マーケット展望 2015年は“未年”、 改革へ不退転の取り組みが求められよう

マーケットウィークリー・810号
2015.1.1
マーケット展望 2015年は“未年”、
改革へ不退転の取り組みが求められよう
作成者:奥村義弘
2015 年 は 改 革 へ
の不退転の取り
組みが必要
原油価格の大幅下落で動揺した株式相場も、FOMCの景気重視の
政策に対する信頼感を確認し、反発に転じた。東洋哲学者・安岡正篤氏
の「干支の活学」(プレジデント社刊)を紐解くと、15年は「乙未」(きの
と・ひつじ)の年。乙は、草木の芽が曲がりくねっている象形文字。新
しい改革創造の歩を進めるけれども、まだまだ外の抵抗は強い様子を
示している。また未という文字は、枝葉の繁殖を示している。そこか
らは、暗くしてはいけない、不昧でなければならないという意味があ
る。枝葉末節をはらい落して、生々たる生命を進展させる必要がある。
「未辛抱」リスク
要因多く、波乱含
みの展開を予想
日本経済にこれをあてはめると、国民が託した「アベノミクス」が
掲げるデフレ脱却に向けた動きを、いかなる抵抗があってもやりとげ
ねばならないということであろう。抵抗の強い構造改革への取り組み
も、進むべき方向性を明確に示し、やりとげる必要がある。株式市場
には「未辛抱」をいう相場格言があるが、さまざまなリスク要因も表
面化しやすいということを示唆している。ロシアなど新興国経済の波
乱、米国の金利引き上げのタイミングへの思惑、日本でも財政問題な
どは表面化しやすいリスク要因である。
けん引役の米国
経済は力強さを
増そう
改革の実現に向けて依然波が高いという印象の2015年であるが、世
界経済のけん引役、米国市場は底堅そうだ。昨年生じた政府部門の活
動低下などの異常値は除かれよう。住宅市場など動きの鈍い分野もあ
るが、シェールガス革命などの利益を最大限享受できる国であること
が示されつつある。また、米国は好パフォーマンスが期待される就任3
年目の年に入る。中間選挙では共和党が勝利し、株式市場寄りの政策
実行が予想される。年後半にかけては金利引き上げにともなう波紋が
懸念されるが、経済成長率が高まれば許容されよう。
年初は金融緩和
と景気対策で内
需株に注目
年初は通常国会開催もあり、国内景気対策が焦点となろう。政権側
からも春の統一地方選挙に向け、地方創生などで急激な円安に苦しむ
内需に配慮した政策発動が予想される。金融政策面では原油価格の下
落もありデフレ脱却への道のりは厳しそうだ。日銀は2%の物価上昇率
実現に向けて、一段の金融緩和に踏み切る可能性がある。年前半は金
融緩和のメリットが大きく、かつ政策の恩恵を受けやすい、建設、不
動産、電鉄など金利敏感株に注目したい。また原油安メリットの大き
なゴム、運輸セクターなどにも引き続き注目が集まろう。
決算期待の大き
い輸出関連株
来年度の業績が本格的に織り込まれる3月~4月にかけて、円安メリ
ットが大きく、業績の上方修正期待のある米国依存度の高い輸出関連
株に注目したい。各調査機関が12月の初旬までにまとめた直近の企業
収 益 見 通 し の 経 常 増 益 率 は 14年 度 が 8.9- 12.0% 、 15年 度 が 11.2-
13.1%。為替や原油価格の前提などから余裕含みと言えよう。15年度
にかけてモメンタムの向上が期待できる。ROEの向上、株主還元の
充実など投資家を意識したスタンスをとる企業が増えており好感でき
る。自動車、電機、精密機器、機械などへ関心が高まろう。4月頃にか
けては12月19日現在の日経平均17,621円に1割程度の増益率を乗じた
19,500円前後を目指す動きを予想する。
マーケットウィークリー・810号
一方、アベノミクスの第3の矢、成長戦略につながる構造改革がどの
程度になるか現時点では不透明。政策が出そろう時点で失望リスクも
ある。税制、農業、雇用、財政問題など潜在的成長率アップに向けた
改革への不退転の取り組みが求められよう。5月以降は具体的な成長戦
略への失望リスク、米国の利上げに対する懸念も高まる展開が予想さ
れ、株価は調整色を深める可能性もあろう。日本株にとり「政策」の
重要性がより問われる年となろう。
(ドル)
20,000
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
◇NYダウ、景気先行指数、FF金利の推移
NYダウ
(%)
7
6
5
4
3
2
1
0
14/1
13/1
12/1
11/1
10/1
09/1
08/1
05/1
04/1
03/1
02/1
01/1
00/1
99/1
07/1
米国OECD景気先行指数(左軸)
米FF金利(右軸)
104
102
100
98
96
94
92
90
06/1
日本株の中長期
動向には構造改
革が鍵
2015.1.1
(出所)Quick Astra Manager より CAM作成
◇主要証券各社の企業収益見通し
野村證券295社
13実
14予
大和証券200社
15予
14予
SMBC日興証券250社(除く金融)
15予
14予
15予
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
売上高
12.5
4.2
4.5
2.7
2.8
3.7
4.2
2.8
2.9
3.9
4.4
2.7
2.8
経常益
39.7
8.1
8.9
12.5
13.1
8.3
9.7
11.0
11.6
10.1
12.0
10.8
11.2
純利益
79.8
10.9
10.7
12.4
14.2
12.7
13.9
9.1
10.6
12.7
14.5
9.8
11.0
円/ドル
100.2
101.3
105.5
101.0
108.0
100.5
106.5
100.0
110.0
100.5
109.0
100.0
115.0
円/ユーロ
134.4
138.5
137.9
138.0
137.0
136.3
139.5
135.0
140.0
140.0
142.0
140.0
145.0
(注)野村證券の前回は14年8月21日、今回は14年11月25日。大和証券の前回は14年8月26日、今回は14年11月25日。SMBC日興証券の前回は
14年9月2日、今回は14年12月2日発表。
(出所)各社の公表資料を基にCAM作成
◇CAMの株価・金利・為替予測
項 目
日経平均株価
円
TOPIX
10年国債利回り %
為 替 (円/ドル)
2014年12月19日実
17,621.40
1,409.61
0.350
119.17~119.18
15年1月予
16,500~18,500
1,320~1,480
0.300~0.500
116~122
15年2月予
16,500~18,500
1,320~1,480
0.350~0.550
116~122
15年3月予
17,000~19,000
1,360~1,520
0.350~0.550
118~125