数論アルゴリズム

法𝑛の擬楕円曲線
6.20 川原未鈴
4.4.3 法𝑛の擬楕円曲線
≪復習≫ 楕円曲線
𝑝 ∈ ℙ>3 で 𝐹 = 𝔽𝑝 = ℤ/𝑝とする。
𝐸≔𝐸𝑎,𝑏 : 𝑌 2 = 𝑋 3 + 𝑎𝑋 + 𝑏
(4.13)
𝐸の判別式
⊿ ≔ ⊿ 𝐸 ≔ −16 4𝑎3 + 27𝑏 2 ≠ 0 (4.14)と仮定する.
あるいは、(4.13)を射影化して
𝐸: 𝑌 2 𝑍 = 𝑋 3 + 𝑎𝑋𝑍 2 + 𝑏𝑍 3 (4.15)を考えてもよい。
(4.14)である𝑎, 𝑏 ∈ 𝐹に対して、𝐸の𝐹有理点全体𝐸(𝐹)を考え
ると、
𝐸(𝐹)に加群の構造が入る。具体的には
・𝑃 ∈ 𝐸 𝐹 に対して𝑃 + 𝒪 = 𝒪 + 𝑃 = 𝑃と決める.
・𝑃 = 𝑥𝑃 , 𝑦𝑃 , 𝑄 = (𝑥𝑄 , 𝑦𝑄 ) ∈ 𝐸 𝐹 ∖{𝒪}に対して
もし𝑄 = 𝑥𝑃 , −𝑦𝑃 ならば𝑃 + 𝑄 = 𝒪と決め
さもなくば𝑃 + 𝑄 = (𝑥, 𝑦) ∈ 𝐸 𝐹 ∖{𝒪}を
3𝑥𝑃 2 +𝑎
2𝑦𝑃
𝑠≔
𝑦𝑃 −𝑦𝑄
𝑥𝑃 −𝑥𝑄
2
𝑠は𝑃と𝑄を結ん
だ直線の傾き
𝑄=𝑃
(𝑄 ≠ 𝑃)
楕円曲線のPRIMESやIFPへの応用には、𝑛に付随する
群も考えなければいけない。
しかし法𝑛で(4.13)や(4.15)の解となる点に対して
演算を考えようとすると、𝑠の分母がℤ/𝑛で非零元だが
可逆元でないときは、群構造が入らない。
ex. 𝑃, 𝑄 ∈𝐸(ℤ/𝑛)とすると
復習より
2𝑦𝑃 ∈ 𝐸(ℤ/𝑛)となるが、 2𝑦𝑃 の
𝑛が素数 ⇒ 群構造が入る 逆元が存在するかわからないので、
𝑠が計算できず、行き詰まってしま
う。
これの対偶をとると
群構造が入らない ⇒ 𝑛が合成数
なので、うまく群構造が入らないときはすでに𝑛は合
成数であると判定できたことになる。
その上、分母と𝑛のGCDは𝑛の非自明な約数となる。
そこで、 ℤ/𝑛上でも加法を考える.
標数5以上の有限素体
即ち
𝑛 ∈ ℤ>1 , 𝑎, 𝑏 ∈ ℤ,
gcd(𝑛, 6(4𝑎3 + 27𝑏 2 ))= 1
(4.17)
に対して、法𝑛の擬楕円曲線とは集合
𝐸𝑎,𝑏 ≔ 𝐸𝑎,𝑏;𝑛 ≔ {𝒪}∪
𝑥, 𝑦 ∈ ℤ/𝑛
2
𝑦 2 = 𝑥 3 + 𝑎𝑥 + 𝑏} (4.18)
の点に対する形式的加法を楕円曲線の通りに決めたものとす
る。
𝑃 ∈ 𝐸𝑎,𝑏;𝑛 に対して、その自然な𝑘 ∈ ℤ倍を考え 𝑘 𝑃 と表すこと
にする。もちろん𝑛 ∈ ℙなら𝐸𝑎,𝑏;𝑛 = 𝐸𝑎,𝑏 𝔽𝑛 となる。
定理4.4.2
𝑚, 𝑘 ∈ ℕ, 4 𝑛 + 1 2 ≤ 𝑚|𝑘, 𝑇 ≔ 𝑝 ∈ ℙ 𝑝|𝑚 とする。
このとき𝑛 ∈ ℙの十分条件は、
或 𝑃 ∈ 𝐸𝑎,𝑏;𝑛 で
𝑘/𝑝 𝑃 ∈ 𝐸𝑎,𝑏;𝑛 𝑝 ∈ 1 ∪ 𝑇 が計算できて
𝑘 𝑃 = 𝒪,
𝑘/𝑝 𝑃 ≠ 𝒪 𝑝 ∈ 𝑇
証明
条件を充す𝑃は、任意の𝑞 ∈ ℙ, 𝑞|𝑛, を法として考えると、
𝑃∈ 𝐸𝑎,𝑏 (𝔽𝑞 )
𝑘 𝑃 = 𝒪, 𝑚|𝑘 より 𝛼𝑚 𝑃 = 𝒪 となる最小の 𝛼 ∈ ℤ が存在する。
∀𝑝|𝛼𝑚のとき
𝑝|𝛼 → 𝛼𝑚/𝑝 𝑃 ≠ 𝒪
𝑝|𝑚 → 𝛼𝑚/𝑝 𝑃 ≠ 𝒪
(∵ 𝛼𝑚/𝑝 𝑃 = 𝒪 ⇒ 𝑘/𝑝 𝑃 = 𝒪となり条
件と矛盾)
となるので𝑃の位数は𝛼𝑚(𝑚の倍数)となる。
定理4.4.1より# 𝐸𝑎,𝑏 (𝔽𝑞 )<2 𝑞 + 𝑞 + 1
仮定と𝛼𝑚|# 𝐸𝑎,𝑏 (𝔽𝑞 )より
2
( 𝑛 + 1) ≤ 𝑚|# 𝐸𝑎,𝑏 (𝔽𝑞 )<( 𝑞 + 1)2
4
∴(1.4)から
𝑛=𝑞∈ℙ
𝑛<𝑞