調査レポート

Re se arch r e p o r t
調 査レポート
円安進行下における東海地域の輸出動向
∼名古屋税関輸出上位品目から探る∼
調査レポート
日本では2013年12月以降、為替相場は1ドル=100円台が定着して以降円安傾向が続き、2014年
12月時点では1ドル=120円近辺で推移するなど一段の円安が進行しています。一般に円安は、
日本経
済にとって追い風となることが期待されています。なぜなら、円安が輸出数量の増加につながり、
これが
国内生産を引き上げ、雇用と設備投資を活性化させ、国内需要の好循環を作り出し、裾野の広い経済
活動の拡大へと波及していくメカニズムが働くとみられているからです。とりわけ、製造業が盛んな東海
地域では、こうしたメカニズムが力強く働くことが期待されています。そこで今回は、円安進行下におけ
る東海地域の輸出動向を探り、今後の東海地域における経済状況について展望しました。
1.
日本の円安と輸出の動向
ドル円相場は2014年9月中旬以降急速に円安
が進行し、12月下旬には1ドル=120円近辺で推
移 す る な ど リ ー マ ン・シ ョ ッ ク 前 の 円 安 水 準 に
戻っています。
リーマン・ショック前の円安局面と今回の円安
局面と比較すると(図表1)、前者では、円は対ド
ル で リ ー マ ン・シ ョ ッ ク 前 の 2 0 0 5 年 1 月 平 均 の
103円台前半から2007年6月平均の122円台後半
まで約2割下がったのに対して、後者では、今回
の円安が始まった2012年6月平均の79円台前半
から2014年11月平均の116円台前半まで約5割弱
も下がり、今回の方が円安ペースは速いことがわ
かります。
後述するように円安で企業の輸出競争力は高ま
りますが、2014年1∼11月の輸出額は約66.2兆円
と、リーマン・ショック前(2007年1∼11月)の約
76.5兆円の9割に届かない水準で推移しており、
円安の追い風でも、日本の輸出回復の足取りは鈍
い状況にあります。実際、物価変動を除いた実質輸
出(季節調整値)の推移をみると(図表2)、2005年
から2007年にかけては一貫して前期比プラスで推
移し、その結果輸出数量は約3割も伸びていたの
に対して、2012年から2014年にかけては前期比マ
イナスとなることも幾度となくあり、同期間中の
輸出数量の伸びはほぼ横ばいとなっています。
6
MIE TOPICS 2015.1
図表1
米ドル対円相場(終値)における円安局面比較
(1ドル=円)
70
2005/1∼2007/6までの
円安局面
2012/6∼2014/11までの
円安局面
〈2012/6 の平均:79.27〉
80
90
100 〈2005/1 の平均:103.26〉
110
〈2014/11の平均:116.24〉
120
〈2007/6 の平均:122.70〉
130
2006/1
2013/6
2005/1
2012/6
2007/1 (年/月)
2014/6
(資料)
日本銀行
図表2
2005年からと2012年からの円安局面における実質輸出の推移
(2010 年=100)
110.0
108.1
105.4
105.0
100.1
2012 年∼2014 年
100.0
102.2
97.5
95.0
90.0
2005 年∼2007 年
85.0
81.9
80.0
2005
2012
2006
2013
2007
2014 (年/期)
(資料)
日本銀行「実質輸出入」 (注)2014年第4四半期は10月値。
2.
円安に伴う輸出増加の経路
図表4
図表3
円安に伴う輸出増加の経路
輸出の増加
輸出数量の増加
製品等値下げ
︵価格競争力向上︶
円
(36.5%)
価格競争力向上
円建て輸出
2014年
上半期取引
通貨比率
輸出採算改善
外貨建て輸出
円 安
2014年
上半期取引
通貨比率
米ドル
(52.4%)
ユーロ
(6.2%)
その他
(4.9%)
(資料)財務省関税局「貿易取引通貨別比率(平成26年上半期)」
18.1
国内生産・輸出の採算が
合わなくなったため、
海外生産シフトを進めた
このように、日本における円安の影響は、輸出に
おいて外貨建て比率が高く、タイムラグを伴いなが
ら輸出数量が増加したあと、輸出が増加すると考え
られますが、今回の円安局面でそうした動きが明確
38.3
40.0
26.4
72.3
45.0
36.8
44.9
39.6
42.2
国内の設備投資を抑制した
0
20
40
(%)
60
80
■ その他(n=72) ■ 輸送用機器(n=47) ■ 電気機器(n=60) ■ 機械(n=68)
■ 素材(n=69) ■ 化学(n=48)
■ 全体(n=367)
(資料)経済産業省「通商白書2014」
にみられません。では、その要因は何でしょうか。
考えられるのは、企業行動の変化や輸出構造の変
化が挙げられます。
ま ず 、企 業 行 動 の 変 化 に つ い て み る と( 図 表
4)、2008 年半ばからの円高方向への動きのなか、
国内の設備投資を抑制した企業、国内生産・輸出
採算が合わなくなったため海外生産シフトを進
めた企業は、輸送用機器や電気機器などでそれぞ
れ多くなっています。実際に、製造業の海外現地
法人企業数の推移をみると(図表5)、2008年から
2011年までの円高局面を経て、2012年には、10,425
社と2008年(8,147社)対比28.0%増加しており、円
高後製造業は海外生産シフトを進めていること
がわかります。
主要業種別にみると、同じ期間で最も増加率が
高かったのは、輸送機械の20.4%(2008年:1,619社
→2011年:1,950社)、次いで、電気機械の14.6%
(同:582社→同:667社)、情報通信機械の13.8%
(同:962社→同:1,095社)となっており、自動車な
図表5
製造業の海外現地法人企業数の推移
(社)
12,000
10,000
8,000
3.
円安進行下における企業行動変化と
輸出構造変化
17.6
18.8
20.8
24.5
調査レポート
通常、円安は輸出数量を押し上げますが、その過
程を確認すると次の通りです。輸出は、外貨建ての
輸出と円建ての輸出とに分けることができます。円
安が輸出数量の増加につながるには、円安によって
日本からの輸出品が海外市場で割安となること、す
なわち価格競争力が高まる必要があります。
最初に、価格競争力が高まるのは円建ての輸出
です。なぜなら、円建ての場合、円安が進むとすぐ
に現地通貨換算の価格が下落するからです。一方、
外貨建ての場合は、円安の進展と同時に円建ての輸
出受取額は増えますが、その段階で価格競争力は高
まりません。価格競争力が高まるのは外貨建て価格
の値下げが行われてからであり、通常、価格の改定
にはある程度の時間がかかります。これらを整理す
ると、図表3の通りとなります。すなわち、円安に
なると、①外貨建て輸出の場合:輸出採算の改善→
値下げ(価格競争力の向上)→輸出数量増加→輸出
の増加、②円建て輸出の場合:価格競争力の向上→
輸出数量増加→輸出の増加、という経路をたどりま
す。ちなみに、日本の2014年上半期の対世界輸出に
おける貿易取引通貨別比率は、外貨建てが63.5%、
円建てが36.5%となっています。
経営戦略への影響(2008年半ば以降(為替は円高方向に推移))
6,000
4,000
2,000
0
7,127
製 造 業(左)
うち電気機械(右)
うち情報通信機械(右)
うち輸送機械(右)
8,048
8,147
1,375
1,619
1,194
1,077
576
1,183
665
962
582
(社)
10,425
2,500
2,000
1,950
1,500
1,095
1,000
667
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
500
0
(年度)
(資料)経済産業省「海外事業活動基本調査」 (注)
シャドー部分は円高局面。
2015.1 MIE TOPICS
7
調査レポート
どの輸送機械でより生産拠点の海外移転が積極
的なことがわかります。ちなみに、これらの業種
では、通商白書(2014)によれば、今回の円安方向
へ推移する中においても海外の生産設備投資計
画を拡充または変更しない、と指摘しています。
次に、輸出構造の変化を財務省「貿易統計」で
確認すると、携帯電話やテレビなど情報通信機
器の輸出構造の変化が挙げられます。すなわち、
①2005年に0.12兆円の黒字であった通信機(携帯
電話等)で2010年には▲0.64兆円と赤字に転じ、
2013年には▲2.15兆円まで赤字が増加しており、
②また、2005年に1.60兆円の黒字であった音響・
映 像 機 器( 含 部 品 )
( テ レ ビ 等 )で 2 0 1 3 年 に は ▲
0.06兆円の赤字となっています。前掲図表5で、
2005年以降における主要業種の海外現地法人企
業数の推移を改めて確認すると、2012年の情報
通信機械は2005年対比▲7.4%と主要業種の中で
唯一減少しています。
こ う し た 背 景 に は 、日 本 企 業 の 当 該 品 目 で の
製品競争力低下が示唆されます。経済産業省「鉱
工 業 出 荷 指 数 」で 情 報 通 信 機 械 の 国 内 総 供 給
(2010年=100)を国産品と輸入品で分けてみる
と、2008年第1四半期は国産品:輸入品=1:0.7
の比率であったものが、2011年第1四半期には
同じく1:1.4の比率となり輸入品が国産品を上回
り、直近の2014年第3四半期では同じく1:2.9と
輸入品の比率が拡大傾向となっています。以上
を踏まえると、日本の情報通信機械では部品を
輸出し、製品を輸入する傾向が強まっていると
考えられます。
4.
東海地域の産業構造と輸出構造
(1)産業構造
東 海 地 域 の 経 済 活 動 別 構 成 比 を み る と( 図 表
6)、全体の約3割が製造業で全国の約2割と比
べても高いシェアを占めています。最新のデー
タである2011年度の構成比でみると、東海地域
は製造業が29.8%で最も高く、次いでサービス業
の 1 6 . 8 % 、不 動 産 業 の 1 1 . 9 % 、卸 売・小 売 業 の
11.8%の順となっています。一方、2011年度の全
国はサービス業が19.6%と最も高く、次いで製造
業が18.4%と続きます。2011年度の製造業におい
て 、東 海 地 域 は 全 国 と 比 べ て 約 1 1 ポ イ ン ト 上
8
MIE TOPICS 2015.1
図表6
経済活動別県内総生産(構成比)の推移
<東海
(岐阜・静岡・愛知・三重)
>
2005 0.8
33.3
2008 0.8
31.2
2011 0.8
29.8
5.3 2.4 11.8 5.0 9.6
4.9 3.1
5.5 2.2 11.1 4.0 10.8 5.5 3.4
5.0 2.1 11.8 3.9 11.9
5.2 3.5
15.6
6.8 1.4
16.6
7.3 1.6
16.8
7.3 2.0
<全国>
2005 1.1
19.8
18.1
9.0 1.8
2008 1.1
18.9
5.2 2.4
13.3
5.2
13.1
5.0 5.4
19.3
9.1 1.9
2011 1.1
18.4
5.0 2.2
13.7
4.8
13.8
4.7 5.2
19.6
9.2 2.1
(年度)
0
5.4 2.6
14.1
20
■
■
■
■
6.3
12.0 4.7 5.0
40
農林水産業
電気・ガス・水道業
運輸業
政府サービス生産者
■
■
■
■
60
(%)
80
100
鉱業
■ 製造業
■ 建設業
卸売・小売業 ■ 金融・保険業 ■ 不動産業
情報通信業 ■ サービス業
対家計民間 非営利サービス生産者
(資料)
内閣府「県民経済計算」
回っており、東海地域は引き続きものづくりの
中心エリアとなっています。
前述の円安進行下における企業行動変化と
輸出構造変化を踏まえると、東海地域における
製造業においては全国に比べてその影響は大
き な も の と な っ て い る と 推 察 さ れ ま す 。そ こ
で、東海地域の製造業についてさらに詳しくみ
ると次の通りです。製造品出荷額の業種別構成
比 を み る と( 図 表 7 )、2 0 1 2 年 の 東 海 地 域 は 、輸
送 用 機 械 が 3 6 . 3 % で 最 も 高 く 、次 い で 電 気 機 械
の 1 6 . 9 % 、そ の 他 の 9 . 8 % 、化 学 の 6 . 3 % の 順 と
な っ て い ま す 。一 方 、2 0 1 2 年 の 全 国 は 東 海 地 域
と順序の顔ぶれは同じですが、輸送用機械にお
いては東海地域に比べて約18ポイントも低く、
東海地域における輸送用機械の生産動向が経
済活動に及ぼす影響が非常に大きいことが改
めて確認できます。
図表7
業種別製造品出荷額(構成比)の推移
<東海
(岐阜・静岡・愛知・三重)
>
2008 4.5 5.8 2.1 4.3 2.3 5.3 2.6 3.2
2012 5.4 6.3 2.5 4.4 2.2 4.9 2.3 3.4
16.8
16.9
4.7 3.3
34.7
3.41.1
1.2 9.1
36.3
1.1 9.8
<全国>
2008
7.7
2012
8.7
(年)
8.9 4.4 3.7 2.5 7.4 3.1 4.1
9.7
0
■
■
■
■
6.2 3.9 2.4 6.4 3.0 4.1
20
食料品
窯業・土石
電気機械
輸送用機械
40
17.5
6.2 4.3
17.8
1.3 11.2
4.6 2.7
18.3
1.3 11.6
17.2
60
■ 化学
■ 石油・石炭
■ 鉄鋼
■ 非鉄金属
■ 電子部品・デバイス等
■ その他の製品
■ その他
(資料)経済産業省「工業統計表」
80
■ プラスチック
■ 金属
■ 情報通信機械
(%)
100
図表8
名古屋税関内における品別輸出額(構成比)の推移
■ その他
■ 輸送用機器 ■ 電気機器
■ 原料別製品 ■ 化学製品
(%)
100
4.2
■ 一般機械
■ 鉱物性燃料
■ 原料品 ■ 食料品
5.0
4.9
4.3
5.5
5.5
5.4
5.0
5.0
5.4
49.3
50.0
50.7
49.7
45.8
45.1
41.5
45.8
45.7
46.1
13.7
14.1
14.1
13.7
14.3
13.5
13.3
13.7
12.9
19.7
18.4
17.8
18.8
17.7
19.5
20.1
19.5
19.8
7.7
4.2
7.4
4.1
7.2
4.2
7.8
4.3
9.0
5.6
9.0
5.4
8.9
5.2
8.7
5.4
8.4
5.5
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
13.6
22.0
9.5
5.9
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(年)
(資料)財務省「貿易統計」 (注)2014年は1∼11月値。
5.
東海地域の輸出動向
前述でみた名古屋税関における輸出構造の推
移において、今回の円安進行下における個別品
目の輸出数量の実際の動きはどのようになって
いるのでしょうか。第3章でみたミクロでみた
企業行動変化やマクロでみた輸出構造変化を踏
まえ、リーマン・ショック前の円安局面と今回の
円安局面について比較分析します。
(1)名古屋税関輸出上位10品目
ま ず 、名 古 屋 税 関 管 内 の 数 量 ベ ー ス で 把 握 可
能な2007年と2014年輸出金額上位10品目をそれ
ぞれ整理します。その結果が、図表9に示したも
のです。すなわち、2007年と2014年では、自動車、
図表9
名古屋税関管内の輸出金額上位10品目
上位
2007年
2014年
1
自動車
自動車
2
自動車の部分品
自動車の部分品
3
原動機
原動機
4
二輪自動車・原動機付自転車
工作機械
5
工作機械
鉄鋼
6
鉄鋼
プラスチック
7
音響・映像機器の部分品
ゴム製品
8
プラスチック
電算機類の部分品
9
電算機類の部分品
電気回路の開閉用、保護用機器
IC
測定用等の電気機器
10
調査レポート
(2)輸出構造
このような東海地域における背後圏の経済活
動を映じて、名古屋税関内の貿易輸出構造をみ
ると(図表8)、最もウエイトの高い輸送用機器
はリーマン・ショック前には約5割の水準で推
移していましたが、リーマン・ショック後の2011
年には一時41.5%と約4割の水準にまで低下し
ました。その後、2014年には46.1%まで上昇して
いますが、リーマン・ショック前の水準にまでは
戻っていません。次にウエイトの高い一般機械
は概ね2割前後で安定的に推移する一方、その
次の原料別製品(鉄鋼、金属・ゴム・紙製品等)は
やや低下傾向にあります。また、4番目にウエイ
ト の 高 い 電 気 機 械 は 、順 調 に 水 準 を 切 り 上 げ
2011年には9.5%まで達しましたが、2014年には
8.4%と低下しています。
(資料)財務省「貿易統計」
(注1)上位10品目は、数量データがとれる品目の金額上位10品目。
2014年は2014年1∼10月の累計。
(注2)
シャドー部分は2007年と2014年で重なっている品目。
自動車の部分品、原動機の上位3品目は変化が
あ り ま せ ん 。し か し 、2 0 0 7 年 に 4 位 の 二 輪 自 動
車・原動機付自転車、7位の音響・映像機器の部
分品、10位のICが2014年では姿を消し、替わりに
7位にゴム製品、9位に電気回路の開閉用、保護
用機器、10位に測定用等の電気機器が新たに上
位10品目に入りました。
(2)名古屋税関輸出上位品目の輸出数量の推移
次に、2007年と2014年で比較可能な上位7品
目( 前 掲 図 表 9 の シ ャ ド ー 部 分 )を 対 象 に 、①
2005年から2007年までの12四半期、②2012年か
ら2014年までの12四半期について、四半期ごと
の輸出金額を輸出価格で除して輸出数量をそれ
ぞ れ 求 め ま し た 。そ し て 、そ れ ぞ れ の 輸 出 数 量
を、①リーマン・ショック前の円安局面:2005年
=100、②今回の円安局面:2012年=100として指
数化を図り比較分析しました。
( 図表10)。
全体の傾向をみると次の通りです。2005年∼
2007年の第1四半期と第12四半期を比較すると
輸出数量は全ての品目において増加しており、
傾向線も右肩上がりとなっています。一方、2012
年∼2014年で同様に比較すると輸出数量が減少
した品目は7品目中、自動車、原動機、工作機械、
電算機類の部分品の4品目にも及び、傾向線も
横ばいないしやや右肩下がりとなっています。
また、2005年∼2007年の第1四半期対比第12
四半期の増減率と、2012年∼2014年の第1四半
期対比第12四半期の増減率との差を見てみる
と、50ポイント以上の差があるのは、電算機類の
2015.1 MIE TOPICS
9
図表10
名古屋税関管内における輸出金額上位品目の輸出数量の推移
<自動車>
150
<自動車の部分品>
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
140
150
140
調査レポート
2005年∼2007年
130
120
110
110
100
100
90
90
80
2012年∼2014年
70
60
1
2
3
4
5
6
2005年∼2007年
130
120
80
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
7
8
2012年∼2014年
70
9
10
11 12
(四半期)
60
1
2
3
4
<原動機>
150
150
120
110
110
100
100
90
90
80
2012年∼2014年
70
60
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11 12
(四半期)
60
150
140
1
2
3
4
5
6
7
11 12
(四半期)
8
9
10
11 12
(四半期)
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
140
2005年∼2007年
130
2005年∼2007年
120
120
110
110
100
100
90
90
80
80
2012年∼2014年
70
60
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11 12
(四半期)
110
100
90
2012年∼2014年
70
60
10 MIE TOPICS 2015.1
1
2
3
4
5
6
7
2
3
(注2)直線は傾向線。
120
80
1
8
4
5
6
7
8
9
(注1)2014年第4四半期(12四半期)
は10、11月値。
2005年∼2007年
130
60
(資料)財務省「貿易統計」
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
140
2012年∼2014年
70
<電算機類の部分品>
150
10
<プラスチック>
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
130
9
2012年∼2014年
70
<鉄鋼>
150
8
2005年∼2007年
130
120
80
7
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
140
2005年∼2007年
130
6
<工作機械>
2005年=100
(2005年∼2007年:12四半期)
2012年=100
(2012年∼2014年:12四半期)
140
5
9
10
11 12
(四半期)
10
11 12
(四半期)
部分品(61.8ポイント、以下同様)、自動車(50.1)
の2品目で、30ポイント以上の差があるのは、工
作 機 械( 3 9 . 8 )、原 動 機( 3 9 . 1 )、自 動 車 の 部 分 品
( 3 6 .8 )、プ ラ ス チック(34. 8)の4 品目となって
おり、主要品目のほとんどで、今回の円安局面に
おいて輸出数量を伸ばせていないことがわかり
ます。
以上を踏まえると、東海地域の輸出において、
世界的にも競争力が高い製造業が集積している
こともあり、第3章でみた円安進行下における
企業行動変化と輸出構造変化が全国よりもより
強く顕在化していることが示唆されます。
国 内 需 要 が 低 迷 す る な か で 、海 外 需 要 の 取 り
込みは東海地域の製造業においても喫緊の課題
です。このようななか、輸出数量の伸び悩みの影
響は、東海地域の生産活動に直結するとみられ
ます。リーマン・ショック前の円安局面では、生
産活動は全般に好調に推移し、主要業種でも増
加基調で推移していました(図表11)。
しかし、今回の円安局面では、乗用車は微減傾
向、情報通信機械は大きく水準を落とし減少傾
向で推移している一方で、世界的に需要が拡大
しているスマートフォンやタブレット端末に搭
載される電子部品・デバイスや、2015年上期に初
飛行が予定されている「MRJ」関連の需要が増加
している航空機体部品等では大きく生産が増加
しており、主要業種における生産活動にバラツ
図表11
東海地域における生産活動の推移
(2010年=100)
250
200
電気機械
輸送機械
(輸送)自動車部品
鉱工業
電子部品・デバイス
情報通信機械
(輸送)
乗用車
(輸送)航空機体部品・同付属品
150
100
50
(%)
東海地域における実質経済成長率の推移
■ 純移出入等 ■ 公的部門 ■ 民間在庫
■ 設備投資 ■ 住宅投資 ■ 個人消費
6
4
調査レポート
6.
東海地域経済の今後の展望
図表12
2
0
▲2
▲4
▲6
▲8
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
(資料)
内閣府「県民経済計算」
(注)東海は、岐阜、静岡、愛知、三重の4県。
(年度)
キがみられます。
したがって、今回の円安が今後も持続し、名古
屋税関管内の主要品目における輸出数量の伸び
悩みが続けば、今後の生産活動全体にも一定の
影響が出てくるものと判断されます。
ま た 、東 海 地 域 の 実 質 経 済 成 長 率 の 推 移 を み
ると(図表12)、純輸出を含む純移出入が経済成
長の波を作っています。図表12をもとに、各需要
項目の寄与を算出すると、純移出入がプラスに
寄与している時の寄与の平均が1.3%と個人消費
の1.2%を上回っていることからも輸出を含む移
出が、東海地域の経済成長にいかに重要である
かを示唆しています。これは、東海地域が日本の
製造業の中心地域であるという産業構造上の特
性から、東海地域の経済成長の経路が、輸出の増
加(減少)→生産の増加(減少)→雇用・所得の増
加(減少)→個人消費の増加(減少)という形で、
輸出が経済成長の起点になっていることに起因
していると考えられます。
以 上 を 踏 ま え る と 、円 安 進 行 下 で の 企 業 行 動
の変化や輸出構造変化が今後もしばらくは変化
しないとみられるなか、東海地域の経済がより
足腰を強くし力強い経済成長をしていくために
は、輸出競争力のある高付加価値製品を継続的
に生み出していくことが必要となりましょう。
0
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014(年/期)
(2014.12.29)
三重銀総研 調査部 主席研究員 先浦 宏紀
(資料)中部経済産業局「管内鉱工業指数」
(注1)東海は、岐阜、愛知、三重の3県。2014年第4四半期は10月値。
(注2)
シャドー部分は円安局面。
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