試験問題 解答 1 年次演習 (数学), 1 年次演習 (情報理学) (新國担当分) 2014 年 7 月 30 日 (水) 10:55–12:25 実施 書籍 · 自筆ノート類の持ち込みを許可する. あらゆる電子機器類の持ち込みは 認めない. 黒色以外の色の鉛筆もしくはペンは自由に使って構わない. 問題. 次の 9 問の中から, 4 問選択して解答せよ. 但し, 問題の選択方法は, 所 属専攻別に次の決まりに従うこと: 【数学専攻】 1 , 2 , 3 , 4 , 5 から 2 問, 6 , 7 , 8 , 9 から 2 問そ れぞれ選択して, 合計 4 問に解答すること. 【情報理学専攻】 1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 6 から 4 問選択して解答すること. 解答する際には, 解答用紙にどの 4 問を選択したのか明記すること. 講義中に扱っ た諸定理 (命題, 補題, 系を含む) は用いて良い. 1 A, B, C を集合とし, これらはいずれも, ある集合 X の部分集合であるとする. このとき, (A − B) ∪ C = (A ∪ C) − (B − C) が成り立つことを示せ. 2 5 つの元から成る集合 A = {a, b, c, d, e}, 4 つの元からなる集合 B = {x, y, z, w} を考える. このとき, 次の条件 (1), (2) を同時にみたす写像 f : A → B, A の 2 つの部分集合 P1 と P2 , 及び B の部分集合 Q の具体例を挙げよ. (1) f (P1 ∩ P2 ) $ f (P1 ) ∩ f (P2 ), (2) f (f −1 (Q)) $ Q. 3 集合 A から集合 B への写像 f : A → B に対し, P は A の部分集合で, Q は B の部分集合とする. このとき, P ∩ f −1 (Q) ⊂ f −1 (f (P ) ∩ Q) が成り立つこと を示せ. 1 4 R を実数全体の集合とし, x ∈ R に対し f (x) = x − |x| + |x − 1| で定義される 写像 f : R → R を考える. ここで |a| は実数 a の絶対値を表す. このとき以下 の設問に答えよ. (1) f が単射であるかどうか判定せよ. (2) f が全射であるかどうか判定せよ. 5 集合 A, B に対し, P1 , P2 は A の部分集合で, Q は B の部分集合とする. また, f : A → B を写像とする. このとき, 以下の設問に答えよ. (1) f が単射ならば, f (P1 ) ∩ f (P2 ) ⊂ f (P1 ∩ P2 ) が成り立つことを示せ. (2) f が全射ならば, Q ⊂ f (f −1 (Q)) が成り立つことを示せ. 6 R を実数全体の集合とし, A = {x ∈ R | x ̸= 1} とおく. また, 写像 f : A → A を, x ∈ A に対し x f (x) = x−1 で定義する. このとき, 以下の設問に答えよ. (1) f は全単射であることを示せ. (2) f の逆写像 f −1 による x ∈ A の値 f −1 (x) を具体的に表示せよ. 7 整数全体の集合 Z において, 関係 R ⊂ Z × Z を R = {(m, n) ∈ Z × Z | m + 2n は 3 の倍数 } で定義し, (m, n) ∈ R のとき m ∼ n と表すことにする. このとき, R は Z にお ける同値関係であるかどうか判定せよ. 8 正の実数全体の集合 R+ における関係 R ⊂ R+ × R+ を { } R = (x, y) ∈ R+ × R+ | ある n ∈ N が存在して y = xn で定義し, (x, y) ∈ R のとき x < = y と表すことにする. ここで N は自然数全 体の集合を表す. このとき, R は R+ における半順序関係であるかどうか判定 せよ. 9 以下の設問に答えよ. (1) 2 で割り切れない整数全体の集合 A と, 3 で割り切れる整数全体の集合 B は 対等であることを示せ. (2) 2 次元 Euclid 空間 R2 と, 複素数全体の集合 C は対等であることを示せ. 以上 2 解答. 1 示すべきことは x ∈ (A − B) ∪ C ⇐⇒ x ∈ (A ∪ C) − (B − C) である. 実際, x ∈ (A − B) ∪ C ⇐⇒ x ∈ A − B または x ∈ C ⇐⇒ 「x ∈ A かつ x ∈ B c 」または x ∈ C ⇐⇒ 「x ∈ A または x ∈ C 」かつ「x ∈ B c または x ∈ C 」 ⇐⇒ x ∈ A ∪ C かつ x ∈ B c ∪ C ⇐⇒ x ∈ A ∪ C かつ x ∈ (B ∩ C c )c ⇐⇒ x ∈ A ∪ C かつ x ∈ (B − C)c ⇐⇒ x ∈ (A ∪ C) − (B − C) である. (別解) 集合の演算によって以下のように示しても良い. 例えば (A − B) ∪ C = (A ∩ B c ) ∪ C = (A ∪ C) ∩ (B c ∪ C) = (A ∪ C) ∩ (B ∩ C c )c = (A ∪ C) ∩ (B − C)c = (A ∪ C) − (B − C) である. 2 例えば写像 f : A → B を f (a) = f (b) = f (c) = x, f (d) = y, f (e) = z で定義する. この写像は w に写る A の元がないので全射でなく, また x に写る A の元が 3 つあるので単射でもないことに注意しよう.1 (1) A の部分集合 P1 , P2 を P1 = {a, c, d} , P2 = {b, d} とする. このとき, f (P1 ) = {x, y}, f (P2 ) = {x, y} から f (P1 ) ∩ f (P2 ) = {x, y} 1 講義で述べたように, (i) ( ) f (P1 ∩ P2 ) ⊂ f (P1 ) ∩ f (P2 ), 及び f f −1 (Q) ⊂ Q は一般に成り立つのであった. 一方, 5 にあるように, f が単射ならば f (P1 ∩ P2 ) ⊃ f (P1 ) ∩ f (P2 ) も成り立つので f (P1 ∩ P2 ) = f (P1 ) ∩ f (P2 ) である. ( ) 従って, (1) をみたす例を作るには, 単射でない写像 f を考える必要がある. 同様に, f が全射ならば f f −1 (Q) ⊃ Q も ( −1 ) 成り立つので, f f (Q) = Q である. 従って, (2) をみたす例を作るには, 全射でない写像 f を考える必要がある. 3 であり, 一方, P1 ∩ P2 = {d} から f (P1 ∩ P2 ) = {y} となる. (i), (ii) より, f (P1 ∩ P2 ) $ f (P1 ) ∩ f (P2 ) である. (ii) (2) B の部分集合 Q を Q = {x, w} (iii) とする. このとき f −1 (Q) = {a, b, c} から f (f −1 (Q)) = f ({a, b, c}) = {x} となる. (iii), (iv) より, f (f −1 (Q)) $ Q である. (iv) 3 一般に a ∈ P ∩ f −1 (Q) =⇒ a ∈ f −1 (f (P ) ∩ Q) が成り立つことを示せば良い. 実際, a ∈ P ∩ f −1 (Q) ⇐⇒ a ∈ P かつ a ∈ f −1 (Q) =⇒ f (a) ∈ f (P ) かつ f (a) ∈ Q ⇐⇒ f (a) ∈ f (P ) ∩ Q ⇐⇒ a ∈ f −1 (f (P ) ∩ Q) である.2 4 x ∈ R に対し, f (x) は (x = 1) x − 1 f (x) = x − |x| + |x − 1| = −x + 1 (0 < = x < 1) x + 1 (x < 0) と表されることに注意しよう (高等学校の数学の問題!). あとはこの関数のグラフ を実際に描いてみれば, f の単射性及び全射性は, 以下のように一目瞭然に確認す ることができる. (1) 例えば f (−1) = f (1) = 0 であるので, f は単射ではない. (2) 任意の y ∈ R に対し, もし y = 1 ならば, x = y + 1 とおけば x = 2 で, このとき f (x) = x − 1 = y + 1 − 1 = y 赤い右矢印の逆は一般には成り立たない. 実際, a ∈ A に対し f (a) ∈ f (P ) であっても a ∈ P と は限らない. 但し f が単射であれば, f (a) ∈ f (P ) ならば a ∈ P である (各自でこのことをよく確かめよ). 即ち, f が単 射ならば, P ∩ f −1 (Q) = f −1 (f (P ) ∩ Q) が成り立つ. 2 上記解答において, 4 である. 一方, もし y < 1 ならば, x = y − 1 とおけば x < 0 で, このとき f (x) = x + 1 = y − 1 + 1 = y である. 以上より, 任意の y ∈ R に対し, ある x ∈ R が存在して f (x) = y となるの で, f は全射である. 5 (1) 写像 f が単射のとき, b ∈ f (P1 ) ∩ f (P2 ) =⇒ b ∈ f (P1 ∩ P2 ) が成り立つことを示せば良い. いま b ∈ f (P1 ) ∩ f (P2 ) ⇐⇒ b ∈ f (P1 ) かつ b ∈ f (P2 ) ⇐⇒ ∃ a1 ∈ P1 s.t. f (a1 ) = b かつ ∃ a2 ∈ P2 s.t. f (a2 ) = b (v) である. (v) より特に f (a1 ) = f (a2 ) であり, f は単射なので a1 = a2 となる. 従っ て a1 ∈ P1 かつ a1 = a2 ∈ P2 から, a1 ∈ P1 ∩ P2 である. よって b = f (a1 ) ∈ f (P1 ∩ P2 ) となる. (2) 写像 f が全射のとき, b ∈ Q =⇒ b ∈ f (f −1 (Q)) が成り立つことを示せば良い. いま, b ∈ Q に対し, f は全射なので, ある a ∈ A が 存在して f (a) = b ∈ Q となる. 即ち a ∈ f −1 (Q) であり, 従って ( ) b = f (a) ∈ f f −1 (Q) となる. 6 (1) まず, f は単射であることを示す. x1 , x2 ∈ A に対し, x1 x2 = x1 − 1 x2 − 1 x1 (x2 − 1) = x2 (x1 − 1) f (x1 ) = f (x2 ) =⇒ x1 x2 − x1 = x2 x1 − x2 x1 = x2 となる. 従って f は単射である. 次に f が全射であることを示す. 任意の y ∈ A, 即 5 ち y ∈ R, y ̸= 1 に対し, x = y とおくと,3 x ̸= 1 から x ∈ A で, y−1 ( f (x) = f y y−1 ) y y−1 =y = y −1 y−1 (vi) となる. 従って f は全射である. (2) (vi) から, x ∈ A に対し f −1 (x) = x x−1 である (従って, 特に f −1 = f ). (数学専攻向け別解) f を 2 回合成した f ◦ f : A → A を考えると, ( f ◦ f (x) = f (f (x)) = f x x−1 ) x −1 =x = x x −1 x−1 となる. 即ち f ◦ f = idA である. 従って定理 1.5.7 から f は全単射で, (1) が示され る. 同時に f −1 = f であるので, (2) も示される. 7 定義 2.1.2 の 3 つの条件 (E1), (E2), (E3) をそれぞれ確かめよう. (E1) 任意の m ∈ Z に対し, m + 2m = 3m は 3 の倍数であるから, m ∼ m である. (E2) m, n ∈ Z に対し, 定義 m ∼ n ⇐⇒ ∃ k ∈ Z, s.t. m + 2n = 3k =⇒ n + 2m = n + 2(−2n + 3k) = −3n + 6k = 3(−n + 2k) 定義 ⇐⇒ n ∼ m. (E3) l, m, n ∈ Z に対し, 定義 l ∼ m, m ∼ n ⇐⇒ ∃ k1 , ∃ k2 ∈ Z, s.t. l + 2m = 3k1 , m + 2n = 3k2 =⇒ l + 2n = (−2m + 3k1 ) + (−m + 3k2 ) = −3m + 3k1 + 3k2 = 3 (−m + k1 + k2 ) 定義 ⇐⇒ l ∼ n. 以上により, この R は Z における同値関係である. 3 与えられた写像 f による x ∈ A の値 f (x) は, f (x) = 1 x = +1 x−1 x−1 とも表せることに注意しよう (いわゆる分数関数の標準形). このグラフを描いてみると, x, y を入れ替えても同じグラフに なることが見てとれる. そのことに気付けば早い. 6 8 定義 2.2.1 の 3 つの条件 (O1), (O2), (O3) をそれぞれ確かめよう. (O1) 任意の x ∈ R+ に対し, x = x1 であるから, x < = x となる. + (O2) x, y ∈ R に対し, 定義 ∃ ∃ m n x< = y, y < = x ⇐⇒ m, n ∈ N s.t. y = x , x = y =⇒ y = xm = (y n )m = y nm =⇒ m, n>0 nm = 1 =⇒ m=n=1 =⇒ x = y. (O3) x, y, z ∈ R+ に対し, 定義 ∃ ∃ m n x< = y, y < = z ⇐⇒ m, n ∈ N s.t. y = x , z = y =⇒ z = y n = (xm )n = xmn 定義 ⇐⇒ x < = z. 以上により, この R は R+ における半順序関係である. 9 (1) A の任意の元は 2m + 1 (m ∈ Z) とかけて, そこで写像 f : A → B を f (2m + 1) = 3m で定義する. 一方, B の任意の元は 3n (n ∈ Z) とかけて, そこで 写像 g : B → A を g(3n) = 2n + 1 で定義する. このとき, A の任意の元 2m + 1 に 対し g ◦ f (2m + 1) = g(3m) = 2m + 1 となるから g ◦ f = idA で, 一方, B の任意の元 3n に対し f ◦ g(3n) = f (2n + 1) = 3n となるから f ◦ g = idB である. 従って定理 1.5.7 から, f は全単射となり, 故に A と B は対等である. (2) R2 の任意の元 (x1 , x2 ) に対し, 写像 f : R2 → C を f (x1 , x2 ) = x1 + x2 i で定義 する. ここで i は虚数単位である. 一方, C の任意の元は x′1 + x′2 i (x′1 , x′2 ∈ R) とか けて, そこで写像 g : C → R2 を g (x′1 + x′2 i) = (x′1 , x′2 ) で定義する. このとき, R2 の任意の元 (x1 , x2 ) に対し g ◦ f (x1 , x2 ) = g (x1 + x2 i) = (x1 , x2 ) となるから g ◦ f = idR2 で, 一方, C の任意の元 x′1 + x′2 i に対し f ◦ g (x1′ + x′2 i) = f (x′1 , x′2 ) = x′1 + x′2 i となるから f ◦ g = idC である. 従って定理 1.5.7 から, f は全単射となり, 故に R2 と C は対等である. 7
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