W1 ∪ W2 = {x ∈ Rn | x ∈ W1

線形数学 II B 組–1
講義の補足:
(1) 板書にミスがあったようです。
W1 ∪ W2 = {x ∈ Rn | x ∈ W1 または y ∈ W2 }
と書いてしまったようですが,
W1 ∪ W2 = {x ∈ Rn | x ∈ W1 または x ∈ W2 }
の間違いです。もちろん書き間違えなど有り得ますから,気になっ
たところは,どんどん指摘してください。
質問:
(1) 「一次従属 ⇒ 一次独立でない ⇒ ベクトルの組 {a1 , a2 , . . . , ar } の
中で,あるベクトル a1 は,その他のベクトル {a2 , . . . , ar } のスカ
ラー倍の和で表わすことが出来る。」という考え方で,宿題 1 の 2
を解いたんですけど大丈夫ですか?
(解説):まず,言葉使いを少し正します。「一次従属 ⇒ 一次独立で
ない」→「一次従属 ⇔ 一次独立でない」
(定義です)。
「あるベクト
ル a1 」→ あるベクトルと言っているのに特定の a1 を持ってくるの
は,おかしいことになっています。「スカラー倍の和で表わす」→
一次結合という言葉を使っていきましょう。使えば覚えます。
次の主張は正しいです。
命題 1. a1 , a2 , . . . , ar ∈ Rn とし,{a1 , a2 , . . . , ar } は一次従属であ
るとする。そのとき,ある ai が存在して,ai は,その他のベクト
ル a1 , a2 , . . . , ai−1 , ai+1 , . . . , ar の一次結合で表わされる。
証明. {a1 , a2 , . . . , ar } は一次従属であるから,どれか一つは 0 でな
い実数 x1 , . . . , xr が存在して
x1 a1 + x2 a2 + . . . + xr ar = 0
が成り立つ。ここで,xi ̸= 0 とする。そのとき,
∑ xj
ai =
(− aj )
xi
j̸=i
1
∑
が成り立つ。ここで, j̸=i は i 以外の 1 ≤ j ≤ r についての和をと
ることを意味している。よって,ai は,その他のベクトル
a1 , a2 , . . . , ai−1 , ai+1 , . . . , ar
の一次結合で表わされた。
ここで,{a1 , . . . , ar } が一次独立であることの否定は
r
∑
xj aj = 0 ⇒ ∃i ∈ {1, . . . , r} s.t. xi ̸= 0
j=1
であることに注意してください。全部 0 でなければいけないという
ことの否定は,一つでも 0 であればよいということです。
質問に書いてくれた,
「{a1 , a2 , . . . , ar } が一次従属であれば,a1 は
a2 , . . . , ar の一次結合で表わされる。」という主張は間違っていま
す。例えば,
 
 
 
1
0
0
 
 
 
a1 = 0 , a2 = 1 , a3 = −1
0
1
−1
は反例のひとつになります。
結果,宿題 1 の2については,どのベクトルの係数が 0 になるか分
からないので,この方針で行くのは(出来ないわけではないですが)
ややこしいでしょう。
(2) 宿題1の1 (2) は行基本変形をせずに連立方程式をといてもいいん
ですか?
(解説):もちろんいいです。問題に依りますが,解の非存在を言うの
に階段行列を使わないと,議論が難しくなってしまうことがありま
す。問題に依って簡単な方法を選択するのは,とても良いことです。
(3) 宿題1の 1(3) は (1) で c が a, b の一次結合で表わされることを利用
して証明できますか?
(解説):c が a, b の一次結合で表わされているので,非自明な一次
関係式が作れます。一次独立という性質は,自明な一次関係式しか
ないということですから,
「c が a, b の一次結合で表わされている」
ということが分かった時点で,{a, b, c} は一次従属であるというこ
とが分かります。
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講義の感想 [() の中は私からのコメント]
(1) 高校で習った,
「一次独立」と一緒なのかまだよくわかっていない。
高校の時はベクトルで文章を覚えて使っているだけだったので,深
くまで理解しておけばよかったと思います。
(高校の時は感覚的な説明で済ませてしまう場合もあります。今回
が良い機会になるでしょうから,しっかり理解して,高校の内容を
見返すと新たな発見があるかもしれません。)
(2) 久しぶりの線形で,復習の大切さを痛感しました。今回の授業では
「一次独立」について,高校で言葉として習った時よりはステップ
アップできたと思います。しかしまだ正確に結びついてはいないの
で,復習や授業で意味をきちんと理解していきたいです。
(仕方のないことなのですが,時間が経つと忘れますよね。一度,理
解できたとことは,すぐに思い出せると思いますから,復習して授
業についてきてもらえると嬉しいです。)
(3) 後期は教科書の章末問題などを家庭での勉強として積極的にやって
いきたい!
!
(いいですね!新しい気持ちで,がんばってください。)
自分で勉強してみたことを,宿題の裏に書いてくれたら見ますと言いま
したが,講義で証明なしに扱った定理 1.6 と定理 1.8 の証明を与えてくれ
ている人が数人いました。素晴らしいことだと思っています。
参考文献
[1] 村上正康,佐藤恒雄,野澤宗平,稲葉尚志,
「教養の線形代数」,培風
館,1977 年.
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