議事録〜利上げ開始の時期を巡って見方分かれる(2015/4/9作成)

*グローバル投資環境
No.953*
ご参考資料
髙木証券投資情報部
米国FOMC(3/17~18)議事録~利上げ開始の時期巡って見方分かれる
2015年4月9日作成
FRBは8日、去る3月17日から18日にかけて開催したFOMCの議事録を公表した。当該FOMC
では、FF金利の誘導目標を0~0.25%で据え置いたが、会合直後にリリースされた声明文等
での注目点は以下の通りであり、当レポートではこれらのポイントに関して議事録で新たに
明らかになったことをまとめてみたい。
・ 景気全般に関する判断を、「堅調に(solid pace)拡大した」から 「経済活動はやや
緩やかになった(moderated somewhat)」に下方修正。また、従来は声明文では言及し
ていなかった輸出について「成長が弱まった」との記述を追加。
・ 声明文と同時に公表された「FOMCメンバーによる経済見通し」では、2015~2017年の成
長率、2015年及び2016年のインフレ率の予想をそれぞれ下方修正するとともに、各年末
時点において「適切とみられるFF金利の水準」も下方にシフト、2015年末の予想の中央
値は12月時点の1.125%から0.625%に下方修正。
・ フォワードガイダンスから「忍耐強く(can be patient)」という文言を削除、「 FF
金利の目標レンジの引き上げは4月のFOMCではありそうにない。労働市場のさらなる改
善とインフレが中期的に2%の目標に向かうことに対する確信が得られれば、FF金利の
目標レンジの引き上げが適切になる」に変更するとともに、フォワードガイダンスの変
更が「我々が最初の目標レンジの引き上げのタイミングを決定したことを意味しない」
ことを強調。
《経済の現状認識》
1/27~28
3/17~18
景気全般に対する判断引き下げの背景につ 全般
経済活動は堅調に拡大した
経済成長はやや緩やかになった
いて議事録は、「3月のFOMCに備えて用意さ
労働市場環境は強い雇用増とより低い失 労働市場環境は強い雇用増とより低い失
業率を伴ってさらに改善した。活用されて 業率を伴ってさらに改善した。活用されて
労働市場
れたスタッフの経済予想によれば、今年上
いない労働力の減少が続いていることを いない労働力の減少が続いていることを
幅広い指標が示している
幅広い指標が示している
期のGDP成長率は、主として家計支出、純輸
緩やかに増加した。最近のエネルギー価
緩やかに増加した。エネルギー価格の低
出及び住宅投資の見通しの下方への見直し
家計消費
格の低下が家計の購買力を押し上げてい
下が家計の購買力を押し上げている
る
により、1月時点の見通しを下回った。また、 設備投資
拡大した
拡大した
中期的な予想も大半がよりドル高な見通し
住宅市場
回復は引き続き緩慢だ
回復は引き続き緩慢だ
輸出
成長が弱まった
によって下方修正された」と述べている。
エネルギー価格の下落を一部反映してイ エネルギー価格の下落を一部反映してイ
ンフレは我々の長期目標を下回ってさらに ンフレは我々の長期目標を下回ってさらに
ドル高についてはさらに、「複数の参加者
インフレ
低下した。市場ベースのインフレ指標は最 低下した。市場ベースのインフレ指標は引
は、前回会合後のさらなるドルの上昇が米
近相当に低下したが、調査に基づく長期 き続き低いが、調査に基づく長期の期待イ
の期待インフレは安定している
ンフレはなお安定している
国の純輸出を当面抑制するとの見方を示し
《景気と物価の先行き》
た」と述べているほか、「少数の参加者は、
1/27~28
3/17~18
適切な緩和政策により、経済活動は緩や 適切な緩和政策により、経済活動は緩や
最近のドル高は海外の多くの中央銀行によ
かなペースで拡大するとともに、労働市場 かなペースで拡大するとともに、労働市場
景気
関連の指標は引き続き我々の責務に一 関連の指標は引き続き我々の責務に一
る緩和的な政策アクションに起因すること
致する方向に向かうだろう。
致する方向に向かうだろう。
を示唆したが、他の参加者はそうしたアク
インフレは短期的にはさらなる低下が見込 インフレは短期的には現在の低水準近辺
まれるが、労働市場のさらなる改善とエネ が見込まれるが、労働市場のさらなる改
ションはまた、海外の成長見通しを強め、
ルギー価格、その他の一時的効果の消失 善とエネルギー価格、その他の一時的効
物価
それは米国の輸出を下支えするだろうと発
により、インフレは徐々に2%に向けて上 果の消失により、インフレは徐々に2%に
昇するだろう。我々はインフレの動向を引 向けて上昇するだろう。我々はインフレの
言した」との記述もあり、FRBが他の国の中
き続き注視する。
動向を引き続き注視する。
央銀行の政策に注意を払っていることが窺
《FOMCメンバーの米経済見通し》
2015
2016
2017
Longer run
える。
この会合における最大の注目点であった
フォワードガイダンスの見直しについては、
「ほぼ全ての参加者が、 「忍耐強く」を削
除することに賛意を示した」ことを明らか
にしており、この文言変更は、 「一連のFF
GDP
失業率
PCEインフレ
Core CPE
今回予想
12月予想
今回予想
12月予想
今回予想
12月予想
今回予想
12月予想
2.3
2.6
5.0
5.2
0.6
1.0
1.3
1.5
~
~
~
~
~
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~
~
2.7
3.0
5.2
5.3
0.8
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4.9
5.0
1.7
1.7
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2.7
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2.0
1.9
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2.0
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1.8
1.8
1.8
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~
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~
~
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~
~
~
2.4
2.5
5.1
5.3
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
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~
~
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2.0
2.0
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2.3
5.2
5.5
1/2
最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。
髙木証券投資情報部
金利誘導目標の調整を会合ごとに行うこと 《FF金利の適切とみられる水準》
12/16~17FOMC
を可能にするものだ」と述べている。但し、
2014年 2015年 2016年 2017年
17
2
この会合における政策決定の評決自体は全 0.125
0.250
0.375
1
会一致であったが、「1名は、インフレが
0.500
2
目標の2%を十分に下回っている状況下で、 0.625
0.750
会合ごとのアプローチを表明することは、 0.875
4
金融環境のタイト化を招くという点から難 1.000
1.125
3
1
色を示した」ことも明らかになった。また、 1.250
1.375
フォワードガイダンスの変更を受けて、利 1.500
1.625
2
上げの開始時期についても活発な議論がな 1.750
4
2
されている。議事録は「複数の参加者は、 1.875
2.000
1
2.125
3
経済指標と見通しは6月会合で政策の正常
2.250
1
化を開始することを正当化すると判断して 2.375
2.500
1
いるが、他の参加者は、エネルギー価格の 2.625
1
1
2.750
下落とドル高が短期的にインフレの重しに 2.875
1
1
なる状況は、今年の遅くまでは利上げを始 3.000
3.125
2
2
めることが適切ではないことを示唆してい 3.250
3.375
1
2
3.500
ると考えているほか、2名の参加者は利上
3.625
1
2
3.750
3
げを2016年まで先送りすることを示唆し
3.875
1
1
た」ことを明らかにしており、参加者の間 4.000
1
1
4.125
1
で判断が分かれていることが読み取れる。 4.250
2
ただ、これらの議論は全て3月中旬時点
でのものであり、先日発表された3月の雇
用者数が1年3ヶ月ぶりの低い伸びにとど
まったことで状況は多少変化していると思
われ、例えば、雇用統計発表前の4月2日に
は「6月から9月は利上げを検討するのに適
切な時期だ」と述べていたFRBメンバーの
中でも「タカ派」の急先鋒であるアトラン
タ連銀のロックハート総裁も、統計発表後
の7日には「利上げの時期は6月ではなく7
月か9月に傾くだろう」と述べている。今
月28日から29日に開かれる次回のFOMCに向
けては、先の雇用の鈍化について、それが
一過性のものか否かを中心に、どのような
評価がなされるかがポイントになろうが、
少なくとも6月の利上げ開始の可能性を意
識させる内容にはなりにくいと思われる。
ご参考資料
今回
2015年 2016年 2017年
2
長期
1
長期
1
7
3
1
1
2
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6
3
1
1
1
1
3
2
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4
1
2
1
3
8
7
1
3
2
2
1
1
2
6
2
1
4.375
4.500
《フォワードガイダンス》
1/27~28
利上げ時期
3/17~18
0~0.25%という現在のFF金利のレンジが
0~0.25%という現在のFF金利のレンジが
なお適切であることを再確認する。どの程
なお適切であることを再確認する。どの程
度の期間、このレンジを維持するかを決定
度の期間、このレンジを維持するかを決定
する際には、雇用の最大化と2%のインフ
する際には、雇用の最大化と2%のインフ
レに向けた進展を、現実と予想の双方に
レに向けた進展を、現実と予想の双方に
ついて再評価する。評価に際しては、労働
ついて再評価する。評価に際しては、労働
環境に関する指標やインフレ圧力とインフ
環境に関する指標やインフレ圧力とインフ
レ期待、金融情勢と国際情勢の変化を含
レ期待、金融情勢と国際情勢の変化を含
む幅広い情報に注意を払う。前回の声明
む幅広い情報に注意を払う。現在の評価
文に沿って、FF金利の目標レンジの引き
に基づけば金融政策の正常化の開始に
上げは4月のFOMCではありそうにない。
は忍耐強くなれる。今後の情報が現在見
我々は、労働市場のさらなる改善とインフ
込んでいるよりも速いペースでの雇用とイ
レが中期的に2%の目標に向かうことに対
ンフレの目標に向けた収斂を示唆した場
する合理的な確信が得られれば、FF金利
合には、FF金利のレンジの引き上げが現
の目標レンジの引き上げが適切になると
在の想定よりも早まる一方、収斂が見通し
考えている。このフォワードガイダンスの
よりもゆっくりであることが判明した場合に
変更は、我々が最初の目標レンジの引き
はターゲットレンジの引き上げは現在の想
上げのタイミングを決定したことを意味しな
定よりも遅くなることが見込まれる
い。
(文責:勇崎
聡)
(出所:FRBより髙木証券作成)
2/2
当資料は投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資の最終決定はご自身でなさるようお願いいたします。当資料は信頼できると思われる各種
データに基づいて作成されていますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。株式への投資は、価格の変動や発行者の信用状況の悪化等により
投資元本を割り込むおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。また、信
用取引ではその損失額が差し入れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。国内株式取引の委託手数料は、約定代金に対して最大(税込)1.19664%【2,700
円に満たない場合は2,700円(現物取引買付および信用取引売買)】になります。株式を募集等により取得する場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。
外国株式を委託取引により購入する場合は、所定の委託手数料をいただきます。外国株式の委託手数料は国や市場により異なります。外国株式を店頭取引によ
り購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。債券をご購入いただく場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。(経過利子をお支払いいただく
場合があります)。債券は、市場の金利水準の変動等により価格が変動しますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行体の信用状況や財務状況によっ
ても価格が変動し、利金や償還金の支払遅延や不履行となる場合があります。また、倒産等により元本損失が生じる場合があります。投資信託は、主に国内外の
株式や債券を投資対象としているため、基準価額は組み入れた株式や債券の動き、為替相場の変動等の影響により上下しますので、これにより投資元本を割り
込むおそれがあります。投資信託はファンドごとに設定された購入時手数料をご負担いただきます。また、投資信託を保有期間中に間接的にご負担いただく費用
として、ファンドごとに設定された運用管理費(信託報酬)のほか、運用成績に応じて成功報酬をご負担いただく場合があります。外国株式や外国債券、外国投資
信託への投資は、上記に加え為替相場の変動等により損失が生じる場合があります。また、通貨発行国の国情の変化により投資元本割れや途中売却ができなく
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