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2013 年 5 月 10 日号
Global Market Outlook
Glo
100円を回復したドル円為替
昨日ニューヨーク市場午後(日本時間本日午前3時前)、4年1か月ぶりにドル円為替が100円を突破しました。
取り急ぎ今後のポイントについて簡単にまとめてみました。
1. 株価上昇にも100円を意識した為替市場
グラフ1は昨年10月からの日経平均株価とド
ル円為替推移です。年度初日本銀行による「異
次元の金融緩和」発表により急激に株高、円安に
円
15000
円
グラフ1:日経平均株価とドル円為替
110
日経平均株価(左軸)
14000
105
13000
100
振れた後、株価は順調に上昇を続けましたが、ド
12000
95
ル円為替は心理的な節目とも言える100円を目
11000
前に一進一退の動きを続けていました。そして
10000
85
徐々に底値を切り上げるなか、ようやく100円台
9000
80
に乗せました。
8000
10月
ドル円(右軸)
90
75
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
資料:ブルームバーグ
2. 過去も100円は節目
1994年6月21日ドル円為替は初めて100円
を割り込みました。しばらく100円前後での展開
が続いた後、急速に円高が進行し79円75銭を9
5年4月に記録します。しかし大規模な為替介入
円
160
グラフ2:1990年以降のドル円為替
150
140
130
120
もあり反転、98年には147円台まで円安が進行
110
しました。その後は100円に2度ほど接近しまし
100
90
たが割り込むことなく反発、戻り高値が切り下が
80
るなか2008年秋、金融危機以降の急激な円高
70
1990年
の進行となります。
1995年
2000年
2005年
2010年
資料:ブルームバーグ
3. 今後のポイント1 株価上昇の持続性
言うまでもなくグラフ1が示す通り株価とドル円為替には強い相関があります。因果関係という観点からは円安
が企業業績を押し上げ株価上昇を後押しするという見方が一般的ですが、反対に以下のように株価上昇が円安
を後押しするということも考えられます。昨秋以降はその両者がスパイラル的な好循環を生んでいるといえましょ
う。
① 株価上昇が市場のリスク許容度を引き上げ、リスク通貨(対外負債が大きい国の通貨)の価値を上昇させ、
日本のような対外資産を保有する国の通貨安をもたらす。
② 株高により余裕度が高まった本邦投資家による外債投資が活発化する、あるいはその憶測が高まる。
③ 日本株投資を行っている外国人投資家によるヘッジ売りを誘発する。つまり株価の上昇に応じヘッジ比率を
維持しようとすれば新たな円売りが必要となる。もっとも外国人投資家による新規の日本株購入はヘッジをし
ないとすれば円高材料と言える。
-1-
4. 今後のポイント2 米国景気減速懸念の払拭
グラフ3は2008年以降のドル円為替と米国2
年国債利回りの推移を示しています。昨年秋以
円
グラフ3:ドル円為替と米国2年国債利回り
%
4
115
3.5
110
前は、両者には強い相関が働いていました。日本
105
国債の金利は非常に低い水準で変化は限定的
100
であり、米国金利の動向が日米の金利差を決定
95
2
90
1.5
85
1
することになります。そして金利差が拡大すれば
ドル高、縮小すれば円高という図式です。
今回、「アベノミクス」を背景に米金利とは独立
し円安が進行していますが、その材料でいつまで
80
ドル円(左軸)
3
2.5
0.5
米国2年国債利回り(右軸)
75
2008年
0
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
資料:ブルームバーグ
も円安を期待できるというわけではないでしょう。
「賞味期限」が切れかけてきた時、このところやや
GDP比 %
異次元の金融緩和
減速懸念が高まっている米国景気について期待
50
感が再び高まれば米国量的緩和終了、あるいは
40
縮小観測から米国金利が上昇し円安を後押しす
ることも充分考えられます。逆に減速懸念が今後
も強まるとすると量的緩和の延長、場合によって
は拡大憶測も浮上し円高圧力をもたらすことも否
定できません。
グラフ4:日米中央銀行資産残高
60
日本
30
QE3
20
10
QE2
米国
QE1
0
2003年
2005年
2007年
2009年
量的緩和(QE)は
今年末で終了?
2011年
2013年
2015年
資料:ブルームバーグ、日本銀行、FRB、弊社
5. 今後のポイント3 対外圧力
先週欧州中央銀行(ECB)が政策金利を引き下げました。これは市場の予想通りとも言えるわけですが、今週
に入りオーストラリア、ポーランド、韓国が相次いで予想外の利下げに踏み切り市場を驚かせました。共通してい
ることは通貨高に対する懸念に言及していることです。ECBのドラギ総裁は為替に対するコメントは避けていま
すが、ユーロ高が利下げの一因として働いたとも推察できます。またスウェーデンやニュージーランド、タイの当
局者も通貨高に対する懸念を表明しています。一部メディアは自国の通貨を引き下げ景気浮揚を図ろうとする
「通貨戦争」が始まったと伝えています。
今週末ロンドン近郊でG7会議が開催されます。直接的な円安への批判は回避できると思いますが、今後100
円を大きく越えて円安が進行する局面では対外圧力が高まることも充分考えられるでしょう。
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※ 2013年1月以降のレポート
1月号
2012年度第3四半期の市場動向と今後の見通し
2月13日号
要人発言に振れる円相場と、ここまではうまくいった日本の戦略
2月18日号
「炭坑のカナリア」を探せ
3月4日号
イタリア総選挙の影響は
3月6日号
NYダウが史上最高値を更新
3月8日号
今度ばかりはちょっと違う?
3月18日号
米国量的緩和の内容とこれまでの成果
3月22日号
キプロスショック
4月号
2012年度第4四半期の市場動向と今後の見通し
5月2日号
新興国経済に漂う暗雲
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ております。
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