マーケットウィークリー・813号 マーケット展望 減速感強まる世界経済、 企業業績の発表で選別色が強まる 2015.1.30 作成者:奥村義弘 世界経済の減速 感強まる 世界経済の減速懸念が強まっている。IMFが1月20日に発表した1 月の世界経済見通しによると、15年、16年の成長見通しは昨年10月の 予測から0.3ポイントずつ下方修正され、それぞれ3.5%、3.7%となっ た。主要国で上方修正されたのは米国のみで、中国、ロシア、ユーロ 圏、日本と広範囲の地域で下方修正された。9月以降の原油価格の急落 が原油輸出国に影響を及ぼしたこと、日本や欧州では経済回復の鈍さ、 低インフレが引き続き懸念されている。 1月 は 欧 州 リ ス ク に左右される展 開 1月の株式市場は、経済の減速感が強まった欧州情勢に敏感な展開が 続いた。その欧州でECBが1月22日の理事会で、国債などの証券を月 額600億ユーロの量的緩和を開始すると発表したことは朗報。デフレリ スクを和らげ、株式市場にポジティブな反応をもたらす結果となった。 注目された25日のギリシャの総選挙では緊縮路線に反対する急進左派 連合(SYRIZA)が大勝利。現状に不満を持つギリシャ人が多い ことを示した。ただ、ギリシャが即EU離脱とはならないとの見方か ら、株式市場はイベント通過で一先ず落ち着きを取り戻しつつある。 ただ、2月末にはギリシャ政府の債務返還期限を控え、不透明感は強い。 投資家の景気・企 業業績への関心 は引き続き高い QUICK社がまとめた2015年1月の株式調査では、最も注目してい る株価変動要因として、12月に高まった「政治・外交」が低下する一 方、「海外株式・債券市場」が大幅に高まり、引き続き「景気・企業 業績」が高い関心を集めている。 原油、為替は投資 行動にも影響 原油価格の下落はリスク要因が先行している感があるが、原油輸入 国・地域はコスト低下による企業業績の上振れ要因となる。日本企業 にとってはメリットが大きい。発表中の10—12月期の業績発表において も、為替の影響とならび原油価格の下落は投資判断に影響しよう。当 面、現在の原油の需給構造に大きな変化はないと仮定すると、鉱業、 非鉄、商社など資源エネルギー型産業にはネガティブな影響が出るの で注意したいところである。逆に需要動向にも配慮しなければならな いが、原油安メリットの大きい、ゴム、空運、海運、陸運などにはプ ラス要因となろう。また、為替敏感株の代表格である自動車、電機、 精密などについては、米国の好調はプラス要素だが、世界的な経済減 速、対ユーロ高などはマイナス要素で、社別で評価が別れよう。 トヨタ、JALな どの決算発表に 注目 個別の上振れ期待のある銘柄として、円安メリット、北米好調とい うキーワードを持つ、2月4日発表予定の トヨタ(7203) 、富士重(7270) に注目する。また、原油安メリットとインバウンドの取り込みからは1 月30日の JAL(9201) 、ANA(9202)にも注目したい。資本財ではロ ボット関連に注目。同じく1月30日のナブテスコ(6268)への関心も高ま ろう。電機では、足もと受注好調な半導体関連などに注目したい。 一方、リスク要因の確認もしておきたい。海外の資源開発へのエク スポージャーを多く持つ企業には要注意。2月4日~6日の総合商社、2 月6日の国際帝石(1605)、2月12日の日揮(1963)のなどが代表的銘柄。 円 安 、 航 空 機 、 鉄 道 な ど ポ ジ テ ィ ブ 要 因 も 多 い が 2月 4日 の 三 菱 重 (7011)、1月29日の川崎重(7012)、2月3日のIHI(7013)など総合重 機各社にとっても事業の収益性のチェックが必要と言えよう。 マーケットウィークリー・813号 景気・企業業績 為替動向 政治・外交 市場心理 90 80 70 60 50 15/1 14/9 14/7 14/11 14/5 14/3 14/1 13/9 13/11 13/7 13/5 13/3 13/1 12/9 12/11 30 12/7 40 (出所)株価変動要因はQUICK株式調査、アンケート調査により指数化 ◇為替動向 ◇NY原油(WTI期近)価格の推移 円/バレル ◇株価変動要因(QUICK社1月株式調査) 12/5 (単位:%) 経済成長率 14年10月調査比 2014 2015予 2015予 2014予 2015予 3.4 3.5 3.7 ▲ 0.3 ▲ 0.3 1.8 2.4 2.4 0.1 0.0 2.4 3.6 3.3 0.5 0.3 0.8 1.2 1.4 ▲ 0.2 ▲ 0.3 1.5 1.3 1.5 ▲ 0.2 ▲ 0.3 ▲ 0.4 0.4 0.8 ▲ 0.5 ▲ 0.5 1.4 2.0 1.8 0.3 0.0 2.6 2.7 2.4 0.0 ▲ 0.1 0.1 0.6 0.8 ▲ 0.2 ▲ 0.1 2.8 3.0 3.2 ▲ 0.2 ▲ 0.1 4.4 4.3 4.7 ▲ 0.6 ▲ 0.5 2.7 2.9 3.1 0.1 ▲ 0.2 0.6 ▲ 3.0 ▲ 1.0 ▲ 3.5 ▲ 2.5 1.5 2.4 4.4 ▲ 1.6 ▲ 0.2 6.5 6.4 6.2 ▲ 0.2 ▲ 0.3 7.4 6.8 6.3 ▲ 0.3 ▲ 0.5 5.8 6.3 6.5 ▲ 0.1 ▲ 0.1 4.5 5.2 5.3 ▲ 0.2 ▲ 0.1 2.8 3.3 3.9 ▲ 0.4 ▲ 0.9 2.5 0.3 1.5 ▲ 1.1 ▲ 0.7 12/3 2013 世界 3.3 先進国・地域 1.3 米国 2.2 ユーロ圏 ▲ 0.5 ドイツ 0.2 イタリア ▲ 1.9 スペイン ▲ 1.2 英国 1.7 日本 1.6 その他 2.2 新興市場及び途上国・地域 4.7 欧州新興国・途上国 2.8 ロシア 1.3 徐くロシア(CIS) 4.3 アジア途上国・新興市場国 6.6 中国 7.8 インド 5.0 ASEAN-5 5.2 中東・北アフリカ等 2.2 ブラジル 1.0 (出所)IMF「2015年1月世界経済見通し改訂版」 12/1 ◇IMFの世界経済見通し(2015年1月調査) 2015.1.30 ドル/バレル 12,000 120 11,000 110 10,000 100 9,000 90 8,000 80 150 125 円/ユーロ(右目盛) 120 145 115 140 110 135 70 105 130 6,000 60 100 5,000 50 4,000 40 円ベースWTI(左軸) 7,000 WTI(右軸) 円/ドル(左目盛) 125 120 95 (出所)Quick Astra Manager より CAM作成 (出所)Quick Astra Manager より CAM作成 ◇2015年2月の主なイベントスケジュール 月 日本 米国 2 06:12月景気動向指数(速報) 09:1月消費者態度指数 09:1月景気ウォッチャー調査 09:1月工作機械受注 12:12月機械受注 17:日銀金融政策決定会合(~18) 18:1月訪日外客数 19:1月貿易統計 その他 02:1月ISM製造業景気指数 02:予算教書 03:1月新車販売台数 04:1月ADP雇用統計 02:1月HSBC中国製造業PMI 06:1月雇用統計 06:12月独鉱工業生産 09:G20財務相・中銀総裁会合(~10:トルコ) 12:1月小売売上高 13:2月ミシガン大消費者信頼感指数 17:2月ニューヨーク連銀景気指数 18:1月住宅着工 18:1月消費者物価 18:1月鉱工業生産 19:2月フィラデルフィア連銀景気指数 12:EU首脳会議(~13) 13:10~12月期GDP 17:2月独ZEW景況感指数 18:中国春節(~24) 20:日銀金融政策決定会合(~21) 27:消費者物価(1月全国、2月都区部) 27:1月労働力調査、家計調査 27:1月鉱工業生産指数 23:1月中古住宅販売 24:12月S&P/ケース・シラー住宅価格指数 24:2月消費者信頼感指数(カンファレンス・ボード) 27:10-12月期GDP改定値 20:1月独ZEW景況感指数 23:2月独ifo景況感指数 28:ギリシャ政府の債務返済延期期限 1月中旬~2月中旬 10-12月期決算発表 1月中旬~2月中旬 10~12月期決算発表 1月下旬~ 通常国会 (出所)各種資料よりCAM作成 ◇CAMの株価・金利・為替予測 項 目 日経平均株価 円 TOPIX 10年国債利回り 為 替 % (円/ドル) 2015年1月26日実 15年2月予 15年3月予 15年4月予 17,468.52 17,000~18,500 17,000~18,500 17,500~19,000 1,402.08 1,360~1,440 1,360~1,480 1,400~1,530 0.225 0.190~0.350 0.200~0.400 0.250~0.450 118.16~118.19 116~122 116~122 116~122
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