議事録〜声明文や議長会見の内容に沿う(2015/1/8作成)

*グローバル投資環境 No.850*
ご参考資料
髙木証券投資情報部
米国FOMC(12/16~17)議事録~声明文や議長会見の内容に沿う
ものであり、サプライズはなし
2015年1月8日作成
米国の中央銀行にあたるFRBは7日、昨年12月16日から17日にかけて開催した連邦公開
市場委員会(FOMC)の議事録を公表した。
当該FOMCにおける最大のポイントは、利上げの時期に関するフォワードガイダンスを
下表の通り変更したことであった。具体的には、「0~0.25%という現在のFF金利のレン
ジがなお適切であることを再確認」するとともに、「金融政策の正常化の開始には忍耐
強くなれる(can be patient)」とした上で、このガイダンスは「資産買入の終了を受け
た10月の声明文と矛盾しない」と述べており、7月29~30日のFOMCにおいてセントルイ
ス連銀のブラード総裁が削除を主張して以降、FOMCのたびに争点となっていた「相当程
度の期間(considerable time)」という表現を表面上は残しつつ、実質的に削除している。
同時に、前回FOMCの声明文で採用された「今後の経済指標によっては、FF金利のレンジ
の引き上げが現在の想定よりも早くなる可能性及び遅くなる可能性」を引き続き明記し
ており、FRBの政策決定は時間軸に依存するものではないことを改めて示している。
このフォワードガイ
10/28~29
12/16~17
0~0.25%という現在のFF金利のレンジが
ダンスの変更について
議事録では、「ほとん 0~0.25%という現在のFF金利のレンジが なお適切であることを再確認する。どの程
度の期間、このレンジを維持するかを決定
どのメンバーが、10月 なお適切であることを再確認する。どの程 する際には、雇用の最大化と2%のインフ
レに向けた進展を、現実と予想の双方に
に資産買入が終了する 度の期間、このレンジを維持するかを決定
する際には、雇用の最大化と2%のインフ
とともに、経済が我々 レに向けた進展を、現実と予想の双方に ついて再評価する。現在の評価に基づけ
ば金融政策の正常化の開始には忍耐強く
の目標に向けてさらに ついて再評価するが、とりわけインフレ見 なれる。このガイダンスは「インフレ見通し
前進したという視点か 通しが長期目標の2%を下回るとともに、 が長期目標の2%を下回るとともに、長期
長期の期待インフレが低位で安定してい
らは、フォワードガイ る場合には、今月の資産買入終了を受け の期待インフレが低位で安定している場
ダンスをアップデート た後も相当程度の期間にわたって現在の 合には、今月の資産買入終了を受けた後
も相当程度の期間 にわたって現在のFF金
することが適切である FF金利を維持することが適切であるが、今 利を維持することが適切である」という、資
と結論付けた。ほとん 後の情報が現在見込んでいるよりも速い 産買入の終了を受けた10月の声明文と矛
ペースでの雇用とインフレの目標に向けた
どのメンバーは『金融 収斂を示唆した場合には、FF金利のレン 盾しない。今後の情報が現在見込んでい
政策の正常化の開始に ジの引き上げが現在の想定よりも早まる るよりも速いペースでの雇用とインフレの
目標に向けた収斂を示唆した場合には、
は忍耐強くなれる』と 一方、収斂が見通しよりもゆっくりであるこ FF金利のレンジの引き上げが現在の想定
とが判明した場合にはターゲットレンジの
記述することで、金融 引き上げは現在の想定よりも遅くなること よりも早まる一方、収斂が見通しよりも
ゆっくりであることが判明した場合にはター
政策正常化の開始と資 が見込まれる
ゲットレンジの引き上げは現在の想定より
産買入の終了を関連付
も遅くなることが見込まれる
けていた従来のガイダ
ンスに比べて、今後得られる情報に対する政策調整をより柔軟に行うことを可能にす
るとの見方で合意した」と述べている。さらに、「多くのメンバーは『忍耐強く』は、
少なくとも今後2回の会合において(at least the next couple of meetings)金融政策の
正常化を開始しない」ことを意味すると考えている」と記述しているが、これは当日
の会合終了後の会見でのイエレン議長の説明と一致する。一方、何人かのメンバーは、
「こうした文言の置き換えは、最初の利上げに対する市場の予想を、2015年半ばとい
う狭いレンジに集中させるリスク」ことを指摘した点も議事録は明らかにしている。
経済活動全般の現状に関する声明文の表現は次ページの表の通りであり、「緩やか
に拡大した」で過去2回のFOMC声明文から変化がなく、雇用に関する「労働市場環境は
(中略)さらに幾分改善した。活用されていない労働力が徐々に減少していることを
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最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。
髙木証券投資情報部
幅広い指標が示している」という前回の表現
から「幾分」と「徐々に」が削除されて、一
段と前向きな見方が示されていたほか、イン
フレの先行きについては、 7月のFOMC声明文
以降、3会合連続で使われた「2%を根強く下
回って推移する可能性は今年の初め以来いく
ぶん減じたと判断する」 から「労働市場の
改善とエネルギー価格、その他の一時的要因
の消失により、インフレは2%に向けて徐々
に上昇するだろう」に見直された点が声明文
段階での目立った変化だった。また、イエレ
ン議長の会見ではロシア経済の混乱について
「米国全体に占める対ロシアの貿易量は1%
に満たず、米国の銀行のロシアへのエクス
ポージャーはごく少ない」として、米国に与
える影響は小さいとの見方を示していた。
ご参考資料
《経済の現状認識》
全般
労働市場
家計消費
設備投資
住宅市場
インフレ
10/28~29
経済活動は緩やかに拡大した
労働市場環境は堅調な雇用増とより低い
失業率を伴ってさらに幾分改善した。活用
されていない労働力が徐々に減少してい
ることを幅広い指標が示している
緩やかに増加した
拡大した
回復は引き続き緩慢だ
12/16~17
経済活動は緩やかに拡大した
労働市場環境は堅調な雇用増とより低い
失業率を伴ってさらに改善した。活用され
ていない労働力の減少が続いていること
を幅広い指標が示している
緩やかに増加した
拡大した
回復は引き続き緩慢だ
エネルギー価格の下落を一部反映してイ
インフレは我々の長期目標を下回って推
ンフレは我々の長期目標を下回って推移
移した。市場ベースのインフレ指標はやや
した。市場ベースのインフレ指標はやや低
低下したが、調査に基づく長期の期待イン
下したが、調査に基づく長期の期待インフ
フレは安定している
レは安定している
《景気と物価の先行き》
景気
10/28~29
12/16~17
適切な緩和政策により、経済活動は緩や 適切な緩和政策により、経済活動は緩や
かなペースで拡大するとともに、労働市場 かなペースで拡大するとともに、労働市場
関連の指標とインフレは我々の責務に一 関連の指標は我々の責務に一致する方
致する方向に向かうだろう。
向に向かうだろう。
短期的なインフレはより低いエネルギー価 労働市場のさらなる改善とエネルギー価
格やその他の要因によって抑制されそう 格、その他の一時的効果の消失により、イ
だが、インフレが2%を根強く下回って推移 ンフレは徐々に2%に向けて上昇するだろ
する可能性は今年の初め以来いくぶん減 う。我々はインフレの動向を引き続き注視
じたと判断する
する。
これらの点について議事録では、「メン
バーは総じて、最近のエネルギー価格の下落
のネットの影響は、経済活動や雇用に対して
ポジティブだと考えているが、彼らの多くは 物価
海外経済情勢のさらなる悪化は、経済活動を
減速させると考えている」と述べている。ま
た、「鉱工業生産指数が示す通り、生産活動は活発であり、いくつかの地区からの情報
は、資本投資が上向いていることを示しているが、継続的な石油価格の下落は掘削活動
を減速させることが見込まれる」ことに言及している。また、インフレについては「メ
ンバーは総じて、短期的なインフレは、石油価格の下落や米ドル高の影響でさらに低下
すると考えているが、ほとんどのメンバーはこれらの影響は一時的なものだと考えてい
る」と述べている。
今回公表された議事録については、声明文や会合後の議長会見の内容に概ね沿うもの
であり、サプライズはないと考えている。先に述べた「少なくとも今後2回の会合にお
《2015年のFOMC開催日程》
いて金融政策の正常化を開始しない」というFRBの見解は、
開催日
議長会見
1/27~28
無し
裏を返せば、早ければ4月28~29日のFOMCでの利上げ開始の
3/17~18
有り
4/28~29
無し
可能性を示唆するが、このFOMCではイエレン議長の会見が開
6/16~17
有り
かれず、大幅な政策変更は行いにくいことを考えると、最短
7/28~29
無し
9/16~17
有り
でその次の6月16~17日のFOMC以降での利上げ開始が現時点
10/27~28
無し
でのメインシナリオであると思われる。(文責:勇崎 聡)
12/15~16
有り
(出所:FRBより髙木証券作成)
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