(株) 市場経済研究所 2015 年 2 月 16 日 ( 月 ) Market Economy Research Institute Ltd. 月) 週刊レポート マーケットα <第 95 号> (株)市場経済研究所 主幹 岡本 匡房 ギリシャ悲劇と国際商品 国際商品の下落が続いている。主因は米国以外の地域の景気が今一つなのが大き いが、このところ、特に欧州の景気低下が大きく響いている。ウクライナ情勢に加 え、最近、またギリシャ問題がクローズアップされてきた が、問題は簡単には解決 しまい。 CRB指数は3割安 国 際 商 品 は 2014 年 6 月 を ピ ー ク に 大 き く 下 が っ て い る 。C R B 指 数 は 昨 年 6 月 の 平 均 が 308.59 だ っ た が 、 今 年 1 月 に は 221.05 と 3 割 近 く 下 洛 し た 。 原 油 の 値 下 が り が 大 き く 響 い た が 、原 油 、金 、穀 物 、ゴ ム 、非 鉄 な ど も 軒 並 み 値 を 崩 し て い る( 表 参照)。これは世界最大の原材料輸入国中国の経済減速が大きいが、欧州経済の暗 雲も無視できない。 E C B( 欧 州 中 央 銀 行 )が 金 融 緩 和 に 動 い た が 、ギ リ シ ャ で 急 進 左 派 連 合 が 勝 利 、 “ 緊 縮 変 更 ”が 南 欧 諸 国 中 心 に 盛 り 上 が っ て き た 。S & P が ギ リ シ ャ 国 債 を 格 下 げ 、 ドイツが借金の返済猶予に難色を示していることも新たな悲劇を予感させる。ちな み に ギ リ シ ャ の へ の 金 融 支 援 は 10 年 行 こ う 、 合 計 2,400 億 ユ ー ロ に の ぼ る 。 デマゴーグか デマゴーグという言葉がある。これは古代ギリシャで使われ、当初は「民衆の指 導者」を意味していたが、ウソをついて政権をとった者がいて「扇動政治家」を意 味するようになった。ペリクレスという古代ギリシャ最大のアテネ政治家は扇動政 治家によって追放され、アテネはスパルタとの戦いに敗れた。急進左派連合のトッ プ、チブラス党首(=ギリシャ首相)がデマゴーグかどうかは分からないが、「民 衆迎合政治家」の可能性が強い。チプラス首相は公務員の復職、医療の無料化を行 った。このようなバラマキが増えれば、ギリシャは早晩、ユーロ離脱を余儀なくさ れ、南欧諸国も俎上に上ろう。アテネはペルシャ戦に備え、デロス同盟をつくった が、その基金を横領、パルテノン神殿などの建設に使い、同盟国を離反させた。民 族の資質は簡単には変わらないものだ。 だれが仮面俳優か 古代ギリシャの悲劇は仮面劇で、仮面を着けた俳優と舞踏合唱隊の掛け合いで進 行する。何となく、チブラス首相が仮面俳優で、他の諸国が合唱隊に見える。「ギ リシャ悲劇第二幕」が始まった感じもするが、悲劇で終われば世界景気は混乱、国 1 際商品はさらに落下しよう。妥協で幕は下りても、また、上がる可能性が高い。マ ルクスは「歴史は繰り返す、1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」と言って いるが、本物の喜劇になればよいが。 主要国際商品と商品指数の価格推移 2013年平均 2014年平均 2014年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2015年1月 前週末 CRB指数 原油 金 とうもろこし 大豆 コーヒー ゴム 1967年=100 NY NY シカゴ シカゴ NY シンガポール 1バレル 1トロイオンス 1ブッシェル 1ブッシェル 1ポンド 1キロ /ドル /ドル /ドル /ドル /ドル /セント 287.51 288.12 278.76 294.90 303.50 308.63 306.79 308.59 299.48 290.89 283.08 275.60 267.17 242.98 221.05 229.19 98.05 92.91 94.86 100.68 100.51 102.03 101.79 105.15 102.39 96.08 93.03 85.82 75.81 59.29 47.33 52.78 1408.70 1265.80 1244.10 1301.00 1336.40 1298.40 1287.50 1282.20 1310.60 1295.10 1235.10 1221.00 1176.20 1200.20 1252.90 1226.50 5.78 4.15 4.27 4.47 4.82 5.02 4.89 4.47 3.83 3.59 3.35 3.34 3.73 3.96 3.88 3.87 14.07 12.44 12.96 14.21 14.63 14.89 14.86 14.37 12.61 11.78 10.04 9.23 10.32 10.31 10.00 9.91 125.86 177.68 117.62 154.18 188.49 197.02 187.08 171.60 171.14 187.57 185.80 220.40 188.18 174.97 169.24 163.20 279.00 195.51 232.60 214.50 228.10 219.50 207.70 208.70 201.90 185.00 164.40 156.00 163.50 160.30 165.40 185.30 (月 間 平 均 値 、 2015 年 2 月 は 前 週 末 、 日 本 経 済 新 聞 社 調 べ ) 2 《執 筆 者 紹 介 》 岡 本 匡 房 (おかもと まさふさ) 市 場 経 済 研 究 所 取 締 役 主 幹 。 1964 年 慶 応 義 塾 大 学 経 済 学 部 卒 。同 年 日 本 経 済 新 聞 社 入 社 。編 集 局 整 理 部 、商 品 部 記 者 、編 集 局 商 品 部 次 長 、産 業 第 三 部 次 長 、川 崎 支 局 長 、地 方 部 次 長 、同 編 集 委 員 、日 経 産 業 消 費 研 究 所 商 品 研 究 部 長 な どを経 て、市 場 経 済 研 究 所 主 幹 。<主 な著 書 >「国 際 商 品 市 場 の手 引 き」(共 書 、日 本 経 済 新 聞 社 刊 )、「ゴールドハンドブック」(共 書 、紀 伊 国 屋 書 店 刊 )、「商 品 先 物 市 場 と日 本 経 済 」(ゼネ ックス刊 )、「商 品 ファンドと先 物 市 場 」(共 書 、経 済 法 令 研 究 会 刊 )。日 経 産 業 消 費 研 究 所 時 代 に「日 経 ゴールドレポート」「日 経 商 品 情 報 」発 行 人 。 【免責事項】 「週刊レポート マーケットα」(以下、本情報と略記)は、株式会社市場経済研究所 が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。 利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任に おいてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融 商 品 、商 品 価 格 な ど に つ い て の 投 資・購 買 に 関 す る 助 言 や 勧 誘 を 目 的 と し た も の で は あ り ま せん。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。 利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、 複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。ま た、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でな いと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。 本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執 筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をする ことがあります。 3
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