同じ理屈で,次に 1 に代入するものは x = 5 です. 次の条件 これにより P(0) = 0 2 2 P(52 + 1) = {P(5)}2 + 1 P(x + 1) = {P(x)} + 1 - P(26) = 52 + 1 を満たす整式 P(x) をすべて求めよ. - P(26) = 26 《解法の流れ》 を得ます. まず,「整式」という言葉についてですが,前回 さて,そろそろ 扱った「多項式」とほぼ同じと捉えていただいて大 P(x) = x 丈夫です.つまり,「x の自然数乗と定数の積の項」 ではないだろうか?という気配が漂ってきました と「定数項」から成る式のことです. ね.ただ,問題は,それの証明方法です.この流 ただ,その前提を踏まえたところで,やや条件不 れで確認できるのは,次でしたら 1 に x = 26 を代 足と感じるのは否めないでしょう.何はともあれス 入 す る こ と に よ り 得 ら れ る P(262 + 1) = P(677) で タートですが,とりあえず す.かなり飛び飛びの値ですよね.途中で飛ばし 2 て し ま っ て い る P(3),P(4),P(6) な ど は 確 認 の し 2 P(x + 1) = {P(x)} + 1 から漸化式的なものは連想できますか?この式を変 ようがないです.無論,x として整数だけでなく, 形していっても特に有効な何かは得られそうにない P(3.1),P(3.12) なども考える必要があります.つま ので,P(0) = 0 を利用して,順次代入していきます. り,帰納法(?)的なことを考えたところで,所詮 つまり は P(x + 1) = {P(x)} + 1 …… 1 2 P(0) → P(1) → P(2) → P(5) → P(26) 2 に対して,まず x = 0 を代入すると → P(677) → P(6772 + 1) →・・・ P(02 + 1) = {P(0)}2 + 1 という,特別な数字を代入したときでしか確認でき - P(1) = 0 + 1 ないわけです.ちなみに,ここでいう「特別な数字」 - P(1) = 1 というのは 2 となります.この結果を利用することを考えて,次 a1 = 0 に 1 に x = 1 を代入すると an+1 = an2 + 1 P(12 + 1) = {P(1)}2 + 1 で定義される数列 {an} のことです.{an} を初項 a1 - P(2) = 1 + 1 から順に書き並べると 2 - P(2) = 2 0,1,2,5,26,677,6772 + 1,…… となります.さらに 1 に x = 2 を代入すると となります. P(2 + 1) = {P(2)} + 1 では,ここからどうしたらよいか,一歩引いて考 - P(5) = 22 + 1 えてみましょう.まず簡単なところから. - P(5) = 5 前回の解答でも述べているように,2 次関数を決 2 2 となります.P(3) ではなく一気に P(5) が出ましたが, 定するためには,f(x) がとる値の条件が 3 つ与えら 仕方ないですね.もし P(3) が求めたいのであれば, れることが必要十分です.ここで「2 次関数の決定」 とは,無論,定義域は「全ての実数 x」です.f(x) x = 2 を代入することになりますが, P ( 2 ) が分 がとる値について,x として特別な 3 つの値を考え からなければどうしようもありません. るだけで, 「全ての実数 x」についてが分かるという ことです. 1 3 次関数であれば 4 つの条件,4 次関数であれば n 次(以下の)方程式 f(x) = 0 を考えているつも 5 つの条件・・というように,次数に応じて係数の りだったのに,「解」が n + 1 個発見された瞬間,実 数が変わるので,次数に応じて条件の数も変わりま は f(x) = 0 が恒等式であったことが確定し,どんな す.一般に x を代入してもこの式は成り立つことになるわけで n 次の整式 f(x) を決定するためには, す.次数を上回る数の解があればおかしいことは明 f(x) がとる値の条件が n + 1 個与えられて らかなので,直感的に自明とも言えますが,証明は いることが必要十分 下のようにできます. と言えます.また,よく見かける表現とは思います (証明) が n 次以下の整式 f(x) に対して,f(x) = 0 を満たす f(x) の最高次の係数を 1 とする x として異なる n + 1 個の値が存在するとする.そ という制限をつけると,とる値の条件は n 個で済み れらの値を ます.これは a1,a2,a3,……,an,an+1 とするとき,適当な整式 g(x) を用いて x 2 + 3x + 4 f(x) = g(x)(x - a1)(x - a2) … (x - an+1) 3 x 2 + 9 x + 12 = 3(x 2 + 3 x + 4) 1 2 3 1 x + x + 2 = (x 2 + 3 x + 4) 2 2 2 と表せる.このとき g(x) ≠ 0 とすると,f(x) の次数 が n + 1 以上になるので不適.よって,g(x) = 0 で というように実数倍の形で書けるものについて,区 あり 別をなくす感覚ですね.この場合,f(x) の値として f(x) = 0 特別な n 個で考えたことによる結論が,それ以外の となる.(これは恒等的に成り立つ) x においても成り立つわけです. (証明終わり) 特に,n 次以下の整式 f(x) がとる値がいずれも 0, つまり,f(x) = 0 を満たす x として,n + 1 個の異 では,今回の場合はどうしたらよいでしょうか? なる x が存在するとき ゴールは f(x) = 0 は恒等的に成り立つ P(x) = x (f(x) = 0 は恒等式である) が恒等的に成り立つことを示すことです.変数 x を と言えます. 集約するために移項して 整式 f(x) を決定したら,条件が多かったた P(x) - x = 0 め,まさかの f(x) = 0 であった とし,この上で というわけです. Q(x) = P(x) - x ここで,f(x) = 0 について,両辺を適当に実数倍 とおいて することにより左辺の最高次の係数は 1 にできるこ Q(x) = 0 とに注意しましょう.つまり,条件として n 個あれ が恒等的に成り立つことを示します.Q(x) = 0 を満 ば良いところ,過剰に n + 1 個あるわけです. たす x は,先ほど与えた式: 前回の解答にて,方程式と恒等式の違いは説明し ていますよね.方程式の場合,ある特定の値(「解」 という)を代入したときのみ成り立ち,恒等式の場 a1 = 0 an+1 = an2 + 1 により定義される {an} が対応します.つまり, 合は,どんな x を代入しても成り立ちます. Q(x) = 0 を満たす x は 2 す x として x = a1,a2,a3,…… と無数に存在します.Q(x) として想定される次数よ x = a1,a2,……,am,am+1 り 1 つでも多く, 「解」を見つければ良いわけですが, の m + 1 個存在すると言える.これより,適当な整 {an} は無数にあるので,怖いものなしです.ただ 式 R(x) を用いて Q(x) は有限次数 Q(x) = R(x)(x - a1)(x - a2) … (x - am+1) Q(x) = 0 を満たす x は無数に存在 と表せるが,R(x) ≠ 0 とすると,Q(x) の次数が → Q(x) = 0 は恒等的に成り立つ m + 1 以上になるので R(x) = 0 である.これより では,やや味気ないので,解答では丁寧に書くこと Q(x) = 0 にします.また が恒等的に成り立つ.よって 任意の自然数 n に対して, Q(x) = 0 x = an は Q(x) = 0 を満たす - P(x) - x = 0 - P(x) = x の部分についても,帰納法を用いて厳密に書くとし ます. であり,これは恒等式より,P(x) はこれ以外にはな 以下,模範解答です. い. 以上より,求める整式 P(x) は 《解答》 P(x) = x である. P(x) = x であると推測できる.以下,これを示す. P(0) = 0,P(1) = 1 より P(x) は定数ではないので, 《コメント》 P(x) を m ( ≥ 1) 次以下の整式とすると いかがだったでしょうか?手法を知らなければ ハードな問題ですが Q(x) = P(x) - x によって定義される Q(x) も m 次以下の整式である. ここで,数列 {an} を 整式の決定 においての 1 つの手法として知っておきましょう. n 次方程式のつもりだったのに,n + 1 個の a1 = 0 解を持つことが分かった瞬間,実は恒等式 2 an+1 = an + 1 (n = 1,2,3 ,………) と定義すると,任意の自然数 n に対して,x = an は だったことが判明する Q(x) = 0 を満たす. というお話です. 何故なら,x = a1 = 0 のとき成り立つのは上記の これを使えば,前回の解答における最後の問いか 通りであり,ある自然数 n に対して x = an のとき けについても,容易く説明ができると思います. Q(x) = 0 が成り立つとすると P(an2 + 1) = {P(an)}2 + 1 それでは,今回はここまでです.今年度の私の担 - P(an + 1) = an + 1 (仮定より) 当はこれがラストですね. - P(an+1) = an+1 受験生の方はもう一踏ん張り,体調に気を付けて 2 2 (条件式より) より,x = an+1 のときも Q(x) = 0 を満たすからであ 頑張ってください! る. (研伸館数学科 野口) 漸化式より数列 {an} は増加数列であるから,an の 値は全て異なることに注意すると,Q(x) = 0 を満た 3
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