第1回レポート問題 解答 - lab.twcu.ac.jp

第 1 回レポート問題 解答
1 年次演習 (数学) (新國担当分)
2014 年 4 月 23 日 (水) 出題
問題. 以下の大問 1 , 2 , 3 の全てに解答せよ.
1 有理数全体の集合 Q において, 以下の命題が成り立つことをそれぞれ示せ.
(1) a, b ∈ Q =⇒ a + b, ab ∈ Q.
a
∈ Q.
(2) a, b ∈ Q, b ̸= 0 =⇒
b
2 以下の設問に答えよ.
√
(1) 2 が無理数であることを示せ.
(2)∗ 集合 A, B を
{
}
{
√
A = p + q 2 | p, q ∈ Q, p ̸= 0 , B =
}
1
√ p, q ∈ Q, p ̸= 0
p+q 2
で定義するとき, A = B であることを示せ.
3 集合 A, B, C に対し, 以下の等式が成り立つことをそれぞれ示せ.
(1) A − (B ∪ C) = (A − B) ∩ (A − C)
(2) A − (B ∩ C) = (A − B) ∪ (A − C)
(3) (A ∪ B) − C = (A − C) ∪ (B − C)
(4) (A ∩ B) − C = (A − C) ∩ (B − C)
(5)∗ A ∩ (B − C) = (A ∩ B) − (A ∩ C)
以上
解答.
1 (1) a, b ∈ Q は, それぞれ
m
m′
a=
(m, n ∈ Z, n ̸= 0) , b = ′ (m′ , n′ ∈ Z, n′ ̸= 0)
n
n
(i)
と表される. このとき,
a+b=
m m′
mn′ + m′ n
+ ′ =
n
n
nn′
(ii)
であり, mn′ + m′ n, nn′ ∈ Z かつ nn′ ̸= 0 から, (ii) より a + b ∈ Q となる. 一方,
ab =
mm′
m m′
=
n n′
nn′
(iii)
であり, mm′ , nn′ ∈ Z かつ nn′ ̸= 0 から, (iii) より ab ∈ Q となる.
(2) a, b ∈ Q を (i) の形で表しておく. 特に b ̸= 0 から m′ ̸= 0 である. このとき
a
m n′
mn′
=
=
b
n m′
nm′
であり, mn′ , nm′ ∈ Z かつ nm′ ̸= 0 から, (iv) より
2 (1) 背理法で示す.
(iv)
a
∈ Q となる.
b
√
2 が有理数であると仮定し,
√
m
2=
(m, n ∈ Z, n ̸= 0)
n
(v)
と 既約分数で表しておく. 即ち m と n は互いに素である. このとき (v) から
2n2 = m2
(vi)
となり, 従って m2 は偶数であるから, m も偶数である. 故に m = 2k (k ∈ Z) と書
けて, このとき (vi) から 2n2 = 4k 2 , 即ち
n2 = 2k 2
となり, 従って n2 は偶数であるから, n も偶数である. よって m, n はともに偶数と
なり, これは m と n が互いに素であることに矛盾する.
(2) まず B ⊂ A を示そう. いま, B の任意の元
b=
1
√ ∈ B (p, q ∈ Q, p ̸= 0)
p+q 2
√
に対し, p ± q 2 ̸= 0, p2 − 2q 2 ̸= 0 であることに注意する. 何故ならば, もし
√
√
p ± q 2 = 0 とすると, q 2 = ∓p ̸= 0 から q ̸= 0 で, 従って
√
∓p
2=
q
2
となる. 左辺は設問 (1) から無理数であるが, 右辺は 1 の設問 (2) から有理数なの
√
で矛盾が生じる. よって p ± q 2 ̸= 0 であり, 特に
(
√ )(
√ )
p2 − 2q 2 = p + q 2 p − q 2 ̸= 0
もわかる. このとき, b にいわゆる “有理化” の変形を施すと
√
√
1
p−q 2
p−q 2
√ =(
√ )(
√ )= 2
b=
p − 2q 2
p+q 2
p+q 2 p−q 2
) (
)
(
√
−q
p
+
=
2
p2 − 2q 2
p2 − 2q 2
(vii)
とできて, 更に p, q ∈ Q, p ̸= 0 より
p2
p
−q
p
, 2
∈ Q, 2
̸= 0
2
2
− 2q p − 2q
p − 2q 2
(viii)
となるから, (vii), (viii) より b ∈ A である. 従って B ⊂ A がわかった.
次に A ⊂ B を示そう. いま, A の任意の元
√
a = p + q 2 ∈ A (p, q ∈ Q, p ̸= 0)
√
に対し, 先程と同様に p ± q 2 ̸= 0, p2 − 2q 2 ̸= 0 であることに注意する. このとき,
a に “有理化” の逆の変形を施すと
√ )
√ )(
(
√
p+q 2 p−q 2
p2 − 2q 2
√
√
a=p+q 2=
=
p−q 2
p−q 2
1
) (
)√
(ix)
=(
p
−q
+
2
p2 −2q 2
p2 −2q 2
とできて, 更にこれも先程と同様に
p2
p
−q
p
, 2
∈ Q, 2
̸= 0
2
2
− 2q p − 2q
p − 2q 2
となるから, (ix), (x) より a ∈ B である. 従って A ⊂ B がわかった.
以上により, A = B であることが示された.
(x)
3 (1) x ∈ A − (B ∪ C) ⇐⇒ x ∈ (A − B) ∩ (A − C) を示せば良い. 実際,
x ∈ A − (B ∪ C) ⇐⇒ x ∈ A かつ x ̸∈ B ∪ C
⇐⇒ x ∈ A かつ「x ̸∈ B かつ x ̸∈ C 」
⇐⇒「x ∈ A かつ x ̸∈ B 」かつ「x ∈ A かつ x ̸∈ C 」
⇐⇒ x ∈ A − B かつ x ∈ A − C
⇐⇒ x ∈ (A − B) ∩ (A − C)
である.
3
あるいは, §1.2 で述べた集合の演算を用いて以下のように示しても良い. 例えば,
A − (B ∪ C) = A ∩ (B ∪ C)c
= A ∩ (B c ∩ C c )
= (A ∩ B c ) ∩ (A ∩ C c )
= (A − B) ∩ (A − C)
である. 以下, 残りの設問についても, 集合の演算を用いて示してみよう.
(2) 集合の演算により,
A − (B ∩ C) = A ∩ (B ∩ C)c
= A ∩ (B c ∪ C c )
= (A ∩ B c ) ∪ (A ∩ C c )
= (A − B) ∪ (A − C)
である.
(3) 集合の演算により,
(A ∪ B) − C = (A ∪ B) ∩ C c = (A ∩ C c ) ∪ (B ∩ C c ) = (A − C) ∪ (B − C)
である.
(4) 集合の演算により,
(A ∩ B) − C = (A ∩ B) ∩ C c = (A ∩ C c ) ∩ (B ∩ C c ) = (A − C) ∩ (B − C)
である.
(5) 集合の演算により,
(A ∩ B) − (A ∩ C) = (A ∩ B) ∩ (A ∩ C)c
= (A ∩ B) ∩ (Ac ∪ C c )
= ((A ∩ B) ∩ Ac ) ∪ ((A ∩ B) ∩ C c )
= ((A ∩ Ac ) ∩ B) ∪ (A ∩ (B ∩ C c ))
= (∅ ∩ B) ∪ (A ∩ (B − C))
= ∅ ∪ (A ∩ (B − C))
= A ∩ (B − C)
である.
4