( ) ∫ dzzf

応用数学II
岩谷素顕
9-1
今日の内容
積分路が単一閉曲線になる周回積分について
 コーシーの積分定理
 正則関数の積分について
 コーシーの積分公式
 グルサーの公式
9-2
周回積分
積分路を単一閉曲線で取る
 f x dx  0
a
実積分の場合は必ず積分は 0
となる
a
複素積分の場合は?
 f z dz  ??
C
C
積分路をCと取った周回積分を表す
普通に考えたら
0 となるはず・・・・
9-3
1
これから学ぶ周回積分の解き方
積分路内は
全て正則

C
f z 
dz
z 
D
コーシーの積分公式
f z 
D
グルサーの公式
n
極
複数個の極が
存在する
9-4
C
α
 z    dz
C
C
コーシーの積分定理
留数定理
C
極
D
これらの公式を使って積分を解いていきます
コーシーの積分定理
コーシーの積分定理
関数f(z)が、単一閉曲線Cで囲まれる領域Dで正
則でC上で連続であるとき、公式
 f z dz  0
C
が成り立つ
C
D
9-5
証明 f(z)=u(x,y)+iv(x,y)としたとき、u,vが偏導関数を持
つ場合においてコーシーの積分定理が成り立つことを証
明する。
 f z dz   u  iv dx  idy    udx  vdy   i  udy  vdx 
C
C
C
グリーンの公式
閉曲線Cにそったf(z)= u(x,y)+iv(x,y)の
周回積分はCが囲む領域D上の2重積分
に書き直すことができる。
 f z dz  i 
C
D
 u v   v u  
    i   dxdy
 x y   x y  
C
C
D
9-6
2
グリーンの公式よりCの内部をAとすると、
 udx  vdy   i  udy  vdx 
C
C
 u v 
 u v 
     dxdy  i    dxdy
A y
A
x 

 x y 
となる。f(z)はCおよびAで正則だから、そこでコーシー・
リーマンの微分方程式が成り立ち
u v

x y
u
v

y
x
であるから、  f  z dz  0 が成り立つ。
9-7
C
次に、n箇所正則でない部分を
含んだ領域Cについて考える。
この時、正則でないn箇所を囲
んだC1、C2・・・Cnを持ち出した
ならば 領域Cの積分値が領域
ならば、領域Cの積分値が領域
C1、C2・・・Cnの積分値の総和に
なる。すなわち
D
C1
C2
Cn
C
 f z dz   f z dz   f z dz       f z dz
C
C1
C2
Cn
9-8
証明 n=1の時は、CとC1を曲線1、1’を曲線で結び、D内
の2つの単一閉曲線L1、L1’を考えると、コーシーの
積分定理より、
 f z dz  0
 f z dz  0
以上より  f  z dz   f  z dz  0
L1
L1
1
L1
L1
C
C
L1
1、 1’の部分は反対の方向に2回積分
されて打ち消されるから結局、

C1
1’
1’
1
L1’
f  z dz   f  z dz
C1
一般の場合も、n=1の時と同様に考えれば
9-9
 f z dz   f z dz   f z dz       f z dz
C
C1
C2
Cn
となる。
3
例題/演習 右下図のような原点中心の半径1の円を積分路
とするとき、下記の積分の値はどうなるかを求めよ。
(1)
y
i
 zdz
C1
C
関数zは全ての領域において正則な
ので積分値は0となる。
(2)
z
256
C
-1
1
O
x
-i
dz
関数zは全ての領域において正則なので積分値は0と
なる。
9-10
演習 右下図のような原点中心の半径1の円を積分路とする
とき、下記の積分の値はどうなるかを求めよ。
(3)

C
y
i
1
dz
z2
-1
関数zはz=2において正則ではな
い。しかし、積分路領域において
正則なので積分値は0となる
正則なので積分値は0となる。
(4)
C1
1
O
x
-i
 sin zdz
C
関数zは全ての領域において正則なので積分
値は0となる。
9-11
例題 下左図のような領域において、

C
2z
dz
2
z 1
を計算せよ。

C
2z
dz
z 1
2
y
C
C
C1
-1
1
x
-1
C2
1
x
は z=±1を除く全領域で正則である
は、z=±1を除く全領域で正則である。
よって、右図に示すような積分路を考えれば以下のよう
に式変形が可能である。

C
9-12
2z
2z
2z
dz   2 dz   2 dz
C1 z  1
C2 z  1
z 1
2
4
2z
2z
1
1



となるので、
z 2  1  z  1 z  1 z  1 z  1
また
2z
2z
dz   2 dz  
C z 1
C1 z  1
C2
1
1
dz  
dz  

C1 z  1
C1 z  1
C2
1
1
dz  
dz

C1 z  1
C2 z  1

2
2z
dz
z 1
1
1
dz  
dz
C
2 z 1
z 1
2
9-13
dz
1
 ireit
dz はC1: z=reit-1(r:円の半径)とすると、
z 1
dt

C1
よって、 C
1
2
2
1
1
2
dz  
 ire it dt   idt  it 0  2i
it
0
0
re  1  1
z 1
同様に、

C2
dz
1
 ireit
+1( :円の半径)とすると、
円の半径)とすると
d はC2: z=reit+1(r
dz
dt
z 1
よって、 C
2
以上より
2
2
1
1
2
dz  
 ire it dt   idt  it 0  2i
it
0
0
re  1  1
z 1

C
9-14
2z
1
1
dz  
dz  
dz  4i
C
C
1 z 1
2 z 1
z 1
2
正則関数の積分について
コーシーの積分定理を使う事によって、複素積分の積分路
は、その関数が正則な領域内で任意の形に変形できる事が
示される。
積分路の変形について
2点P,Qを結ぶ曲線C1、C2にそったf(z)の積分 C f z dz
と C f  z dz を考える。曲線C1、C2で囲まれる領域D
内でf(z)が正則ならば、コ
が正則ならば、コーシーの積分定理により、
シ の積分定理により、
2
1
 f z dz  
C1  C2
C
f  z dz   f  z dz   f  z dz  0
C1
C2
となるので次の式が成り立つ。
 f z dz   f z dz
C1
C2
このことから、f(z)が正則な領域内
で積分路をC1からC2に変形できる
事がわかる。
Q
C
C2
P
D
C1
9-15
5
周回積分の変形について
f(z)が2つの閉曲線C,C’で囲まれた領
域D内で正則ならば、Cにそったf(z)の
周回積分  f  z dz は、CとC’に挟ま
C
れた領域内の任意の閉曲線C1、
C2、・・・にそった周回積分に等しい。
すなわち次の式が成り立つ。
C1
C’
C2
C
D
d   f  z dz
d   f  z dz
d       f z dz
d 0
 f z dz
C
C1
C
C2
これらのことから、複素積分を求めるためには、必ずしも与
えられた積分路にそって積分する必要はなく、被積分関数
が正則な領域内で積分が最も簡単に実行できるように積分
路を適当に変形して、積分を実行すれば良いことが分かる。
9-16
不定積分について
領域Dで定義され、そこで正則な関
数f(z)を考えてみる。D内の2点z0と
z1をDに含まれる曲線Cで結ぶと、C
z1
に沿う積分
の値は、

z0
z0とz1だけで決まる
D
f ( z )dz
もし積分の始点z0を固定したと
すれば 上式はz1だけの関数と
すれば、上式は
z
なる。そこで、これを
z1
C
z0
曲線Cの形にはよらない
F  z    f ( )d
z0
と書いたとき、関数F(z)のことをf(z)の不定積分または原
始関数という。このとき、F(z)はDで正則であり、
dF z 
 f  z  が成り立つ。
dz
9-17
この式の証明
C f z dz は領域Dにおいてf(z)が正則であるためz0とzの
みで定まり、積分路Cに無関係である。したがってこの積
分路を下記のように書き換えると
F  z    f ( )d
z
D
z
z0
F(z)はDで定義された関数になる。zは
領域Dの点であるので、zを中心として
半径の十分小さい円がDに含まれてい
ると考える。|z|をこの半径より十分に
小さくとって、zとz+zを線分で結ぶと、
F  z  z   F  z   
C 
z  z
また、 z
z+z
z0
f ( )d   f ( )d   f ( )d  
f ( z ) d  f ( z ) 
F  z  z   F  z   f  z z 

C
z  z
z

z  z
z
d  f  z z
f ( ) d 
z  z
z

z  z
z
f ( )d
なので
f ( z ) d 
z  z
  f ( )  f ( z )d
z
9-18
6
f(z)は連続だから、任意の正数e>0に対して、|z|を十分小に
とれば、上の任意の点zに対し、
f ( )  f ( z )  e
または線分であるから、その長さは|z|である。
f z dz   f z  dz   f  z  dz  ML
C
t1
また、 C
より、下記の関係が成り立つ。
t2
z  z
  f ( )  f ( z )d
z
F z  z   F  z 
 f z   e
z
|z|が十分に小さければ
微分の定義式
よって、
lim
z  0
 e z
F  z  z   F  z 
 f z 
z
9-19
次に、一般に正則な関数f(z)が存在したとき、G(z)をf(z)の不定積分だ
とした場合、D内の任意の2点a、bに対して、

b
a
f ( z )dz  G z   G b   G a 
b
a
が成り立つ。この証明としては、
F z    f ( )d とおくと、 F z   f z  G  z   f  z  なので、
a
z
F z   G ( z )   0 とおける。したがって、F z   G ( z )  C ((C:定数)
F  z    f ( )d  G ( z )  C
z
a
ここで、z=aとおくと F  z  
上の式は

z
a
f ( )d は0となるので、
0  G ( a )  C  C  G a 
F  z    f ( )d  G ( z )  G a 
z
よって、
a
9-20
F  z    f ( )d  G ( z )  G a 
z
a
z=bとおけば、

b
a
f ( z )dz  G  z   G b   G a  となる。
b
a
この公式は、実関数の微積分の基本定理に相当する。実
この公式は
実関数の微積分の基本定理に相当する 実
関数のときはf(z)の連続性で、この公式が得られたが、複
素関数では、積分が積分路に関係するから不定積分が
確定しない。しかし、D領域において正則な場合には、
コーシーの積分定理により不定積分が成立し、上記の式
が成り立つ。
9-21
7
コーシーの積分公式
コーシーの積分定理とは『ある領域内で関数が正
則ならば、関数の積分値は0』であるが、『ある領域
内で関数が正則』という条件があれば、次のような
積分公式が得られる。
9-22
コーシーの積分公式
f(z) は領域D で正則である。D 内に単一
閉曲線C がありC の内部は領域D に含ま
れているとする。任意の点がC の内部
にあれば次の等式が成り立つ。
α
C
D
1
f z 
f ( ) 
dz

C
2i z  
f z 

dz  2i  f ( )
C z 
9-23
ただし、積分はCが囲む領域に対して、正の向きに行う
ものとする。
証明 を中心とし、半径rの正方向の閉曲線C1をCの内部に
書くと zf z はC,C1の周およびそれで囲まれた領域で正則
だからコーシーの積分定理より

C
f z 
f z 
dz  
dz
C1 z  
z 
1
f z 
1
f z 
よって、
dz 
dz


C
C
1
2i z  
2i z  
f  z   f    f  
1

dz
z 
2i C1
f  z   f  
f  
1
1

dz 
dz
z 
2i C1
2i C1 z  
f  z   f  
1
9-24
dz  f  
z 
2i C1
8
この時、f(z)はz=で連続だから、任意の正数e>0に対して、r
を十分小さくとればz∈C1に対し、|f(z)-f()|<eとできる。
1
f  z   f  
1
dz 
2i C1
z 
2

C1
したがって、r→0のとき
一方
f  z   f  
e
e
dz 
dz 
 2r  e
z 
2r C1
2r
f  z   f  
1
dz  0
z 
2i C1
1
f z 
dz , f   はrに無関係である。したがって、

C
2i z  
f ( ) 
1
f z 
dz

C
2i z  
が成り立つ。
9-25
コーシーの積分公式の使い方
コーシーの積分公式の使い方としては3つのステップを
考えると使いやすい
(A) 領域C の中から正則にならない原因の点(『分母=0』
となる点) を探す
(B) (A)の項を除外して,正則な関数
を除外
則な 数f(z) を引っ張り出す
を
す
(C) 『公式のa ⇒ (A) の点』・『公式のf(z) ⇒ (B) のf(z)』とし
て公式に代入
f z 
1
dz
2i C z  
f z 
dz  2i  f ( )
z 
f ( ) 

9-26
C
演習 次の積分の値を求めよ。ただし、各積分路は正方向と
する。
(1)

C
z3
dz C={z| |z|=4}
z i
y

C
z3
dz  2i  i 3  2
z i
4i
C
とし、=iとして、コーシー
の積分公式を用いると、
f(z)=z3
O
x
4
9-27
9
演習 次の積分の値を求めよ。ただし、各積分路は正方向と
する。
z
 7  z z  i dz
z
f z  
2
(2)
2
C

C={z| |z|=2}

7  z とすると、この関数はCおよびその内
部で正則である。=iiとしてコ
としてコーシーの積分公式より
シ の積分公式より
y
z
1
2i

dz
 7  z  z  i 
C
2
 2
i

 2i 


2
7i
8
4
C
O
x
2
9-28
今日のまとめ
 コーシーの積分定理
 コーシーの積分公式
9-29
10