Kwansei Gakuin University Repository Title 二次元アフィントーリック多様体の特異点解消について Author(s) 安枝, 優介 Citation 関西学院大学 Issue Date URL http://hdl.handle.net/10236/12327 Right http://kgur.kawansei.ac.jp/dspace 2013 年度 修士論文要旨 二次元アフィントーリック多様体の特異点解消について 関西学院大学大学院 理工学研究科 数理科学専攻 増田研究室 安枝 優介 1. 研究の概要 2 次元アフィントーリック多様体の非特異化と, 対応する 2 次元扇の非特異化との対応を明らかにすることで 特異点解消を考察する. 2. 2 次元の扇 以下, N = Z2 , NR = R2 とする. MR を NR の双対ベクトル空間とし, <, >: MR × NR → R を標準的な双線 形写像とする. また, R0 := {c ≥ 0|c ∈ R}, Z0 := {c ≥ 0|c ∈ Z} とする. 定義 1. C ⊂ NR が有限個の元 x1 , x2 , · · · , xn ∈ NR により C = R0 x1 + R0 x2 + · · · + R0 xn と表されるとき, この C を錐体という. 定義 2. L(C) := C ∩ (−C) と定義し, L(C) = 0 のとき, C を強凸な錐体という. 定義 3. 錐体 C の部分集合 C ′ が C の面であるとは, u ∈ MR に対し, C ⊂ (u ≥ 0) := {x ∈ NR ; < u, x >≥ 0} かつ C ′ = C ∩ {x ∈ NR ; < u, x >= 0} となる u が存在することと定義する. 定義 4. NR の強凸な錐体 π の面全体からなる集合を F (π) と書き, これを錐体 π によるアフィン扇という. 定義 5. NR の強凸な錐体の集合 X が (1)X は零錐体 {0} を含む. (2) アフィン扇の和集合となる. (3)X のどの二つの錐体も分離可能である. を満たすとき, NR の扇という. 定義 6. N のある基底の部分集合で生成された錐体を非特異錐体と定義する. また, 非特異錐体だけからなる 扇を非特異扇と定義する. X を NR の扇とする. X の細分 X ′ が非特異扇であるとき, X ′ を X の非特異化という. 定理 7. X を NR の有限扇とすると, 特異錐体の重心細分という細分の繰り返しで X を非特異化できる. 3. 2 次元扇の非特異化 定義 8. 元 n ∈ N が NR において原点と n を結ぶ線分の両端以外に N の点が存在しないとき原始的という. σ を NR の 2 次元錐体とする. アフィン扇 F (σ) の非特異化について解説する. 錐体の強凸性より, 原始 的な元 z0 , z1 ∈ N が存在して σ = R0 z0 + R0 z1 となる. N の基底 {u0 , u1 } を u0 = z0 となるように とる. m, n ∈ Z によって, z1 = mu0 + nu1 と表される. z1 が原始的なので gcd{m, n} = 1 である. 1 n < 0 ならば, u1 を −u1 とすることで, n > 0 となるようにできる. N の基底 {w0 , w1 } が w0 = z0 , z1 = m′ w0 + n′ w1 (m′ , n′ ∈ Z, gcd{m′ , n′ } = 1, n′ > 0) を満たしているとする. このとき, { w0 = u0 w1 = au0 + u1 (∃a ∈ Z) となる. z0 = w0 , z1 = (m − an)w0 + nw1 となり, 0 < m − an ≤ n を満たす a が一意的に存在する. ( その a を用いて, q = n − (m − an) とすれば, z1 = (n − q)w0 + nw1 となる. 1 ) ( n−q ) , を新 0 n しい基底として取れる. 連分数展開 nq = [a1 ; a2 ; · · · ; ai−1 ] から, Z2 の基底 {vi−1 , vi }, {vi , vi+1 } に関する ( ) ( ) 1 n−q 等式 vi−1 + vi+1 = ai vi を満たす a1 , · · · , ai−1 が定まる. v0 = , vi = ととれば, 等式 0 n vi−1 + vi+1 = ai vi から, 各 v1 , · · · , vi−1 が定まる. 4. 2 次元アフィントーリック多様体の特異点解消 複素空間 Cn の部分集合 S に対して, I(S) = {f ∈ C[x1 , · · · , xn ]; f (v) = 0, ∀v ∈ S} と定義すれば, I(S) は多項式環 C[x1 , · · · , xn ] のイデアルとなる. また, C[x1 , · · · , xn ] の部分集合 E に対して, V (E) = {v ∈ Cn ; f (v) = 0, ∀f ∈ E} と定義する. V ⊂ Cn が代数的集合であるとは, ある有限集合 E = {f1 , f2 , · · · , fn } に ついて V = V (E) であるときをいう. 定義 9. V が代数的集合であり, I(V ) が素イデアルとなるとき, この V をアフィン代数多様体という. NR の強凸な錐体 σ に対して, N の双対加群 M の部分半群 S(σ) := M ∩ σ ∨ を考える. この σ が {n1 , · · · , nd } で生成されているとすると, S(σ) = {m ∈ M ; < m, ni >≥ 0, i = 1, · · · , d} である. 定義 10. S(σ) による半群環を C[S(σ)] とする. C[S(σ)] を座標環とするアフィン代数多様体 V を錐体 σ に よって定まるアフィントーリック多様体という. これを Uσ で表す. 定義 11. XC = ∪ σ∈X Uσ と定義し, 扇 X から定まるトーリック多様体という. 定義 12. V をアフィン代数多様体とする. V が特異点を持たないとき, この V を非特異代数多様体という. 扇 X とトーリック多様体 XC について次の定理が得られる. 定理 13. X を有限扇としたとき, トーリック多様体 XC が非特異代数多様体になるための必要十分条件は扇 X が非特異扇であることである. 参考文献 [1] 石田正典, トーリック多様体入門-扇の代数幾何-, 朝倉書店, 2000 [2] 吉永悦男・福井敏純・泉脩藏, 特異点の数理 3, 解析関数と特異点, 共立出版, 2002 [3] 宮西正宜, 数学選書 10, 代数幾何学, 裳華房, 1990 2
© Copyright 2024 ExpyDoc