マーケット展望 慎重な計画が多い企業決算は 中長期視点で選別の好機

マーケットウィークリー・824号
マーケット展望 慎重な計画が多い企業決算は
中長期視点で選別の好機
2015.4.17
作成者:奥村義弘
3月 決 算 は 慎 重 な
会社計画の発表
が予想される
4月1日に発表された3月調査の日銀短観は、大企業・製造業で現状判
断DIが12月調査比変わらずの12、先行き判断DIが現状判断DI比2
ポイント低下の10となった。15年度の為替前提が111.81円/ドル、大
企業・全産業で0.7%増収、0.6%経常増益とみる収益計画を見る限り、
今3月決算はかなり慎重な会社計画の公表が予想される。
15 年 度 の ア ナ リ
ス ト 予 想 は 2桁 増
益
一方、証券系調査機関が3月の上旬までにアナリスト予想をまとめた
企業収益見通しでは、増収率は14年度が4.2-5.1%(前回4.2-4.5%)、
15年度1.9-2.5%(同2.8-2.9%)、経常利益増益率は14年度が6.2-9.6%
(同8.9-12.0%)、15年度が13.8-16.5%(同11.2-13.1%)。14年度
は前回予想の12月時点と比較すると原油価格下落の影響で、資源関連
の一部に評価損や減損の計上が相次ぎ、業績を下振れさせた。15年度
は評価損や減損の計上が一巡、原油安メリットの幅広い業界への波及
が予想される。ただし、期初段階では先述の会社計画とアナリスト予
想の格差は大きく、利益確定売りを誘う可能性がある点は注意したい。
電機の好決算が
注目を集めそう
利益貢献度の高さから毎回注目度が高いのが自動車や電機業界であ
る。自動車は円/ドルでの為替メリットは出るものの、新興国通貨、
ユーロ安の影響でマイナス寄与となる企業も多く注意したい。円安・
原油安で北米を中心に先進国市場は堅調だが、市場回復にも一巡感が
出ており競争激化を懸念する声もある。先端自動車の開発など研究開
発負担は重く伸び率は鈍化しそうだ。これに対し、電機業界は構造改
革効果を発揮する企業も多い。良好な販売動向からアップル関連が注
目を集めそうだ。また中国の旺盛な自動化投資から恩恵を受ける企業
もある。その他、車載向け需要の拡大など話題は豊富である。生産の
国内回帰を示す企業も多く注目したいセクターである。
資源関連のネガ
ティブリスクは
消えない
輸出関連で警戒感が拭えないのがプラント関連であろう。資源・エ
ネルギー価格の下落で、グローバルな投資意欲が低下している。案件
の遅延やキャンセル、競争激化で採算低下などネガティブな影響が予
想されるからである。決算発表を機会に、あく抜け感が出ることに期
待したいが時間がかかる印象がある。プラント専業、総合重機、総合
電機への警戒感は継続しよう。
内需はインバウ
ンド需要が広く
浸透
内需には消費関連を中心に業況改善を伝える企業が増えている。特
にインバウンド需要がもたらす影響は大きい。小売り、サービス、鉄
道、空運など幅広い需要押し上げ要因となっている。また株高の影響
は金融関連に波及している。地価もばらつきはあるものの利便性に優
れる都心部では緩やかな上昇が目立つ。社会インフラは更新時期を迎
えている。建設にも大型受注で恩恵を受ける企業が増えている。
中計などにも関
心集まる
企業の経営戦略にも関心が集まっている。 コーポレートガバナン
ス・コードの適用開始で、これまで以上に企業が発表する中期経営計
画や株主還元策などへの関心が高まっている。生保協会の調査では、
投資家の関心が高いROEなど資本効率を重視する指標に対し、企業
側の関心も高まっている。株価にポジティブな影響が期待される。
マーケットウィークリー・824号
2015.4.17
◇大企業の収益計画、設備投資計画 (前年度比・%)
2014年度
2015年度
◇経営目標として重視することが望ましい指標
投資家が要望
修正率
売上高
全産業
2.7
製造業
1.2
非製造業
経常利益
0.9
0.0
3.7
全産業
0.7
0.6
1.5
4.3
0.8
2.7
0.6
製造業
5.1
5.7
1.3
非製造業
3.5
▲ 0.1
0.0
設備投資額 全産業
8.2
▲ 0.5
▲ 1.2
製造業
6.7
▲ 4.4
5.0
非製造業
8.8
1.5
(注)修正率は2014年12月調査との比較
(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」
企業が要望
ROE
93.0% (+2.2pt)
59.1% (+6.8pt)
配当性向
54.7% (+1.8pt)
47.5% (+0.7pt)
総還元性向
43.0% (+5.1pt)
10.4% (+2.4pt)
利益額・利益額の伸び率
38.4% (+0.5pt)
61.0% (+2.2pt)
売上高利益率
32.6% (+5.0pt)
58.7% (▲2.7pt)
ROIC
29.1% (+6.1pt)
7.8% (+1.4pt)
ROA
26.7% (+3.7pt)
28.0% (▲3.1pt)
FCF
25.6% (▲2.0pt)
20.4% (+1.3pt)
(注)投資家の回答の多い項目順、上位8項目、複数回答可、括弧内は対前年
(出所)平成26年度生命保険協会調査
▲ 4.1
「株式価値向上に向けた取り組みに関するアンケート」
◇主要証券各社の企業収益見通し
野村證券254社
13実
大和証券200社
14予
15予
14予
SMBC日興証券250社(除く金融)
15予
14予
15予
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
前回
今回
売上高
12.5
4.5
5.1
2.8
2.5
4.2
4.6
2.9
1.9
4.4
4.2
2.8
1.9
経常益
39.7
8.9
7.4
13.1
16.5
9.7
6.2
11.6
14.3
12.0
9.6
11.2
13.8
純利益
79.8
10.7
10.6
13.9
16.9
13.9
7.6
10.6
17.1
14.5
13.7
11.0
13.0
円/ドル
100.2
105.5
109.7
108.0
118.0
106.5
108.9
110.0
115.0
109.0
108.9
115.0
115.0
円/ユーロ
134.4
137.9
139.7
137.0
138.0
139.5
137.7
140.0
130.0
142.0
139.0
145.0
135.0
99.0
95.0
80.8
90.0
55.0
90.0
81.0
80.0
50.0
90.6
83.6
82.5
60.0
原油
(注1)原油価格の前提は、単位がドル/バレルで、野村證券、大和証券はWTI、SMBC日興証券がドバイ原油
(注2)野村證券の前回は14年11月25日、今回は15年2月22日。大和証券の前回は14年11月25日、今回は15年2月25日。SMBC日興証券の前回は
14年12月2日、今回は15年3月3日発表。
(出所)各社の公表資料を基にCAM作成
◇ROEからみた銘柄選択
対 象:JPX400対象銘柄
選択基準:直近実績のROE10%以上、今・来期のアナリストコンセンサスの純利益増益率10%以上
の条件を満たす銘柄を、予想配当利回りの高い順にランキング
(単位:%、円、倍)
直近実績
純利益増益率
株価
予想
予想配当
順位
銘柄
コード
決算期
ROE
今期
来期
(4/13)
PER
利回り
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
ローソン
トヨタ
パーク24
KDDI
Drシーラボ
川重
イオンディラ
ニフコ
富士重
住友販売
ヤマハ発
不二越
沢井製薬
OSG
SCSK
科研薬
花王
日産化
リゾートトラ
特殊陶
2651
7203
4666
9433
4924
7012
9787
7988
7270
8870
7272
6474
4555
6136
9719
4521
4452
4021
4681
5334
15/2
14/3
14/10
14/3
14/7
14/3
15/2
14/3
14/3
14/3
14/12
14/11
14/3
14/11
14/3
14/3
14/12
14/3
14/3
14/3
13.0
13.7
18.2
13.0
21.4
11.0
12.0
10.1
30.4
12.1
16.2
11.8
15.0
11.7
16.5
14.5
12.4
12.7
12.2
11.5
(注1)アナリストコンセンサスは4月13日現在のQuick社集計
(注2)予想PER、予想配当利回りは今期日経予想
21
20
13
34
14
44
10
27
27
13
21
27
14
20
17
25
14
11
40
26
10
12
15
12
11
21
17
18
30
11
14
14
17
11
13
45
35
12
12
23
8,340
8,248
2,512
2,839
4,495
613
3,210
4,445
3,994.5
3,385
3,015
693
6,970
2,577
3,630
4,635
6,122
2,433
3,340
3,155
23.7
12.2
31.7
16.8
20.7
18.3
17.9
20.4
12.3
18.3
13.9
14.3
19.0
21.7
17.1
32.6
35.3
21.6
29.4
17.6
2.94
2.43
1.99
1.88
1.82
1.63
1.62
1.58
1.55
1.48
1.46
1.44
1.44
1.40
1.38
1.25
1.24
1.23
1.20
1.14