情報数理 IIB 演習問題解答 木村泰紀∗ 2014 年 10 月 30 日出題 問題 1. 次の距離空間 X は完備でない. X のコーシー列 {xn } で極限を X にもたないものの例を挙げよ. (i) X = [0, 1[, (ii) X = Q, (iii) X = R \ Q = {r ∈ R : r は無理数 }. 解答 (i) 例えば, 各 n ∈ N に対して xn = 1 − 1 n とすると, {xn } は X = [0, 1[ のコーシー列で R では 1 に収束するが, X には極限をもたない. つまり X では 収束しない. (ii) 例えば, 各 n ∈ N に対して xn = n ∑ 1 k! k=1 とすると, {xn } は X = Q のコーシー列で R では e に収束するが, e ∈ / X なので X には極限をもたない. つ まり X では収束しない. (iii) 例えば, 各 n ∈ N に対して √ xn = 2 n とすると, {xn } は X = R \ Q のコーシー列で R では 0 に収束するが, 0 ∈ / X なので X には極限をもたない. つまり X では収束しない. 問題 2. {xn } を距離空間 X の点列とするとき, 次の条件は互いに同値であることを示せ. (i) {xn } はコーシー列である, (ii) 0 に収束する実数列 {αn } が存在して, m ≥ n をみたす m, n ∈ N に対して d(xm , xn ) ≤ αn が成り立つ. 解答 まず (i) を仮定し (ii) が成り立つことを示す. 各 n ∈ N に対して αn = sup d(xm , xn ) m≥n と定義すると, 明らかに d(xm , xn ) ≤ αn である. また, {xn } はコーシー列なので, 任意の > 0 に対してあ る n0 ∈ N が存在して, m, n ≥ n0 となる任意の m, n に対して d(xm , xn ) < ∗ 2 東邦大学理学部情報科学科. http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/kimura/yasunori/ 1 が成り立つ. この式は m ≥ n ≥ n0 をみたす任意の m, n で成り立つので, m に関して両辺の上極限をとると = , 2 2 m≥n sup d(xm , xn ) ≤ sup m≥n つまり αn ≤ /2 < が成り立つ. αn ≥ 0 であることから, |αn − 0| < となり, これは数列 {αn } が 0 に収束することを示してい る. よって (ii) が得られた. 次に (ii) を仮定し, (i) が成り立つことを示す. (ii) より, 0 に収束する実数列 {αn } が存在して, m ≥ n をみ たす m, n ∈ N に対して d(xm , xn ) ≤ αn が成り立つ. ここで, {αn } が 0 に収束することから, 任意の > 0 に対してある n0 ∈ N が存在して, n ≥ n0 をみたす n ∈ N に対して αn < が成り立つ. このとき m, n ≥ n0 ならば d(xm , xn ) ≤ αn < となり, これは {xn } がコーシー列であることをあらわしている. よって (i) が得られた. 2
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