マーケット展望 2016年は“申年”、 リスクと対峙し、決断が求められる年

マーケットウィークリー・857号
2016.1.1
マーケット展望 2016年は“申年”、
リスクと対峙し、決断が求められる年
作成者:奥村義弘
金融政策のかじ
取りの難しさが
実 感 さ れ た 2015
年
FOMCでの利上げ開始決定に続き、12月18日の日銀金融政策決定
会合では量的緩和の強化策が発表された。このタイミングでの発表は
意外なものと捉えられた。ただこれまで株式市場にポジティブ反応を
もたらしてきた日銀の政策も、今回は小粒と受け止められ、18日の日
本株市場は大幅下落した。金融政策のかじ取りによる市場コントロー
ルの難しさを実感する年末相場となっている。
2016年は発展・成
熟の年
東洋哲学者・安岡正篤氏の「干支の活学」(プレジデント社刊)を紐
解くと、16年は「丙申(ひのえ・さる)」の年。丙は、一昨年、昨年の
陽気が一段とはっきり発展することを示している。また盛んな陽気が
だんだん内に入ってゆくことを表している。申という文字は、電光の
光る象形文字を示している。物事は伸張するという義に通じる。物事
が進歩発展し、成熟に至るまで延びることを示している。
「アベノミクス」
には政策の具体
化が求められる
日本経済にこれをあてはめると、これまで国民が託した「アベノミ
クス」による構造改革への取り組みが、進むべき方向性を明確に示す
段階にきている。夏には参議院選挙が控えているが、政策が国民支持
につながれば、与党が勝利を収める可能性が高い。一方、これまで効
果を上げてきた日銀の金融緩和については、引き続き経済をサポート
する大きな役割を持つものの、株価、為替に及ぼすサプライズという
点では、限界が見えてきている。金融政策から規制緩和や構造改革の
具体策実行へと軸足を移す必要があろう。
リスクと対峙、明
確な決断が必要
となろう
一方、高まる地政学リスクには、注意を払うべき年となろう。原油
価格の下落もあり、中東の政治的安定が揺らいでいる。米国は大統領
選を迎えて、政策が内向きになる懸念がある。欧州も仏テロの発生を
契機に、排外主義的な動きが強まっている。これまで経済圏を広げて
きたEUの発展にとり障害となる可能性がある。日本では、隣国・中
国との関係改善がテーマとなろう。中国は成長力こそ鈍るが、アジア
諸国との関係を着実に深めよう。日本は、中国周辺諸国との戦略的な
関係の構築と同時に、中国とは対立から共存を視野に関係再構築を急
ぐ必要があろう。
日本株は政策期
待から、年央高の
パターンを想定
2016年の日本株の動きは、7月に参議院選挙が想定され、年前半は、
予算の議論を通じて政策期待が高まりやすい。「一億総活躍社会」「財
政改革・骨太の方針」などの中長期の政策への期待感が、株価をサポ
ートすると考える。参議院選挙前の6月近辺に、日経平均株価で22,000
円程度の高値を付ける、年前半の株高シナリオを想定する。年後半は
17年4月からの消費税引き上げがリスク要因。一方、需給面では、日銀
のETF購入、事業法人の自社株買いなどが持合株の解消売り、GP
IFの資金シフト一巡などのマイナスの要因をカバーできよう。
効率性にフォー
カスしたテーマ
が豊富
株価テーマとしては、少子高齢化が進行する日本経済の構造変化に
対応した、「社会システムの効率性向上」を挙げたい。サービス分野
で活躍が期待されるロボット、輸送の革命につながる自動運転、様々
な産業を融合し進化するIoTなどが有力テーマと考える。
マーケットウィークリー・857号
2016.1.1
(ドル)
20,000
◇NYダウ、景気先行指数、FF金利の推移
18,000
16,000
NYダウ
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
(%)
7
6
5
4
3
2
1
0
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
10/1
09/1
08/1
07/1
05/1
04/1
03/1
02/1
01/1
00/1
99/1
06/1
米国OECD景気先行指数(左軸)
米FF金利(右軸)
104
102
100
98
96
94
92
90
(出所)Quick Astra Manager より CAM作成
◇CAMの株価・金利・為替予測
項 目
日経平均株価
円
TOPIX
10年国債利回り %
為 替 (円/ドル)
2015年12月18日実
18,986.80
1,537.10
0.270
121.79~121.81
15年12月予
18,500~20,000
1,500~1,620
0.250~0.450
118~124
16年1月予
19,000~20,500
1,540~1,660
0.250~0.450
120~124
16年2月予
19,000~20,500
1,540~1,660
0.250~0.450
120~124