昨日のFOMC(米国金融政策決定会合)について

2015 年 3 月 19 日号
Global Market Outlook
一斉同報のお知らせ(GMO)く lo
昨日のFOMC(米国金融政策決定会合)について
昨日開催されたFOMCは注目度の高い会合でしたが(注)、一言で言えば「6月会合での利上げに道は開いた
ものの、見通しは下方修正」となりました。
注)FOMCは年間8回開催されるが、3,6,9,12月の会合では経済見通しや政策金利予測が公表されるとともに議長の記者
会見も設定される。市場では大きな決定はこの会合でなされるという認識も強い。
1. 市場の反応
日本時間本日午前3時に声明文と経済見通しが発表され、3時半から1時間程度、イエレン議長の記者会見が
行われました。
声明文発表とともに株価は上昇、ニューヨークダウは1万8千ドル台で取引を終えました。またSP500指数、N
ASDAQ総合指数は日中それぞれ2100、5000の大
台を一時回復しました。
指数
グラフ1:昨日の米国株(SP500指数)推移
債券価格も上昇し長期金利は低下しました。米国10
年国債利回りは再び2%を割り込みました。一方為替
市場ではこれまでのドル高基調が反転、ドル円は120
円台を割り込むとニューヨーク市場引けにかけて円高
が加速し、一時119円29銭を記録、ユーロも対ドルで
資料:ブルームバーグ
反発しました。
グラフ2:昨日の米国10年国債利回り推移 声明文発表↓
%
↑声明文発表
声明文発表↓
円/1米ドル
グラフ3:ドル円為替
資料:ブルームバーグ
資料:ブルームバーグ
119円29銭→
2. 主なポイント
2008年「史上最悪の金融危機」後に採用された米国での「異例な緩和政策」は ①政策金利をゼロまで引き
下げる、②金融当局が将来の「約束」を行うこと(フォワードガイダンス)により市場を安心させる、③国債等を購
入し市場に流動性を供給する量的緩和、という3つの柱で成り立っています。昨年10月に③の量的緩和を終了
し、今回は②に注目が集まっていました。
前回1月までの会合後に発表される声明文には「最初の利上げには辛抱強く待つことができる」という文言が
ありました。イエレン議長によるとこの文言は「今後2回の会合での利上げはない」を意味するとのことです。そし
て今回この文言が声明文から削除され、議長は記者会見で「6月会合以降の利上げの可能性を排除しない。た
だし今回の変更は必ずしも6月の利上げを意味するものではなく、今後は経済状況等を監視しながら会合ごとに
1
決定する」と発言、6月会合での利上げの道を開きました。利上げに踏み切る条件は「更なる労働市場の改善と、
インフレ率が目標の2%に上昇するというある程度の確信が得られること」としました。
2番目のポイントは経済、政策金利予測の変更です。
昨年12月に発表された成長率見通しは2015年が2.
6~3.0%、2016年が2.5~3.0%でしたが、い
グラフ4:FOMC参加者政策金利予測(2015年末)
0
%
1
2
3
4
5
6
人数
7
8
0.00~0.25
①0.25~0.50
ずれも2.3~2.7%に下方修正されました。
②0.50~0.75
FOMC参加者の政策金利予測も発表されましたが、
③0.75~1.00
④1.00~1.25
2015年末(グラフ4)の中央値は1~1.25%から0.
⑤1.25~1.50
5~0.75%へ、2016年末(グラフ5)については2.
⑥1.50~1.75
12月時点
⑦1.75~2.00
今回
25~2.5%から1.75~2.00%へと大きく修正さ
⑧2.00~2.25
3番目のポイントは景気認識です。前回の声明文の
グラフ5:FOMC参加者政策金利予測(2016年末)
冒頭には「力強いペースで経済は拡大」と記されてい
%
0
1
2
3
4
5
6
人数
ましたが、今回は「成長率はいく分緩やかになった」と
0.00~0.25
①0.25~0.50
変更され、新たに「輸出の伸びが弱まった」という文言
②0.50~0.75
が追加されました。記者会見でこのところ急速に進行
③0.75~1.00
しているドル高について質問され、議長は「輸出の弱
⑤1.25~1.50
12月時点
今回
④1.00~1.25
⑥1.50~1.75
さや、(輸入物価の下落による)インフレ率の押し下げ
⑦1.75~2.00
の要因」と発言しました。ただ一方で、経済予測で示さ
⑧2.00~2.25
れているように、今後も長期(トレンド)成長率である2.
⑩2.50~2.75
0~2.3%を上回る成長が期待できるとしました。
資料:FRB
※丸数字は0.25%単位での利上げの回数
れました。
⑨2.25~2.50
⑪2.75~3.00
⑫3.00~3.25
⑬3.25~3.50
⑭3.50~3.75
⑮3.75~4.00
※丸数字は0.25%単位での利上げの回数
資料:FRB
3. 今後の注目点
年初から最初の利上げをめぐって「6月説」と「9月説」で市場は揺れています。昨日のFOMC後は、「6月利上
げの道は開かれたものの、見通しが下方修正されたこと」から再び9月が優勢となりました。「経済状況次第で会
合ごとに決定する」としているわけで、今後とも市場は経済指標等に敏感に反応すると思います。
しかし余程のことがない限り、年内には利上げに舵を切るとみられ、市場の焦点は徐々に「最初の利上げ」か
ら「利上げのペース」に移行すると思われます。グラフ5が示すように2016年末までには当局者の多くが6~7
回の利上げを予測しています。先物市場はより慎重で4回程度しかみていません。これまでは当局者がより慎重
な市場に擦り寄る形となりました。市場は日本や欧州の情勢をより重視し、インフレ率が抑制されることに確信を
持っているということでしょう。「インフレ率が2%に上昇するある程度の確信」を当局者及び市場が得られるかど
うかがカギを握ることになります。
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※ 2014年10月以降のレポート
10月号
2014年度第2四半期の市場動向と今後の見通し
10月30日号
米国は量的緩和を終了
11月5日号
大きく乱高下した10月の金融市場
11月6日号
米国中間選挙と金融市場
12月18日号
米国金融当局は慎重ながらも利上げに向けて一歩前進
12月25日号
2014年グローバル金融市場10大ニュース
1月5日号
2015年金融市場の「初夢」
1月号
2014年度第3四半期の市場動向と今後の見通し
1 月22日号
原油価格急落の背景、影響と今後の見通し
2月5日号
マイナス利回りの国債が急増
2月10日号
案外「素直な」為替市場
2月27日号
欧州中銀の量的緩和
3月10日号
視野に入りつつある米国の利上げ
3月17日号
年初から意外に強い円相場
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*本資料に含まれている経済見通しや市場環境予測はあくまでも作成時点におけ
るものであり、今後予告なしに変更されることがあります。
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はありません。また、掲載されている予測は、本資料の分析結果のみをもとに行われ
たものであり、予測の妥当性や確実性が保証されるものでもありません。予測は常に
不確実性を伴います。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自にご判断ください。
*なお、資料中の図表は、断りのない限りブルームバーグ収録データをもとに作成し
ております。
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