を削除も、FRBメンバーの経済見通しで、早期利上げの思惑は後退(2015

*グローバル投資環境
米国FOMC速報~
No.932*
ご参考資料
髙木証券投資情報部
「忍耐強く」を削除も、FRBメンバーの経済見通
しで、早期利上げの思惑は後退
2015年3月19日作成
米国の中央銀行にあたるFRBは17日から18日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)を
開催した。日本時間の19日午前3時に公表された声明文の要点は以下の通りである。
・FFレートの誘導目標を0~0.25%で据え置き。
・景気全般に関する判断を、「堅調に(solid pace)拡大した」から 「経済活動はや
や緩やかになった(moderated somewhat)」に下方修正。また、従来は声明文では
言及していなかった輸出について「成長が弱まった」との記述を追加。
・インフレ見通しについて「短期的には現在の低水準近辺が見込まれる」とした上で、
「原油安の影響の消失とともに、徐々に2%に向けて上昇」との見方は変わらず。
・フォワードガイダンスから「忍耐強く(can be patient)」という文言を削除、
「 FF金利の目標レンジの引き上げは4月のFOMCではありそうにない」に変更すると
ともに、フォワードガイダンスの変更が「我々が最初の目標レンジの引き上げのタ
イミングを決定したことを意味しない」ことを強調。
景気全般に対する認識は1月
27~28日に開かれた前回FOMC
声明文の「経済活動は堅調に
拡大した」から「経済成長は
やや緩やかになった」に下方
修正された。
去る6日に発表された2月の
雇用統計では、雇用者数が力
強い伸びを示したことを受け
て、為替市場で米ドル高が加
速したが、先月24日と25日に
行われた議会証言でイエレン
議長が「労働参加率は多くの
人が考えるトレンドよりも低
く、賃金の伸びは緩慢だ」と
指摘していた「雇用の質」に
ついては顕著な改善がみられ
なかったことから、労働市場
に関する声明文の表現も注目
されていたが、前回FOMCの
「強い雇用増とより低い失業
率を伴ってさらに改善した。
活用されていない労働力の減
少が続いていることを幅広い
指標が示している」が維持さ
れた。また、家計消費が「緩
やかに増加」し、設備投資も
《経済の現状認識》
全般
労働市場
家計消費
設備投資
住宅市場
輸出
1/27~28
経済活動は堅調に拡大した
労働市場環境は強い雇用増とより低い失
業率を伴ってさらに改善した。活用されて
いない労働力の減少が続いていることを
幅広い指標が示している
緩やかに増加した。最近のエネルギー価
格の低下が家計の購買力を押し上げてい
る
拡大した
回復は引き続き緩慢だ
今回
経済成長はやや緩やかになった
労働市場環境は強い雇用増とより低い失
業率を伴ってさらに改善した。活用されて
いない労働力の減少が続いていることを
幅広い指標が示している
緩やかに増加した。エネルギー価格の低
下が家計の購買力を押し上げている
拡大した
回復は引き続き緩慢だ
成長が弱まった
エネルギー価格の下落を一部反映してイ エネルギー価格の下落を一部反映してイ
ンフレは我々の長期目標を下回ってさらに ンフレは我々の長期目標を下回ってさらに
インフレ
低下した。市場ベースのインフレ指標は最 低下した。市場ベースのインフレ指標は引
近相当に低下したが、調査に基づく長期 き続き低いが、調査に基づく長期の期待イ
の期待インフレは安定している
ンフレはなお安定している
《景気と物価の先行き》
1/27~28
今回
適切な緩和政策により、経済活動は緩や 適切な緩和政策により、経済活動は緩や
かなペースで拡大するとともに、労働市場 かなペースで拡大するとともに、労働市場
景気
関連の指標は引き続き我々の責務に一 関連の指標は引き続き我々の責務に一
致する方向に向かうだろう。
致する方向に向かうだろう。
インフレは短期的にはさらなる低下が見込 インフレは短期的には現在の低水準近辺
まれるが、労働市場のさらなる改善とエネ が見込まれるが、労働市場のさらなる改
ルギー価格、その他の一時的効果の消失 善とエネルギー価格、その他の一時的効
物価
により、インフレは徐々に2%に向けて上 果の消失により、インフレは徐々に2%に
昇するだろう。我々はインフレの動向を引 向けて上昇するだろう。我々はインフレの
き続き注視する。
動向を引き続き注視する。
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最終頁の「ご注意いただきたいこと」を必ずお読み下さい。
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「拡大した」という前向きな見方は前回と変わらないとともに、住宅市場は「引き続
き緩慢だ」という表現も前回同様だが、これまで声明文では言及してこなかった輸出
に関して「成長が弱まった」という表現を盛り込んだ。また、インフレについては、
「短期的には現在の低水準近辺が見込まれる」とした上で、「労働市場のさらなる改
善と、エネルギー価格その他の一時的効果の消失により、インフレは徐々に2%に向
けて上昇するだろう」との見方を維持している。
《フォワードガイダンス》
ところで、今回の
1/27~28
今回
FOMCにおける最大の
0~0.25%という現在のFF金利のレンジが
争点であったフォ
0~0.25%という現在のFF金利のレンジが
なお適切であることを再確認する。どの程
なお適切であることを再確認する。どの程
ワードガイダンスに
度の期間、このレンジを維持するかを決定
度の期間、このレンジを維持するかを決定
ついては、「金融政
する際には、雇用の最大化と2%のインフ
する際には、雇用の最大化と2%のインフ
策の正常化には忍耐
レに向けた進展を、現実と予想の双方に
レに向けた進展を、現実と予想の双方に
強くなれる(can be
ついて再評価する。評価に際しては、労働
ついて再評価する。評価に際しては、労働
patient)」から「FF
環境に関する指標やインフレ圧力とインフ
環境に関する指標やインフレ圧力とインフ
金利の目標レンジの
レ期待、金融情勢と国際情勢の変化を含
レ期待、金融情勢と国際情勢の変化を含
引き上げは4月のFOMC
む幅広い情報に注意を払う。前回の声明
む幅広い情報に注意を払う。現在の評価
ではありそうにな
利上げ時期
文に沿って、FF金利の目標レンジの引き
に基づけば金融政策の正常化の開始に
上げは4月のFOMCではありそうにない。
い」という極めて直
は忍耐強くなれる。今後の情報が現在見
我々は、労働市場のさらなる改善とインフ
接的な表現に変更し
込んでいるよりも速いペースでの雇用とイ
レが中期的に2%の目標に向かうことに対
た上で、「労働市場
ンフレの目標に向けた収斂を示唆した場
する合理的な確信が得られれば、FF金利
のさらなる改善とイ
合には、FF金利のレンジの引き上げが現
の目標レンジの引き上げが適切になると
ンフレが中期的に2%
在の想定よりも早まる一方、収斂が見通し
考えている。このフォワードガイダンスの
の目標に向かうこと
よりもゆっくりであることが判明した場合に
変更は、我々が最初の目標レンジの引き
に対する確信が得ら
はターゲットレンジの引き上げは現在の想
上げのタイミングを決定したことを意味しな
定よりも遅くなることが見込まれる
れれば、FF金利の目
い。
標レンジの引き上げ
が適切になる」と述
べている。さらに、「このフォワードガイダンスの変更は、我々が最初の目標レンジ
の引き上げのタイミングを決定したことを意味しない」との記述を加えているが、こ
のことによって、フォワードガイダンスを従来の「相当程度の期間(considerable
time)にわたって現在のFF金利を維持することが適切である」から「忍耐強くなれ
る」に変更した12月FOMC後(但し、「相当程度の期間」は12月のFOMCでは形式的に残
された上で、1月のFOMCで完全に削除された)の会見でイエレン議長が、「『忍耐強
く』はすくなくとも今後2回の会合において金融政策の正常化を開始しないことを意味
する」と述べていたにもかかわらず、先の議会証言では利上げの前にフォワードガイ
ダンスを変更することを明言するとともに、フォワードガイダンスの修正を「今後数
回の会合で必ず利上げを実施すること解釈されるべきではない」とも述べていたこと
と整合性をとっているといえるだろう。
また、今回のFOMCではメンバーによる経済見通しが声明文と同時に公表されたが、
12月のFOMCで発表された前回の見通しでは、2.6~3.0%としていた2015年及び2.5~
3.0%としていた2016年をいずれも2.3~2.7%に、また2017年についても12月予想の
2.3~2.5%から2.0~2.4%に下方修正した。一方、失業率については、2015年を12月
時点の5.2~5.3%から5.0~5.2%へ、2016年を5.0~5.2%から4.9~5.1%に、さらに
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2017年についても4.9~5.3%から4.8~5.2%に引き下げている。
また、PCEインフレについては、2015年を12月時点の1.0~1.6%から0.6~0.8%に大
幅に引き下げたが、2016年については1.7~2.0%から1.7~1.9%へとレンジの上限の
みの小幅な下方修正にとどめたほか、2017年については1.8~2.0%で変更していない。
さらに、経済見通しでは、
FOMCメンバーによるFF金利の見
通しも示され、17人のメンバー
中15人が2015年中の利上げ開始
を見込んでいることは12月時点
と変わりはないが、2015年から
2017年の各々の年末時点での適
切とみられるFF金利の水準につ
いては全体的に下方にシフトし
ており、2015年の予想の平均値
は前回の1.125%から0.625%に
下方修正されている。
今回のFOMC声明文では、フォ
ワードガイダンスの変更によっ
て6月FOMCでの利上げ開始を可
能にしたものの、GDP及びイン
フレ見通しの下方修正や、FOMC
メンバーによる金利見通しの引
き下げを考えれば、2月の雇用
統計発表以降高まっていた6月
の利上げ開始への思惑はむしろ
後退したと考えられる。但し、
FRBは利上げ開始の時期は景気
次第であるというスタンスを一
段と鮮明にしているため、今後
発表される雇用や物価を中心と
する経済指標に対して、マー
ケットは敏感に反応しよう。
(文責:勇崎 聡)
《FOMCメンバーの米経済見通し》
2015
2016
2017
今回予想 2.3 ~ 2.7 2.3 ~ 2.7 2.0 ~
GDP
12月予想 2.6 ~ 3.0 2.5 ~ 3.0 2.3 ~
今回予想 5.0 ~ 5.2 4.9 ~ 5.1 4.8 ~
失業率
12月予想 5.2 ~ 5.3 5.0 ~ 5.2 4.9 ~
今回予想 0.6 ~ 0.8 1.7 ~ 1.9 1.8 ~
PCEインフレ
12月予想 1.0 ~ 1.6 1.7 ~ 2.0 1.8 ~
今回予想 1.3 ~ 1.4 1.5 ~ 1.9 1.8 ~
Core CPE
12月予想 1.5 ~ 1.8 1.7 ~ 2.0 1.8 ~
《利上げを開始する適切なタイミング》
2015年 2016年
今回
15
2
12月
15
2
2.4
2.5
5.1
5.3
2.0
2.0
2.0
2.0
Longer run
2.0 ~ 2.3
2.0 ~ 2.3
5.0 ~ 5.2
5.2 ~ 5.5
2.0
2.0
《FF金利の適切とみられる水準》
0.125
0.250
0.375
0.500
0.625
0.750
0.875
1.000
1.125
1.250
1.375
1.500
1.625
1.750
1.875
2.000
2.125
2.250
2.375
2.500
2.625
2.750
2.875
3.000
3.125
3.250
3.375
3.500
3.625
3.750
3.875
4.000
4.125
4.250
4.375
4.500
12/16~17FOMC
2014年 2015年 2016年 2017年
17
2
今回
2015年 2016年 2017年
2
長期
1
1
2
7
4
3
3
1
1
長期
1
1
2
2
4
1
2
6
3
1
1
3
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
2
4
1
2
1
3
1
1
2
1
3
1
1
1
2
3
1
1
1
2
8
3
7
1
2
2
1
1
2
6
2
1
(出所:FRBより髙木証券作成)
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外国株式を委託取引により購入する場合は、所定の委託手数料をいただきます。外国株式の委託手数料は国や市場により異なります。外国株式を店頭取引によ
り購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。債券をご購入いただく場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。(経過利子をお支払いいただく
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