日号 米国株に黄信号? 8月21日号 金融市場はジャクソンホール会合に注目 9月11日号 イエレン議長の「計器盤」 9月25日号 このところの円安について 10月号 2014年度第2四半期の市場動向と今後の見通し 10月30日号 米国は量的緩和を終了 11月5日号 大きく乱高下した10月の金融市場 11月6日号 米国中間選挙と金融市場 12月18日号 米国金融当局は慎重ながらも利上げに向けて一歩前進 MU投資顧問株式会社 登録番号 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 313 号 一般社団法人日本投資顧問業協会会員 一般社団法人投資信託協会会員 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 2-3-11 電話 03-5259-5351 *本資料に含まれている経済見通しや市場環境予測はあくまでも作成時点におけ るものであり、今後予告なしに変更されることがあります。 *本資料は情報提供を唯一の目的としており、何らかの行動ないし判断をするもので はありません。また、掲載されている予測は、本資料の分析結果のみをもとに行われ たものであり、予測の妥当性や確実性が保証されるものでもありません。予測は常に 不確実性を伴います。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自にご判断ください。 *なお、資料中の図表は、断りのない限りブルームバーグ収録データをもとに作成し ております。 -4-
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