内外株価の急落について その2

2015 年 8 月 25 日号
Global Market Outlook
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内外株価の急落について その2
1. 昨日はパニック的な状況に
8月19日に始まった「世界同時株安」は、今週に入っても猛威をふるっています。昨日日経平均株価は4.6%
下落、中国上海指数は8.5%の暴落となりました。ドイツDAX指数が4.7%下げるなど、欧州各国市場も5%
前後下落しました。米国はニューヨーク市場寄り付きで、ダウ平均株価が1000ドルを超える下落という、まさに
パニック的な様相を呈しました。その後急速に反発し前日終値比100ドル安程度まで回復したものの、再び下げ
足を速め結局588ドル安で引けました。
グラフ1は各国市場の年初からの高値を100とした時の推移です。日経平均、ニューヨークダウの下落率は1
つの節目とされる10%を超え、ドイツDAXは20%、中国上海の下落率は40%に迫る勢いです。
昨日はドル円為替も一時116円台まで円高が進行したことから、外国株式の収益率が悪化、年度初からは
9%近いマイナスとなりました。一方、ユーロ円は安定していること、また長期金利の低下もあり、外国債券の収
益率は小幅ながらプラスを維持しています。
2015年高値
=100
グラフ1:主要株価指数高値からの騰落率
105
10%
100
8%
グラフ2:ベンチマーク収益率推移
外国債券
+0.97
(-1.78)
6%
95
90
85
日経平均
4%
NYダウ
2%
国内債券
+0.44
(+0.36)
0%
80
ドイツDAX
75
-2%
国内株式
-3.86
(-10.76)
-4%
70
-6%
65
中国上海
60
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
外国株式
-8.97
(-13.79)
-8%
-10%
4月
資料:ブルームバーグ
収益率(%)
年度初
(8月)
6月
5月
7月
8月
資料:ブルームバーグ、弊社
2. イエローストーン効果
米国イエローストーン国立公園では管理を厳格化し、100年以上にわたって山火事を発生させませんでした。
その結果、樹木は老齢化する一方密生が進行、大量の可燃物が地表に蓄積し、1988年に空前の大火災が発
生することになります。もし従前より自然発生的な小
規模の山火事を許容していれば、森林は適切な状態
に保たれ、大惨事は回避できたと考えられています。
米ドル
20000
グラフ3:米国株と金融政策
量的緩和終了↓
18000
今回の「世界同時株安」の背景としては、中国リスク
16000
や米国利上げ観測が指摘されていますが、それは単
14000
なるきっかけに過ぎないと思います。2009年3月、米
12000
国株が底打ちした後も、株価が脆弱性を示した局面で
10000
は、米国金融当局(FRB)が対策を講じ、市場を支え
8000
てきました。いわば「自然発生的な小規模の山火事」
6000
2008年
↑QE3
↑ツイストオペ
↑QE2
↑QE1
2010年
2012年
2014年
資料:ブルームバーグ
も初期段階で「消火」してきたため、「大量の可燃物が
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蓄積」し、今回、中国リスクをきっかけに火がついたのかもしれません。
FRBは昨年10月量的緩和を終了しました。その後、米国株の上昇にはブレーキがかかりましたが、反落は限
定的で、高値圏での横ばいというやや異例な状況が継続していました。上昇相場が安定相場に移行する場合、
高値からは少し低い水準で横ばいに入ることが一般的だと思います。「量的緩和を終了した後も、利上げには時
間をかけることができる。利上げに舵を切ったとしても、利上げのペースは緩やかにすることができる」と当局者
が繰り返し発言し、市場を支えていたとも推察されます。
3. 今後のシナリオ
冒頭に記しましたように、昨日ダウ平均株価は1000ドル下げて始まり、その後急反発、ほぼ下げ幅を回復し
たものの再び大きく下落するという乱高下となりました。これは「セリング・クライマックス」的な動きとも解釈でき、
早晩反転上昇(場合によってはV字回復)に向かうという見方もあります。
これまでのように、財政をめぐる与野党の対立、欧州債務問題等、外部要因による急落であれば、その要因の
剥落とともにV字回復も期待できます。しかし今回は中国リスクが指摘されているものの、特に下落が始まった8
月19日に何かニュースが流れたわけではなく、市場の「自壊」という色彩も強いことから「当面不安定な展開が
継続」をメインシナリオにしたいと思います。
昨日も本レポートに記しましたが、特に中国の動向に注目です。米国に次ぐ世界第2位の大国で、「世界の工
場」とも呼ばれる国の景気減速が鮮明になれば、グローバル経済の先行き不安が高まり、「中長期株価堅調見
通し」の修正が必要となるかもしれません。
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※ 2015年6月以降のレポート
6月1日号
5月の市場動向
6月4日号
ドラギ総裁発言で、長期金利上昇が加速
6月8日号
米国雇用統計は予想を上回る強さ
6月11日号
黒田日銀総裁発言で円高
6月18日号
FOMCは概ね予想通り
6月30日号
ギリシャ情勢の急転と金融市場の反応について
7月1日号
6月の市場動向と7月の注目点
7月6日号
ギリシャ国民投票は緊縮案受け入れを拒否(速報)
7月号
2015年度第1四半期の市場動向と今後の見通し
8月3日号
7月の市場動向と8月の注目点
8月14日号
中国元の急落について
8月19日号
ドル独歩高にも温度差
8月24日号
内外株価の急落について
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